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中小企業の事業承継-法人向け生命保険でできる対策とは?

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三つの承継

事業承継とは、「事業そのもの」を後継者が引き継ぐことです。「事業」には、会社の流動・固定資産のみならず、経営権やブランド、信用力や取引先、負債やのれん等が含まれます。また、事業承継は「後継者を誰にするか(経営権の承継)」に加え、会社の自社株を「誰に引き継ぐか(財産権の承継)」、「後継者教育をいつまでにどのように行うか(経営理念の承継)」の大きく3つがあります。

事業継承の現状

中小企業が抱える問題は、後継者不在で経営者の高齢化が進行しているため、事業承継をスムーズに行うことができず、コツコツと積み上げてきた独自の技術や技能などが途切れてしまう可能性がある点です。

幾度となく経営の危機を乗り越え、技術、技能を維持発展させてきた経営者の多くは、取引先や雇用の維持のため、事業承継を先送りし生涯現役を貫いているのが現実です。

事業承継・事業引継ぎの傾向~在任期間が短いほど親族外承継が多い~

2015 年に中小企業庁が実施した調査(事業承継ガイドライン平成28年12月中小企業庁)によれば、在任期間が35年以上40年未満(現経営者が事業を承継してから35年から40年経過している)の層では9割以上が親族内承継、つまり現経営者は先代経営者の息子・娘その他の親族であると回答しています。

一方、この調査では在任期間が短いほど、親族内承継の割合の減少と従業員や社外の第三者による承継の増加傾向が見られます。特に2010年~2015年の5年間では親族内承継の割合が全体の約35%にまで減少し、親族外承継が65%以上に達しています。

事業承継の4つの財産

事業承継では、長年積み上げてきた様々な財産を後継者に承継することになります。
その財産を大きく分けると、「ヒト」、「モノ」、「カネ(財産)」「情報(知的財産)」の大きく4つの財産に分けられます。

中小企業においては、経営ノウハウや人脈などが経営者個人に依存していることが多く、経営者の資質により事業運営や業績が大きく変動する傾向があるため、経営者の「情報(知的財産)の承継」がポイントになります。

次に、株式、設備や不動産などの事業用資産などの「モノ」、運転資金や借入金など「カネ」の承継です。会社が保有する資産(モノやカネ)は原則、自社株の評価のベースになるため、まず検討すべきは自社株式の承継となります。

最後に「ヒト」の承継です。長年培ってきた経営理念や技術や技能、ノウハウ、取引先との信用は、役員や従業員に脈々と受け継がれています。「ヒト」は会社の強み、価値そのものであり、承継することができなければ、競争力が低下し、事業の継続は難しいと思われます。自社の強みや価値を分析することも承継の際のポイントになります。

平成30年度「事業承継税制(特例)」の活用

自社株式は会社の全ての財産価値が反映されますが、その株式を後継者に承継させる方法としては、生前に贈与するか相続財産とするのかのいずれかが考えられます。いずれの場合でも順調な企業ほど、後継者にとって相続税や贈与税の負担は通常重くなります。そこで、政府は中小企業の事業承継がスムーズに進むよう、一定の条件を設け、後継者が承継する際、贈与や相続税の納税を猶予する「事業承継税制(特例)制度」を2018年4月からスタートさせました。今後5年以内にまず特例承継計画を提出し、そして10年以内に実際に自社株の贈与や相続を行うことが必要です。

従来の事業承継税制(一般)との比較(中小企業庁 平成30年度税制改正より抜粋)によれば大きく、

  1. 1 .対象株式数の上限を撤廃(2/3→3/3)し、猶予割合を100%に拡大することで、承継時の贈与税・相続税の現金負担をゼロに。
  2. 2.親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象に。中小企業経営の実状に合わせた、多様な事業承継を支援。
  3. 3.雇用要件(事業承継後5年間平均で、雇用の8割を維持)を抜本的に見直すことにより、雇用維持要件を満たせなかった場合でも納税猶予を継続可能に。 ※経営悪化等が理由の場合認定支援機関の指導助言が必要
  4. 4.売却額や廃業時の評価額を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免することで、経営環境の変化による将来の不安を軽減。
とあり、中小企業の事業承継税制支援を国が抜本強化する強い姿勢が見てとれます。

平成30年度「事業承継税制(特例)」の活用時の留意点

国の強力な支援もあり、事業承継税制(特例)を活用すると従来以上に後継者や従業員、第三者への自社株の承継は進んでいくと予想されています。

その際考えられる問題点は、中小企業経営者が自社株式を後継者に集約させ、経営権を承継させることに注力するあまり、後継者以外の相続人に対する配慮が欠け、それが元で相続人間で「争族」に発展する可能性がある点です。

後継者へ渡った自社株式を特別受益とみなし、他の相続人から遺留分を主張される可能性があります。

民法では、一定の条件を満たす相続人に対して最低限の遺産相続分を保証する相続割合を予め規定しており、遺言書の内容に関わらず保障されるものを遺留分と呼んでいます。

後継者以外の相続人には、事前に経営者の思いを伝え、財産分与に関する意思疎通を十分にしておき、後継者との紛争を未然に防止する何らかの対策を準備しておくことが重要になります。

実際に争族となり、遺留分減殺請求を受けた場合、原則、後継者は現物支給にて弁済しなければなりません。

ただし、後継者が価格弁償(民法1041条)を主張すれば、減殺相当分の価額を相手側に支払うことで、相続した資産を守ることができます。

そのようなケースに備え、その他相続人の遺留分相当分の原資を後継者が持てるよう準備し、相続人間で裁判にならぬよう、後継者が経営に専念できる環境を整備しておくことも経営者の配慮の一つです。

生命保険を活用した解決策

経営者の思いが全ての相続人に伝わり、事業繁栄のため紛争を起こさせないのが理想ですが、予期せぬ事態が起こり、ふとした事で争族が起きてしまうことが現実には多いのではないでしょうか?

その際、生命保険であれば、民法上、原則受取人固有の財産になります。後継者が保険金等を受取ることで、他の相続人からの遺留分減殺請求に対処する資金とすることができ、万が一の紛争時に、民法上の効果を享受することもできます。法人契約や個人契約を活用し、保険金額や受取人や受取割合等を自在に組み合わせることで様々なニーズに応え、相続人間のバランスを調整することも可能になります。

また、生命保険金非課税枠(死亡退職金、死亡保険金は各々法定相続人×500万円まで非課税)は要件を満たすことで、活用できますので魅力的ですね。

幸いにもスムーズな相続手続きで済んだケースでは、争族対策で準備した生命保険金は、後継者がそのまま自由に使える資金となります。いざというときの会社の資金繰り対策や会社への個人貸付や連帯保証対策、また借入金の返済や金融機関への信用供与等に活用できますので安心ですね。

様々なリスクから後継者を守る「セーフティーネット」としての生命保険、この機会にご検討されてはいかがでしょうか?


※この資料に記載されている法令や制度などは下記作成日現在のものです。将来的には内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。

※税務処理については、資料作成時に施行中の税制を参照しております。よって、将来的税制の変更などにより実際のお取り扱いと記載されている内容が異なる場合がありますのでご注意ください。具体的な税務処理を行う場合は、税理士などの専門家、または所轄税務署にご相談ください。

資料作成日:2018年5月25日




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