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事業承継

提案型営業スタイルを持ち込み、第二創業を実現。
老舗企業の強みとベンチャー企業並みのフットワークでNo.1に!
株式会社セーフティ&ベル 代表取締役 宇佐見 聡 氏

  • 40-50代
  • 建設業
  • 関東
  • 後継者
  • 新規ビジネス
  • スタートアップ

この記事は7分で読めます

老舗企業がひしめく建設業界に提案型営業という武器を持ち込み、「マンションオートロックの改修」というカテゴリーでNo.1の座に。現場で女性チームを編成し、オフィスはフリーアドレスというフットワークの軽さで強みを発揮し続ける運動体のスピードは、どこから生まれるのか。株式会社セーフティ&ベル 代表取締役 宇佐見聡氏に、事業承継から苦闘した第二創業のあり方を聞く。

株式会社セーフティ&ベル 代表取締役社長 宇佐見聡 氏

株式会社セーフティ&ベル
代表取締役社長 宇佐見聡(うさみ・さとし)

1972年生まれ。東京都出身。大学卒業後は流通業界に進んだ。30代になって独立を模索していたが、株式会社セーフティ&ベルを1969年に創業した父・弘氏から請われて2005年に同社に入社。2013年に社長に就任した。マンションのオートロック改修という新事業を切り拓き、「独立系」として国内売り上げトップの販売・施工実績を誇る。

流通業界から会社にやってきた2代目
創業者の父が築いた基盤で第二創業

1969年に創業し、半世紀――セーフティ&ベルは防犯カメラや集合住宅向けインターホンをはじめとするセキュリティシステムの提案・施工を手がけている。近年、強みを発揮しているのはマンションのオートロック改修。「独立系」として国内売り上げ6年連続日本一の販売・施工実績を誇る。


沿革のターニングポイントになったのは2008年だ。この11年で年商は3億円から17億円に、従業員数は20名から約100名にと急成長を遂げた。創業社長からの承継を成功させ、業績のさらなる拡大を成功させた宇佐見聡氏が語る。


「現会長の父が創業してからしばらくは大手セキュリティサービスの工事請けの会社でしたね。早く丁寧な仕事で業績を上げてきましたが、下請けで、しかも一社依存はリスクが大きすぎる。父の経営判断で30年ほど前に営業部隊を作り、施工・営業の2チームの両輪でビジネスを展開してきたという経緯があります」

1972年、双子の兄として生まれた宇佐見氏は大学卒業後に流通業界に進んだ。弟の敦氏がセーフティ&ベルに入社したこともあり、会社を継ぐつもりはなかったという。


「良いものを欲しい人に適正な対価で提供していく。結果としてお客さまの課題解決に寄与し、自社のビジネスも回転していく――流通業界で、私は営業の面白さに魅せられました。自分なりの営業をさらに極めようと独立を考えていたところ、『独立するなら戻ってきて、会社を手伝ってほしい』と父から頼まれ、入社を決意しました。弟も頑張っていたので、私なりに盛り立て、父を助けられたらいいと思ったのです」

オートロック改修という未開拓の市場
新たなフィールドで「提案型営業」を発揮

流通業界で培った営業手腕を発揮しようと勇躍入社した宇佐見氏だが、主戦場となる建設業は昔から「信用」が物を言う業界。実績からのリピートが主になり、提案型の営業が通用する余地はない。


「何か突破口はないか……? 慣れない業界を手探りで、体当たりでもがいていました。そこに、あるメーカーから『マンションのオートロックインターホンのリニューアル』をしてほしい、という案件を持ちかけられたのです。インターホンを製造しているのは日本では2社のみ。そもそもニッチな業界ですが、ここにさらなるフィールドが広がっていました

新築マンションのオートロック設置といえば大手。デベロッパーであるスーパーゼネコンが圧倒的だ。しかし、大規模改修のように15~20年サイクルでやってくるオートロックのリニューアルは、マンション建設に比べると少額。小回りの利かない大手は参入してこない。そこには、手つかずの市場がある。


「そこに、私が磨いてきた提案型の営業がピタリとハマりました。マンションでオートロックのリニューアルを決めるのは管理組合の理事会です。口説くのは居住者である理事の方々。つまり、BtoBのように見えてBtoCでもあります。インターホンのスペックを説明するだけでは刺さりません。


