制度を活用する企業が急増!企業版「ふるさと納税」のしくみとメリット
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インボイス制度の導入により、帳簿及びインボイスの保存が仕入税額控除の要件となりました。従来の区分記載請求書は、売手が免税事業者でも交付することができ、買手は免税事業者からの仕入れでも仕入税額控除ができましたが、今後は課税事業者から交付されたインボイスの保存が仕入税額控除の適用を左右することになります。
インボイス制度導入後の税務調査でこれまでと大きく変わるのは、インボイス発行事業者でなければインボイスを交付できないことから、まず「そのインボイスが登録した課税事業者が交付したものか」確認するという点だと考えられます。
次に、正当なインボイス発行事業者のものだとして、「インボイスの記載事項が必要な要件を満たしているかどうか」確認するという点です。
インボイス制度導入後は、売手であるインボイス発行事業者は、課税事業者である相手方に求められれば、インボイスを交付・保存する義務が課されています。これまではこのような義務は課されていませんでした。
したがって、インボイスの記載内容に疑義が生じた場合には必要に応じて反面調査を行い、売手の保存しているインボイスの記載内容を確認することになります。
インボイスに関する税務調査が今後どのような方針で行われようとしているのか、以下見ていきたいと思います
インボイス導入後の税務調査については、次のような国会答弁等が行われています。
まずは、衆議院・財務金融委員会における、財務大臣および国税庁次長の「税務調査の際のインボイスの扱い」に関する発言の要旨を見てみます。
■表1 税務調査時のインボイスの扱いに関する財務大臣・国税庁次長の発言要旨
出典:衆議院・財務金融委員会(2023年2月10日)
次に、衆議院・財務金融委員会における、国税庁次長の「インボイス導入が税務調査に与える影響」に関する発言の要旨も見ておきましょう。
■表2 インボイス導入が税務調査に与える影響に関する国税庁次長の発言要旨
出典:衆議院・財務金融委員会(2023年3月15日)
これらの国会答弁を踏まえたところで、国税庁は以下の資料を公表しています。
■表3 インボイス制度後の税務調査の運用について
出典: 国税庁「インボイス制度の周知広報の取組方針等について」(内閣官房HP「適格請求書等保存方式の円滑な導入等に係る関係府省庁会議(2023年8月25日)」より)を基に作成
「インボイスの記載不備」については、上記2の税務調査の方針を踏まえれば、税務当局は、まずはインボイス制度の円滑な定着が大事だと考えており、税務調査においてインボイスの記載事項の確認を行いますが、記載事項が足りなかった場合等の軽微なミスを把握したとしても、他の書類等で確認できれば仕入税額控除を適用し、記載不足については、今後の指導事項とするのではないかと考えられます。
しかしながら、インボイスの保存がなかったり、インボイスの記載事項が不足する内容を他の書類等から確認できない場合には、原則として仕入税額控除の適用を受けることができなくなることにも留意する必要があります。
したがって、柔軟に対応していくとはいっても、記載不足の部分については、いずれかの書類等で確認できるようにしておかなければなりません。
消費税の税務調査では、不正な還付申告を防止するため、申告書審査を的確に実施し、還付原因が解明できない場合には、重点的に調査を行うこととしています。
したがって、調査の重点は大口悪質な不正事案等への的確な対応ということになりますので、特に還付申告の場合には、保存しているインボイスが適正なものか確認しておく必要があります。
また、記載事項の不備のみを理由とした否認は行われないようですが、いずれかの書類で確認できるようにしておくとともに、指摘を受けないように、記載事項が整っているか、今一度確認しておく必要があるでしょう。
この記事に記載されている法令や制度などは2024年5月時点のものです。 法令・通達等の公表により、将来的には制度の内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。
【著者】
松崎 啓介(まつざき けいすけ)
松崎啓介税理士事務所 税理士
昭和59年~平成20年 財務省主税局勤務 税法の企画立案に従事
(平成10年~平成20年 電帳法・通則法規等担当)
その後、大月税務署長、東京国税局 調査部特官・統括官、審理官、企画課長、審理課長、個人課税課長、国税庁監督評価官室長、仙台国税局総務部長、金沢国税局長を経て税理士登録。
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