内容へスキップ

「中小企業は今がチャンス」

株式会社日本総合研究所 高橋進チェアマン・エメリタスに聞く その2

この記事は5分で読めます

中小企業が直面しているリスクに「景気の腰折れ」があります。緩やかな景気回復が続く日本経済ですが、来年2019年10月の消費増税、2020年にはオリンピックが控えます。エコノミスト高橋進氏に話を聞きました。(その1はこちら)

(聞き手: 安倍宏行 ジャーナリスト ”Japan In-depth”編集長)

中小企業 チャンスの時代

安倍:日本の強みといえば中小企業といえると思います。99.9%が中小企業で、いままさに世代交代しており、平均年齢が60代後半になっています。団塊の世代よりの上の人たちは、ITの分野には乗り遅れています。スムーズに次世代、もしくは次々世代に繋いでいく事が必要だと思うのですが、そこに何か重要な鍵があるのではないでしょうか?

高橋:おそらく従来とはビジネスのやり方が根本的に変わってくるのではないかと思います。例えば従来、世界で大企業が牛耳っていた分野、航空だとか宇宙だとか、こういった分野でも大企業だけでイノベーションを起こすことが難しくなってきています。欧米では、彼らが持っているデータをオープンにして、ベンチャーや中小企業と連携して新規事業を打ち出そうという試みが行われるようになって、結果的に世界の航空宇宙産業が活性化しています。

同じことが実は日本の製造業なんかにもいえるのではないでしょうか。中小企業が大変だ大変だといわれていますが、実は大企業も行き詰まっていて、彼らもイノベーションの力が落ちています。そこで、イノベーションの力をどうやって取り戻すかと言った時に、キーワードとして私がいつも言っているのが、「スモール、オープン、コラボレーション」です。

大企業が大きな組織の中で2年も3年もかけて一生懸命研究開発をして製品を作りこんで世の中に打ち出して問う時代ではなくて、持っている技術やノウハウをみんな出して一緒に作りましょう。そして、完成度が低かったらそれを世の中に晒して鍛えてもらいましょうという形での商品開発とか研究開発の方向に変わり始めています。

そういう意味で、中小企業やベンチャーにとって今がチャンスです。大企業も中で小さな組織を時限的に立ち上げたりして疑似的に中小企業を作る。そこに技術を出して、外部の企業と組んで連携をして、というスタイルで新規分野を作り出そうとする、新製品を生み出そうとする、そんな試みが世界で始まっています。

日本でもぼちぼち始まりかけていて、それが日本のベンチャーや中小企業の在り方も大きく変えていくのではないかと思います。日本は中小企業が世代交代の時期ではありますが、私はビジネスのやり方も大きく変わってくるのではないかと思います。単なるIT、情報武装の問題だけではないのではなく、ビジネスモデルそのものが変わってくるのではないかと思います。

安倍:おっしゃる通り、社内の中でいかにイノベーションを起こしていくのかということが重要であるか。翻って中小企業ということで考えれば、将来自分が親の会社を継ぐとしても家業にとらわれないというか、先代のビジネスのやり方にこだわる必要はないわけですね。

高橋:従来と全く違う連携の仕方だとか、外部との関わりができてくるはずですし、それは異業種との連携かもしれないし、それから地域という枠組みの中からかもしれません。多分従来のビジネスの延長ではないところに活路があるケースが相当あるのではないでしょうか。

例えばそのある地域が自動車関連の部品が強い中小企業が集まっていると。そこに海外の宇宙産業から引き合いが来てこういうタイプの部品が必要だが作れるかと打診されて、それにチャレンジすることにした、などということが実際に起きています。従来の自動車産業の枠組みの中で系列の下請けでいる限りは、大きな発展はなかなか見込めません。場合によってはEV化と共になくなってしまうかもしれないですよね。でも異業種と組むことによって全く違う活路が見えてくる。異業種からの参入だけでなく、産業の構造自体が大きく変わっていくところに新しい組み合わせが出てくるのではないでしょうか。

地域との関わり

安倍:中小企業は地域との関わりがすごく大事ですよね。そこにも活路があるんでしょうか?

高橋:そうですね。銀行もかつては店を構えてお客さんが来るのを待っていました。ところがどんどん人口が減って、地方の場合は相続などをきっかけにして地域から資金が流出してしまいます。ですから金融業も実は先細りなんですね。そういう中である銀行は移動店舗を始めました。車で。金融機関も地域の中を巡る時代になってきました。地域の活性化という観点でモノを考える時代になってきたのです。

地域の経済や社会をどうやって持続可能にしていくのかという問題は、一企業、一金融機関の問題ではなく、地域全体が運命共同体として考えなくてはならない問題です。その時に答えとして出てくるのは、一つはインバウンドです。最近、外国人が日本の地方の魅力を強く認識するようになってきました。であれば、インバウンドを取り込むことで新たな地域の中への、ヒト、モノ、カネを取り込むことができます。

もう一つは、従来は民間企業の活動領域はここ、一方行政はここ、という風に官民が分かれて仕事をしてきました。ところが、人口がどんどん減っていくと、行政と民間が別々にやっていたんでは、どっちも立ち行かなくなるのです。行政ももうこの分野は民間と一緒にやろう、あるいは民間に任せようという分野が出てきます。これで行政がスリム化する一方で、民間には新しいビジネスチャンスが生まれます。官民が連携して新分野が作れれば、地域の活性化の一つのネタになっていきます。行政がやっていたものを民間の方に肩代わりしてもらうとかいう話は、昔は民営化と言っていたが、今はPPP(パブリックプライベートパートナーシップ))とかPFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)とかコンセッション(公共施設等運営権)方式とか色々なタイプが出てきてますが、今後も、もっと進化した形態が出てくるのではないかという気がします。

 

その3に続く