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2023年12月1日からアルコール検知器使用が義務化!

「アルコールチェック義務化」対応ガイド

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この記事のポイント

  1. 2022年4月から目視等によるアルコールチェックとその内容の記録・保存が義務化
  2. 延期されていたアルコール探知器を用いたアルコールチェックは2023年12月1日から義務化
  3. アルコールチェックは運転の前後で必要
  4. 「乗車定員が11人以上の自動車1台以上」または「その他の自動車5台以上」を保有する事業所は、安全運転管理者の選任が必須
  5. 安全運転管理者は、「事業所(自動車の使用の本拠)ごと」に選任が必要
  6. 「白ナンバー」の社用車を保有している一般の事業所も、安全運転管理者の選任が義務付けられる事業所であれば、アルコールチェックが必要

1 「白ナンバー」社用車を保有する一定の事業所にもアルコールチェックが義務化

(1) アルコールチェック義務化の概要

2022年4月1日に改正道路交通法施行規則が施行され、安全運転管理者の業務として、下記が追加されました。

  • 目視等による運転前後の運転者に対するアルコールチェック(酒気帯びの有無の確認)
  • その内容の記録及び保存(1年間)

アルコールチェックについては2段階での改正になっており、当初は2022年10月1日から上記①のほかにアルコール検知器を用いたアルコールチェックの義務化が予定されていましたが、同検知器の不足などにより義務化が延期されていました。
しかし、アルコール検知器の供給状況が改善傾向にあることなどから、2023年12月1日からアルコール検知器を用いたアルコールチェックの義務化が決まりました。

(2) 対象となる事業所

これまでも、自動車運送事業を営む事業所などではアルコールチェックが求められていました。今回の改正は、いわゆる「白ナンバー」の社用車などを保有している一般の事業所であっても、安全運転管理者の選任が義務付けられる事業所であれば、アルコールチェックが求められるというものです。

安全運転管理者の選任が義務付けられる事業所とは、①乗車定員が11人以上の自動車を1台以上保有している事業所、または、②その他の自動車を5台以上保有している事業所、となります。

図表1 安全運転管理者の選任が義務付けられる事業所。一定台数の自動車の使用者は事業所(自動車の使用の本拠)ごとに、自動車の安全運転に必要な業務を行うものとして「安全運転管理者の選任」を行わなければならない。・自動車の保有台数に応じて副安全運転管理者の選任が必要。・安全運転管理者・副安全運転管理者になるには一定の要件あり。乗車定員が11人以上の自動車1台以上またはその他の自動車5台以上。※自動二輪車(原動機付自転車を除く)は1台を0.5台として計算。出所:警察庁「事業所の飲酒運転根絶取組強化!」を基に作成

(3) アルコールチェック義務化の背景

こうした義務化の背景として、2021年6月に千葉県八街市(やちまたし)で発生した小学生5人を巻き込んだ交通死亡事故の発生を指摘することができます。報道によれば、児童の列に突っ込んだトラックは「白ナンバー」で、その運転手の呼気からは基準値を上回るアルコールが検出されたということです。

2 アルコールチェック義務化で必要になる業務

(1)安全運転管理者の選任

アルコールチェックを行う主体は「安全運転管理者」とされていますから(※)、選任を義務付けられている事業所では、まずこの安全運転管理者を選任しておくことが必要です。

  • 安全運転管理者の不在時などには、安全運転管理者が副安全運転管理者や安全運転管理者の業務を補助する者にアルコールチェックを任せることは差し支えないとされています。

注意していただきたい点として、安全運転管理者は、「事業所(自動車の使用の本拠)ごと」に選任が必要であることを指摘しておきます。すなわち、複数の事業所を抱えている事業者(会社)は、選任を要する事業所の数に応じて、安全運転管理者をそれぞれの事業所において選任しなければなりません。会社として1名を選任すれば足りるというわけではありません。

■図表2 安全運転管理者の要件


 要件 年齢 20歳以上(副安全運転管理者が置かれる場合は30歳以上)
 実務経験 自動車の運転の管理に関し2年以上の実務の経験を有する者等
   欠格事由
  • 過去2年以内に都道府県公安委員会による安全運転管理者等の解任命令を受けた者
  • 次の違反行為をして2年経過していない者
    酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、妨害運転、無免許運転、救護義務違反、飲酒運転に関し車両等を提供する行為、酒類を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為、無免許運転に関し自動車等を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為、自動車の使用制限命令違反
  • 次の違反を下命・容認してから2年経過していない者
    酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許運転、大型自動車等の無資格運転、最高速度違反、積載制限違反運転、放置駐車違反