高齢者が多いのか、それともファミリー層か。賃貸が多いのか、投資用のニーズが高いのか。マンションそれぞれのシチュエーションを踏まえ、利用される方々をイメージしたインターホンを提示すると、どんどん受注できました。価格勝負の消耗戦ではなく、お客さまの課題を解決する『問題解決型』の提案です」


宇佐見氏が持ち込んだ新営業スタイルをフルに発揮できたのは、先代が築いてきた技術基盤があってこそ。営業だけではなく施工を両輪で回せることは、セーフティ&ベルの強みとなった。

「施工の職人がお客さま対応を兼ねていては、レスポンスに難があります。お問い合わせの電話に『作業中なので30分後に折り返します』『2週間後なら何とか工事できますが……』と応えるところ、当社は営業担当が独立していますから、すぐに応答できますし、『明日伺いますよ』といったフットワークが軽い対応も可能です」


また、インターホンのリニューアルはお客さまのお宅を訪問しての工事になります。施工担当の服装や立ち居振る舞いに気を使い、サービス業としての視点を重視しました。マンション内ではタバコを吸ったりしない、訪問する際は使い切りのスリッパを用意する。高いサービス品質を管理組合に訴求しました」


マンションの管理会社には、宅配ボックスを提供できるサービスが好評だ。オートロックだけではなく、セキュリティ全般をワンストップで提案できるセーフティ&ベルの強みをいかんなく発揮されている。

業界をけん引する企業として
新たな仕組みを積極的に導入し続ける

創業者である父が築いた基盤に、自らが体得した営業スタイルを開花させた宇佐見氏。オフィスを訪れると、カフェ然としたスペースのあちこちで社員とトークを交わす氏の姿があった。好きなスペースでミーティングができ、管理部門以外は固定した机を持たないフリーアドレス式。「老舗だけどベンチャー企業のよう」と評される自由なオフィスには、軽やかに旗を振る代表がいる。

「私も業界になかった営業スタイルで多くの仕事を獲得しましたが、社長になった今は仕組み、制度の整備に力を入れています。歴史の長い企業ですから、変化のスピードが速すぎると古株の社員はついていけない。しかし、どんどん新たなやり方を導入しなければ時代の先を行くことはできません。新旧のせめぎ合いで、バランスを取っていく。これが、会社を受け継いだ社長の役目です。そして何より、社員にはのびのびと、自由闊達に働いてもらう。これが社長の最大の役割と言ってもいいでしょう」


フィッシングやバドミントンといったサークル活動には活動費、懇親会費などの補助金を提供。課と課をまたいだ社員の外食をサポートする3000円チケットを配布し、フラットな組織のコミュニケーションを活発化させる。フリーアドレスというハード面の改革に加え、ソフト面の整備にも心を砕いてきた。

セキュリティサービスでは個人情報を扱うことから、業界でも先駆けてPマーク取得を進めた。また、現場ではお客さま対応にあたる女性スタッフのチームも編成している。業界をけん引する企業として、これからのスタンダードとなる仕組み、施策を打ち出している。


「当社は女性社員の比率が34%と、建設系の業界で群を抜いています。営業部隊で手腕を発揮する社員も多いですが、最近はマンションの工事の際にお客さまを訪問する『インストラクター』という業務に女性3名を配置しました。


工事の手順をやわらかく説明したり、新しいインターホンの使い方を丁寧にガイドしたり、主婦、高齢者が多いお客さまに安心していただける高品質なサービスを提供しています」


宇佐見氏自ら全国を飛び回り、地方大学から志ある学生を発掘するなど、人材の登用にも余念がない。突破口となった営業スタイルと同様、福利厚生や人材獲得、現場チーム編成でも受け身ではない「攻め」を貫き続ける。


「マンションオートロックのリニューアル市場は全国で900億円市場。私たちがカバーする首都圏には、その半分に近い400億円市場が広がっています。私たちの売り上げは17億ですから、まだまだ新たなお客さまが待っています。業界内でアライアンスを組んだり、M&Aを視野に入れたり、老舗であってもベンチャー企業のような志で進んでいければと思っています」




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