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事業保険のいろは

中小企業と経営者のリスクに備える「変額保険」② 変額保険の特徴・メリットと留意点

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この記事のポイント

  1. 変額保険は、一定額の死亡保障を確保しながら、運用実績に応じて保険金額や解約返戻金額が増減する保険商品である
  2. インフレ下でも資産価値が目減りしにくく、保障と運用商品としての性格を併せ持つ保険商品として活用されている
  3. 税制上のメリットがある一方で、元本割れや費用負担、為替変動などのリスクにも注意が必要である
  4. 商品のしくみや契約目的を十分に理解し、必要に応じて専門家の助言を受けながら判断することが望ましい

本シリーズ記事の第1回では「いま変額保険が注目されている理由」について説明しましたが、第2回は変額保険を活用するメリット等をご紹介します。個人(経営者を含む)が活用するケースだけでなく、法人が活用するメリットについてもまとめてあります。

中小企業と経営者のリスクに備える「変額保険」

1 変額保険の特徴とメリット

変額保険は、保険料の一部を株式や債券などで運用しながら、万が一の際の死亡保険金は基本保険金額が最低保証される、投資と保険を組み合わせた商品といえます。運用実績によって保険金額や解約返戻金額が増えることもあれば、運用実績が不調な場合は損失が生じるリスクもある点が特徴の一つです。
中小企業の経営者にとっては、退職金の準備や相続・事業承継への備えとしても検討に値します。ただし、預金や定額保険とは異なり「運用商品としての性格を併せ持つ保険」であることを理解したうえで、目的に応じた活用が求められます。
変額保険には、図表1のようなメリットがあります。

図表1 変額保険のメリット

活用目的 保険タイプ 想定される効果 注意点
(1)経営者の万が一に備える 終身型・有期型・定期型 社長の死亡時に事業資金を確保する 途中解約時の解約返戻金額には最低保証がないこと
(2)保険料を抑えて大きな保障 有期型・定期型 手頃な保険料で大きな保障を得る 途中解約時の解約返戻金額には最低保証がないこと
(3)資金準備 終身型・有期型 非常時に活用可能な積立機能がある 長期分散投資によりリスクを抑えた運用を行うこと
(4)インフレ下の資産価値を守る 終身型・有期型・定期型 資産運用を行うことで物価の上昇に備える 短期的な値動きに左右されず長期的な視点をもつこと
(5)退職金の積立・運用 終身型・有期型 原資の準備 満期保険金額、解約返戻金額に最低保証がないこと
  • (1) 長期の保険期間を設定でき、運用次第では受け取れる保険金額などが増える
  • (2) インフレ対策になりうる
  • (3) 運用期間中の収益は非課税
  • (4) 生命保険料控除を適用できる

以下で、これらのメリットについて詳しく見ていきましょう。

(1) 長期の保険期間を設定でき、運用次第では受け取れる保険金額などが増える

変額保険には、基本保険金額と呼ばれる死亡保険金額の最低保証があるため、被保険者に万が一のことがあっても遺族の生活資金を確保することができます。
また、運用実績が好調であれば、保険金額や解約返戻金額が増える可能性が期待できます。さらに、長期間にわたって保険料を支払いながら運用を継続することで、一時的な価格変動リスクを平準化できる可能性もあり、運用実績の安定にもつながります。こうした特性から、保障と運用商品の性格を併せ持つ保険商品といえます。
終身型や有期型であれば元本割れのリスクはあるものの積立の機能もあるため、老後資金の備えとしても有効です。

(2) インフレ対策になりうる

保障される金額があらかじめ決まっている定額の保険と異なり、変額保険では保険料の一部が株式や債券などで運用されるため、保険金額や解約返戻金額は運用実績に応じて増減します。
運用実績が好調であれば将来受け取る金額が増える可能性があるため、インフレによってお金の価値が下がっても、それにある程度対応できる力がある点も変額保険の特徴です。
このため、資産の実質的な目減りを抑えやすい設計といえます。実際、インフレ懸念が強まる近年では、資産価値を守る手段として変額保険の魅力が再評価されています。

(3) 運用期間中の収益は非課税

変額保険の運用益は、運用期間中に課税されることがないため、税務面でもメリットがあります。
また、個人が保険金を一時金として受け取る場合には契約の形態によって、一時所得の特別控除(最高50万円)、または相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)があるため、受取時の税負担も一定程度軽減されます。

(4) 生命保険料控除を適用できる

個人契約の場合、支払った保険料は一定額まで「生命保険料控除」の対象となり、毎年の所得税や住民税の軽減につながります。変額保険は一般の生命保険料控除の対象であり、契約内容によって控除額は異なりますが、所得税は最大4万円、住民税は最大2.8万円の控除が受けられます。
一方、法人契約では契約形態によって一定の損金算入が認められています。ただし、法人税制の適用には細かな要件があるため、活用にあたっては専門家に相談してみることが望ましいといえます。

