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中小企業経営者なら知っておきたい! インフレ時代に資産運用が重要な理由

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この記事のポイント

  • 1.資産をインフレによる目減りから守るにはインフレに強いものを持つ、すなわち資産運用や投資が重要となる
  • 2.インフレに強い資産の特徴は、(1)実物資産自体に価値がある、(2)需要が安定した業種のものである、(3)物価上昇と連動して価格が上昇しやすい、(4)円の価値に依存しない
  • 3.インフレに強い資産は、金、貴金属、美術品、不動産、高級自動車、食品関連・日用品関連・エネルギー関連株式、物価連動債、投資信託、外貨建て資産など
  • 4.インフレ時に効果的な資産運用戦略は、(1)インフレに強い資産、弱い資産を把握する、(2)分散投資と長期運用が基本

1 お金が目減りするインフレから資産を守る!

(1) インフレが生活や資産に与える影響

インフレとはインフレーション(inflation)の略で、物価が継続して上昇する状態のことです。

インフレは、経済に良い影響を及ぼすこともあれば、悪い影響を及ぼすこともあります。

需要が旺盛で、今後も物価の上昇が継続して見込まれるのであれば、良い影響を与えるでしょう。

こうなれば、会社は安心して従業員の賃金を上げることができます。

また、授業員の賃金を上げることによって可処分所得が増加すれば、これまで以上に購入するようになるため、社会全体の消費が増加傾向になります。


逆に、賃金が上がらないのにもかかわらず物価だけが上昇していけば、人々は将来への不安を感じるため、悪い影響を与えるでしょう。

その結果、お金を使うことを控えることで商品やサービスが売れなくなり、会社の収益状況は悪化してしまいます。

もちろん、従業員の賃金は上がりません。

また、何かを購入するためにはより多くのお金が必要となるため、「ものの価値」が上がる一方「お金の価値」が下がる状態になるため、現預金の金額がそのままだとすると、資産価値は目減りしてしまうことになるのです(下図参照)。

図表1 100万円が20年後にいくらの価値になるか?

(2) 資産をインフレから守るには

資産をインフレから守るためには、インフレに弱い現預金や債券ではなく、インフレに強いものを持つことが必要です。

すなわち、資産運用や投資が重要となってくるのです。

2 インフレに強い資産とは

(1) インフレに強い資産の特徴

インフレに強い資産の特徴としては、下表のようなものが挙げられます。

■図表2 インフレに強い資産の特徴

  1. 実物資産自体に価値がある
  2. 需要が安定した業種のものである
  3. 物価上昇と連動して価格が上昇しやすい
  4. 円の価値に依存しない

実物資産自体に価値がある』とは、もの自体に価値があるということです。

例えば、金・貴金属・美術品・不動産・高級自動車などがあります。


需要が安定した業種のものである』とは、例えば、株式の場合、需要が安定している食品関連・日用品関連・エネルギー関連などの銘柄が該当します。

これらの業種は、安定した需要があるため、物価上昇時において、比較的価格転嫁がしやすい業種だと言われています。


物価上昇と連動して価格が上昇しやすい』とは、例えば、株式であれば、物価上昇時に売上高や利益が増加するような会社の株価は、物価上昇時に上がる傾向にあるということです。

エネルギー関連などの銘柄が該当します。

また、物価上昇率に応じて元本が調整される債券である物価連動債や、物価が上昇すると価格も上昇するコモディティ(金や貴金属、エネルギーや農産物など、投資信託を含む)などもあります。


円の価値に依存しない』とは、物価が上昇すると自国の通貨(円)の価値は低下するため、円の価値に依存しない資産、例えば、アメリカドルやユーロといった外貨も保有しておけば、インフレ時に一気に資産が減少することを抑えることができます。

(2) インフレに強い資産とは

インフレに強い資産は、上記のように、金、貴金属、美術品、不動産、高級自動車、食品関連・日用品関連・エネルギー関連株式、物価連動債、投資信託、外貨建て資産などがあります。

また、物価が上昇すると貨幣価値は相対的に低下するため、運用が好調なときに受取額が増える変額保険は物価上昇による価値低下の影響を受けにくく、インフレに強い資産であると言えます。

3 インフレ時に効果的な資産運用戦略

インフレ時には、以下が効果的な資産運用戦略と考えられます。

■図表3 インフレ時に効果的な資産運用戦略

  1. インフレに強い資産、弱い資産を把握する
  2. 分散投資と長期運用が基本

インフレに強い資産、弱い資産を把握する』ためには、まず、上記のようなインフレに強い資産や弱い資産を知ったうえで、所有している資産の種類、通貨などを確認します。

そのうえで、インフレに強い資産なのか、それとも弱い資産なのかを把握し、インフレに強い資産だとしても特定の種類や通貨などに偏りはないか、インフレに弱い資産をインフレに強い資産に組み替えるべきかどうかなど、全体的なポートフォリオを考えることが必要になってきます。


分散投資と長期運用が基本』とは、投資や運用は『分散』、『積立』、『長期』が重要だということです。

分散投資とは、性質の異なるものを複数組み合わせて投資するということであり、投資資産の分散、時間の分散、地域・国の分散の3つがあります。

投資資産の分散は、株式、債券、不動産、コモディティなどの異なる資産に投資すること、時間の分散は、1回でたくさん購入するのではなく、毎月など、購入時期を分けて投資すること、つまり、積み立てるということです。

地域・国の分散は、文字どおり、一国だけでなく、異なる地域や国に投資することです。

長期運用とは、短期的には価格が上がったり下がったりしますが、長期的に行うと、複利効果(資産形成・運用で得た利益を再び投資することで利益が利益を生み、さらに資産が増えること)の享受や売買手数料の抑制などにより、リスクを軽減する効果があるということです(下図参照)。

図表4 100万円を複利で運用すると20年後にいくらになるか?

【著者】

國村 年(くにむら みのる)

公認会計士・税理士・香川大学大学院客員教授・日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格者・戦略MG インストラクター


関西学院大学経済学部卒業。1996年から監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、2007年から小谷野公認会計士事務所に勤務したのち、2011年に香川県高松市で國村公認会計士事務所開業。贈与・相続、事業承継、M&A・組織再編、棚卸のコンサルティングを中心に行っている。著書・執筆は、『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A』(中央経済社)など多数ある。

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