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事業承継

アイデアで勝負!自社製品開発にかける
株式会社ツカダ 2代目 塚田 浩生氏

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岐阜県関市。古来、「関の孫六」(注1)で名をはせた、刃物の町。その町の駅にとある男が新潟から降り立った。男は新潟県燕三条市という町から来たと言った。関と同じ刃物の町だ。新潟から遠く離れたこの地で一旗上げよう。野心に燃えた人物がいると知って、どうしても話を聞いてみたい、と思い出かけてみた。この男こそ、今回訪問したプレス加工業である株式会社ツカダを興した人物、塚田 紘太郎氏である。実際にお会いしたのは2代目、塚田浩生氏だ。塚田氏は家業のプレス加工業から一歩踏み出し、付加価値のある自社製品の企画・開発・販売へ乗り出しているチャレンジャーといった印象を受けた。

(聞き手: 安倍宏行 ジャーナリスト ”Japan In-depth”編集長)

今までにない便利グッズ

まず第一弾として開発したのが「Key-Quest(キークエスト)」。普段、カッターやハサミがあれば便利なのに・・・と思うシーンは結構あるが、そういう時に限ってそうした道具が手元になかったりするものだ。Key-Questは、キーホルダーにスマートに携行できる 6 in 1 の鍵型便利ツールである。

Key-Quest
写真)Key-Quest
出典:株式会社ツカダ

 

なるほど、確かにこれは優れものではある。が、問題は売り先だ。どうやってこの商品を売ったらいいのだろう。悩んだ塚田氏がたどり着いたのは聞いたこともない「クラウドファンディング」だった。

売り先をどう開拓するか

クラウドファンディングとは、プロジェクトの起案者が、専用インターネットサイトを通じて、世の中に呼びかけ共感した人から広く資金を集める方法だ。きっかけは、塚田氏が取引のある地元の金融機関に相談したことだという。

「Key-Questは初の自社製品です。先に物ができてパッケージまで完成したのですが、全然売り先が分からない。ツテもノウハウもないので銀行に相談に行きました。こんなもの作ったんだけどどこか売先紹介してよ、と頼んだら、Makuake(マクアケ)と言うクラウドファンディングがあるのでそれにチャレンジしたらどうかという提案をいただいたのです。」

クラウドファンディングというと、自分のプロジェクトを公開すれば不特定多数の人からお金がどんどん集まるようなイメージを抱く人もいるかもしれない。しかし、実際はそう甘くはない。やはり自分の周りにある程度支援を確約してくれる人がいないと目標額の達成は厳しいらしい。

「マクアケ側から言われたのは、開始3日で目標金額の30パーセントを達成しないと、かなりの確率で目標額に到達しないと。やっぱりスタートダッシュが大切だということでした。」

そこで自分のネットワークを駆使することにしたという塚田氏。 クラウドファンディングがスタートする当日、地元の商工会議所の青年部の企業経営者や2代目、約100人を居酒屋に集め、みんなに半ば強制的にKey-Questを買ってもらったという。イベント的要素を取り入れて多くの人を巻き込むなど、やはり若き2代目でないとできない事ではある。

そして、目標100万円を達成したのはわずか3日後というから驚きだ。最終的には763パーセントに達した。

「最初300個ぐらいしか売れないだろうと思っていたのですが、結局 約3000個は売れたので、開発した本人が一番驚きました。」

今は宅配荷物のテープを切るのに便利なギザギザの刃の部分をよりマイルドにするバージョンの開発も検討中だ。空港などで刃物と判断されるケースを避けるためだという。商品開発のアイデア出しは社内で定期的に行われているが、今はまだまだ社長がみんなを引っ張っている、と塚田氏は笑う。

第2弾は名刺入れ?

そして第2弾の商品がこちら。「KEEP SMART(キープスマート)」だ。「財布にしのばせる極薄スマート名刺入れ」がそのコンセプト。板厚0.2mmのステンレス鋼板を採用し、名刺を3枚入れることが出来る。商品企画の意図を塚田氏に聞いた。

KEEP SMART
写真)KEEP SMART
出典:株式会社ツカダ

 

「居酒屋とかでばったり重要な人と会って名刺交換しようと思ったら名刺入れの中が空、みたいなことよくありますよね。で、財布の中に名刺があるのを思い出していざ取り出したら、汚い名刺しかなくて、でも渡さないよりはマシかと手で伸ばしながら『こんなのしかないんですけど』って言って渡した経験をされたことって、皆さんあるのではないですかね。そういうことが何回もあって、去年とある会議に出ていたときに、これ金属で挟んでおけば解決するんじゃないの?と思いついたのです。」

こだわったのは薄さと素材だという。大変だったのは名刺を適度にホールドする力だった。

「板厚0.2ミリの極薄のステンレスを使って名刺を挟みこむだけなのでホールド力がある程度いるわけです。開けたままもどらないのでは名刺がずり落ちてしまうので、バネ性のあるステンレス材を使っています。」

特に「曲げ」の部分は何百個と試作し、その性能を検証した。

「バネのところに工夫があって。曲げひとつで可動性がなくなったり、逆に硬すぎて取り出すのに一苦労するようになってしまったり。」

こうして誕生した「KEEP SMART(キープスマート)」でもクラウドファンディングを行った。目標額30万円で、実際は190万円を達成、またしても大成功だった。累計5,000セットぐらい売れているという。Key-QuestとKEEP SMART、どちらも使っているが便利な事この上ない。必要は発明の母とはよくぞいったものだ。

今後の課題

折角素晴らしいアイデアから生まれた新商品であったとしても、市場で認知されなければ販売は伸びない。ノベルティなどの話は来るというが、さらなる販路をどうするかが今後の課題だと塚田氏は言う。関市の美しい山のふもとのこの会社から次はどんな面白いモノが飛び出してくるのだろう。ワクワクしながら見守ろうと思った。

注1)関の孫六
孫六兼元。室町後期に美濃国武儀郡関郷(現岐阜県関市)で活動した刀工。