2 変額保険の留意点

一方で、変額保険には以下のような留意点があります。

(1) 投資リスク、元本割れのリスクがある

変額保険について、解約返戻金額や満期保険金額は、契約時には確定していません。最低保証がないため、運用実績が悪ければ、支払った保険料を下回る可能性があるため、リスク許容度に応じた選択が重要です。特に、短期間で解約した場合は解約返戻金額が支払い保険料総額を下回るリスクが高まる点にも注意が必要です。
また、変額保険の運用先は複数の投資先から選ぶ形式が一般的ですが、その構成内容-たとえば株式中心か、債券中心かといった点-や、ご自身のリスク許容度を事前に把握しておくことも大切です。運用を保険会社任せにせず、契約内容や運用方針を自ら理解したうえで加入する必要があります。

(2) 外貨建ての変額保険の場合は、特に為替変動リスクがある

外貨建ての変額保険では、運用リスクに加えて、特に為替変動のリスクも伴います。
為替レートの変動によって、将来受け取る保険金や解約返戻金の金額が大きく変わる可能性があるため、円建てか外貨建てかという通貨の種類をしっかり理解しておく必要があります。
契約時には、どの通貨で保険料を支払い、どの通貨で受け取るのかを含めて、商品内容を十分に確認することが不可欠です。

(3) 保障と運用のそれぞれに費用がかかる

保険料の一部は運用資産の管理費や保険契約に関する費用として差し引かれるため、表面上の運用利回りのすべてが契約者に還元されるわけではありません。商品設計によってはこうした費用が運用リターンを圧迫する要因にもなりうるため、事前に変額保険にかかる費用を把握しておくことが大切です。長期的に保有することで、相対的に変額保険にかかる費用を抑えることも期待できます。

■図表2 変額保険の主なリスクと注意点
主なリスク 留意点・対応策
運用リスク(元本割れ) 長期運用を前提とし、リスク許容度に応じて運用資産の配分を設計する
費用負担 保険契約に関する費用や運用に関する費用などを契約前に確認する
為替リスク(特に外貨建ての場合) 外貨の種類と為替の影響を理解する
解約返戻金額に最低保証がないこと やむをえず中途解約をする場合はタイミングに注意し、必要に応じて専門家に相談する

変額保険は、保障と運用商品としての性格を併せ持ち、将来の不安に備える「守り」と、資産を運用する「攻め」の両方を兼ね備えた魅力的な保険商品です。一方で、運用リスクや為替変動リスク、費用の負担といった注意点もあるため、メリットだけでなくリスクや変額保険にかかる費用もしっかりと理解したうえで、自身の契約目的やリスク許容度に応じた慎重な判断が求められます。
次回の『中小企業と経営者のリスクに備える「変額保険」③』では、法人契約による賢い活用法をご紹介します。経営者の退職金準備や、インフレ・経営リスクへの対応策として、実務の中でどのように変額保険を活かせるのか、そのポイントを解説します。

【著者】

國村 年(くにむら みのる)

公認会計士・税理士・香川大学大学院客員教授・日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格者・戦略MG インストラクター


関西学院大学経済学部卒業。1996年から監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、2007年から小谷野公認会計士事務所に勤務したのち、2011年に香川県高松市で國村公認会計士事務所開業。贈与・相続、事業承継、M&A・組織再編、棚卸のコンサルティングを中心に行っている。著書・執筆は、『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A』(中央経済社)など多数ある。

  • 変額保険は、国内外の株式や債券などを通じて運用を行うため、その運用実績に応じて保険金額や積立金額などが変動するしくみの保険です。特別勘定資産の運用には投資リスクがあるため、株価や債券価格、為替などの変動により損失が生じるおそれがあります。
  • 変額保険は、保険契約に関する費用や運用に関する費用、ご契約を解約する際に発生する費用など、ご契約者に負担いただく費用がありますのでご注意ください。また商品によっては、具体的な金額や計算方法などを記載することができない費用もあります。
  • 投資リスクの内容、ご負担いただく費用は、商品によって異なります。詳しくは「商品パンフレット」「契約締結前交付書面(契約概要・注意喚起情報)」「ご契約のしおり・約款」「特別勘定のしおり」をご確認ください。
  • 一般的な情報提供を目的としたものであり、生命保険商品の募集を直接の目的としたものではありません。商品のご検討にあたっては、「契約概要」「注意喚起情報」「ご契約のしおり・約款」などをご覧ください。特定保険契約の場合は、「契約締結前交付書面(契約概要・注意喚起情報)」「ご契約のしおり・約款」「特別勘定のしおり」などをご覧ください。
  • 税務処理については、資料作成時に施行中の税制を参照しております。よって、将来的に税制の変更などにより、実際のお取扱いと記載されている内容が異なる場合がありますのでご注意ください。具体的な税務処理を行う場合は、税理士などの専門家、または所轄税務署にご相談ください。

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