出所:警察庁「安全運転管理者制度の概要」を基に作成

  • 副安全運転管理者の要件は、20歳以上、自動車の運転の管理に関し1年以上の実務の経験を有する者等。

(2) 具体的な業務

2022年4月1日以降、安全運転管理者に追加されるアルコールチェック業務とは、次の2つです。

① 目視等による、運転前後の運転者に対する酒気帯びの有無の確認

アルコールチェック(酒気帯びの有無の確認)は、「運転しようとする運転者および運転を終了した運転者」に対して行う必要があります。つまり、運転の「前後」でチェックが必要です。
ただ、ここに「運転」とは、一連の業務としての運転をいうとされていることから、アルコールチェックは、必ずしも個々の運転の直前・直後にその都度行わなければならないというものではありません。アルコールチェックは、運転を含む業務の開始前や出勤時、および終了後や退勤時に行えば足りるとされています。

また、アルコールチェックの方法としての「目視等」とは、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子などで確認することをいうとされています。対面での確認が原則となりますが、運転者が直行直帰するような場合には、モニターなどによって運転者の顔色などをチェックし、携行させた携帯型アルコール検知器による測定結果を確認するなどの方法によることも考えられます。

② アルコールチェックの内容の記録・保存

アルコールチェックを行った場合は、次の図表3の事項について記録することが求められます。この記録は、1年間保存する必要があります。

■図表3 記録を要する事項
  1. ① 確認者氏名
  2. ② 運転者
  3. ③ 運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号または識別できる記号、番号など
  4. ④ 確認の日時
  5. ⑤ 確認の方法(対面でない場合は具体的方法)
  6. ⑥ 酒気帯びの有無
  7. ⑦ 指示事項
  8. ⑧ その他必要な事項

さらに、2023年12月1日以降は、安全運転管理者の業務として、以上のほかに、アルコール検知器を用いたアルコールチェックも追加されます。アルコール検知器とは、呼気に含まれるアルコールを検知する機器であって、国家公安委員会が定めるものをいいます。

そして、安全運転管理者は、このアルコール検知器が常に正常に作動し、故障がない状態を保つようにしておかなければなりません。すなわち、同検知器を適切に使用・管理・保守して、定期的に故障の有無を確認することが求められます。
なお、このアルコール検知器を用いたアルコールチェックが義務付けられた際は、安全運転管理者は、前記図表3の「⑤ 確認の方法」として、「アルコール検知器の使用の有無」についても記録・保存することが必要になります。

■図表4 安全運転管理者に追加されるアルコールチェック業務

2022年4月1日施行

  1. ① 目視等による、運転前後のアルコールチェック
  2. ② 記録の作成・保存(1年間)

2023年12月1日施行

  1. ③ ①のほか、アルコール検知器によるアルコールチェック
  2. ④ アルコール検知器の常時有効な保持(正常な状態の保持)

3 アルコールチェックを怠った場合のペナルティ

アルコールチェックを怠ったとしても、事業者や安全運転管理者に対する罰則は特に定められていません(ただし、安全運転管理者の選任を怠った場合は、事業者に5万円の罰金のペナルティがあります)。

しかし、警察庁では、各都道府県の警察に対し、業務中の飲酒運転などを検挙した場合、その背後責任について徹底した捜査を行い、安全運転管理者の選任の有無やその業務の実施状況について確認を行うよう通知しています。ペナルティの有無に関わらず、飲酒運転・酒気帯び運転を撲滅し、悲惨な事故が繰り返されないよう努めたいものです。

この記事に記載されている法令や制度などは2023年8月時点のものです。 法令・通達等の公表により、将来的には制度の内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。

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【著者】
植松 勉(うえまつ つとむ)
日比谷T&Y法律事務所パートナー弁護士、企業法務・契約実務に精通。

<役職>
東京弁護士会法制委員会商事法制部会部会長
東京弁護士会会社法部副部長
平成28~30年司法試験・司法試験予備試験考査委員(商法)
令和2年司法試験予備試験考査委員(商法)

<著書>
会社役員 法務・税務の原則と例外(編著)
企業のための契約条項有利変更の手引(編著)
民法(債権法)改正の概要と要件事実(共著)など

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