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エヌエヌ生命プレミアレポート

人手不足に悩む中小企業に大きなメリット!

AIの身近な活用事例と相談先

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最近、AI(人工知能)に関する報道が増えています。AIというと、最先端のむずかしい技術というイメージを持たれる方がいるかもしれませんが、実は中小企業での活用も急速に進みつつあります。現在、中小企業は人手不足、技術者の高齢化という課題に直面しています。AIは、そうした悩みを抱える中小企業にとっての救いの神ともなる技術です。中小企業でAIがどう活用されているか、また導入の仕方などを解説します。

1 なぜ、いまAIなのか?

出生率の低下により人口減少に歯止めがかからない中、働き手とされる生産年齢人口(15~64歳)は2018年現在の約7,581万人から、2030年には6,875 万人(約90%)、2065年には4,529万人(約60%)に減少すると推計されています(図1)。

日本の生産年齢人口の推移

実際、人手不足による倒産は近年増加しており、とくに2017年度は114件へと急増しています(図2)。

人手不足倒産の件数

人口減少は必要人員不足だけでなく、人件費の増加も招きます。ある建設会社では、現場技術者の確保がむずかしくなり、給与の上限を大幅に引き上げて人材募集を行いましたが、それでも人材を確保できず、外部の技術者に頼らざるを得なくなりました。その結果、人件費が膨らむことになり、工事の受注増加で売上は伸びたものの、それ以上に赤字が膨らむ悪循環に陥り、破産に追い込まれました。
また、ベテラン従業員が持っているノウハウ・技能・技術を若手従業員に伝承することは、企業価値を維持するために重要なことです。若手の人材不足から、これらのノウハウ・技能・技術が伝承されずに消滅することにより競争力が低下することは大きな損失になります。
こうした人手不足・人件費高騰・競争力低下への対応策として、大きな役割が期待されているのがAIです。

2 中小企業でのAI活用事例

現在では、中小企業でもさまざまな形でAIが使われるようになっていますので、活用事例を見てみましょう。
 

事例① キュウリの出荷時に自動仕分け
静岡県湖西市の小池農園は、キュウリを栽培し、卸売市場に出荷しています。出荷に際して、長さ・太さ・曲がり・色艶といった基準により、ノウハウを持ったベテラン作業者が9等級に仕分けして、箱詰めしていました。
この仕分け基準をAIに学習(機械学習)させ、自動化しました。システム開発費は、経営者が過去にITの経験があったため自力でソフト開発を行い、約2万円でできたとのことです。

AIを活用したキュウリの自動仕分

事例② パンの画像から商品名と価格をレジに自動表示
東京都世田谷区にあるパン屋「ボヌール三軒茶屋本店」では、AIレジが活躍しています。来店客がパンを載せたトレーを台に置くと、画面にパンの画像と商品名、金額がパッと表示されます。商品知識の少ない新人でも、計算間違いがなくなり、待ち時間の短縮にもつながっています。

商品名と価格を自動表示するAIレジ

事例③ 日本酒造りにおける杜氏の技をAI化
日本酒造りでは,杜氏(とうじ)の鼻(匂い)と舌(味)による感覚や経験によって判断する工程が多いため、自動化はむずかしいとされていました。
しかし、獺祭(だっさい)の蔵元・旭酒造(山口県岩国市)は酒造りに関するデータ収集を行い、杜氏の勘と経験による判断のみに頼らず、データに基づく判断による酒造りを進めたことで有名になりました。旭酒造では、さらに得られた温度や比重データをもとにAIが予測して(もろみ)管理をサポートする酒造りに取り組み始めています。
また、南部美人(岩手県二戸市)では、浸漬(しんせき)という酒米を洗った後に水に浸す工程のAI化に挑戦しています。浸漬は非常に難易度の高い工程で、これまでは杜氏の目による判断に頼っていました。現在は共同研究しているima社がデータ収集中で、将来的にAIによる自動化を目指しています。

事例④ 経験に頼っていた生産計画の精度向上にAIを活用
私が経営支援をしている神奈川県の金型メーカーでは、生産計画の精度向上、納期遅れ防止のために、生産計画のシミュレーションソフト導入を計画しています。現在は金型の構成部品ごとにベテランの工場長が勘と経験で最短と思われる生産計画を立案していますが、多くの構成部品があり、突然の受注も多いため、新たな受注が入ると、果たして既に加工にかかっている金型の納期確保ができているのかどうか、わからない状況となっています。AIを活用した生産シミュレーションソフトは、納期遅れの有無判断、最適生産計画立案を短時間で可能にしてくれます。

3 AIを活用したいときはどうする?

① 専門家への相談の仕方
では、実際に自社でAIを活用したいと思ったときは、どうすればよいのでしょうか。
まずは、近くの中小企業診断士等でかまいませんから、相談を持ち掛けてください。その際に、「自社の問題を解決するために、この部分にAIを活用したい」などと、具体的な活用方法まで考える必要はありません。
たとえば、「最近、機械の稼働率が落ちているのだが、原因は何だろう?」、「職人が高齢化していて、彼らの技術を承継してくれる若い社員もいない。どうしたらよい?」といった相談でかまいません。
相談された専門家が、その課題解決のためにAIが適切と判断すればAIを活用した解決策を、場合によってはAIなしの解決策を提案するかもしれません。まずは、どんな課題を抱えているかをざっくばらんに相談してください。
かつて私は、プラスチック加工メーカーから「品質不良を削減したい」という相談を受けたことがあります。現場を見ると、検査前の加工作業で作業方法が標準化されていないことによる不良発生が多いことがわかりました。検査作業も、検査項目・合格基準等が不明確で、検査方法の標準化ができていませんでした。そこで、まずはこれらの作業方法を標準化し、簡単な治工具を作成し、人の違いによるばらつきやヒューマンエラーを削減する取組みを行い、これだけで発生していた不良の約70%は削減できました。
次のステップとして、人が行うには負担が大きく、見落としも出やすい塗装面の傷とホコリの外観検査については、AIを活用して自動化することを提案しました。たとえばホコリの合格基準は、「3センチ四方に1個以下、大きさは直線状の場合は0.8ミリ以下、丸まっている場合は0.5ミリ以下」と決められていたのですが、人が行う検査では不良流出は避けられないと判断されたため、AIによる自動検査を検討することになりました。

② 相談窓口
AIあるいはITに関連しているか否かにかかわらず、業務内容の改善について相談される場合は、特定のIT事業者に縛られない自治体の相談窓口(たとえば横浜市の場合は、公益財団法人 横浜企業経営支援財団IDECが相談窓口になっており、筆者も相談員をしています)や商工会議所、コンサルタント会社、中小企業診断士等の個人コンサルタントに相談されるのがよいと思います。自社にIT知識もある程度あり、システム内容もほぼ決まっている場合は、複数のIT業者に直接相談するのもよいでしょう。AIだからといってむずかしく考えず、まずは自社の課題について、専門家に相談されることをお勧めします。

〔参考〕AI活用の際に利用できる補助金AI活用の際に利用できる補助金

中小企業が元気になるにはAIを含むIT活用がポイントになります。政府は、中小企業の競争力強化・生産性向上を支援するために、AIを含むIT活用促進を対象とする補助金支給や技術支援等の支援策を打ち出していますので、積極的に活用することが望まれます。 国が支援する補助金には以下のようなものがあります(2018年公募)。このほかに、自治体独自のものもありますので、各自治体窓口に相談されるとよいでしょう。

 

株式会社浜テクアート 島崎 浩一 著 者
島崎 浩一(しまざき こういち)
株式会社浜テクアート 代表取締役社長
慶應大学工学部機械工学科卒業。1979年三洋電機(現パナソニックグループ)に入社し、生産管理、生産技術を担当。2006年テクノ経営総合研究所に入所。 2011年、独立して浜テクアートを創業。大手・中小メーカーに対し、業務改善や経営改善、新製品開発のコンサルティングを実施している。経済産業省認定経営革新等支援機関、公益財団法人横浜企業経営支援財団(IDEC)IoT技術アドバイザー、ものづくりコーディネーター。

 

この記事は、エヌエヌ生命プレミアレポート2018年8月号からの転載です。 この記事に記載されている法令や制度などは2018年8月作成時のものです。
法令・通達等の公表により、将来的には制度の内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。

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