制度を活用する企業が急増!企業版「ふるさと納税」のしくみとメリット
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藤田浩一 氏
高橋真弘 氏
若松佑樹 氏
「家業イノベーション・ラボ」は、エヌエヌ生命が、NPO 法人 ETIC.(エティック)や NPO 法人農家のこせがれネットワークと共催し、意欲的な家業後継者のつながりを創出している。今、強化しているのが全国の「地域コーディネーター」との連携による、次世代後継者の発掘やサポート。今回は、家業イノベーション・ラボに参加している家業イノベーターと、そのエリアのコーディネーターの対談企画第二弾だ。茨城で3代続く和菓子屋を営む藤田浩一氏と、やはり3代目の豆腐店を引き継いだ高橋真弘氏は、自分たちが現状を変えねば家業が続かないという課題に直面していた。そんな時、地域コーディネーター若松佑樹氏から勧められて参加した「家業イノベーション・アイデアソン2020」で、数々のアイデアやアドバイスを得て、新しい取り組みが始まっている。
若松:私は地域おこし協力隊として、茨城の中小企業向けにインターンシップを行っていたため、地域コーディネーターを仰せつかりました。何か新しいことに取り組んでみたいというモチベーションが高い後継ぎに出ていただきたいということで、お二人をアイデアソンに誘いました。
藤田:それまでは店でひたすら和菓子を作る毎日でしたが、そろそろ外に出て新しい情報が欲しいと思ったタイミングで参加できて本当によかったです。和菓子業界に何が足りていて、何が足りていないのかということを振り返る良いきっかけになりました。
高橋:お声がけいただいたときに僕で大丈夫かなと思いながら、若松さんにケツをたたかれて参加しました。豆腐屋という狭い業界の常識の中にいて、ほかの業種のことはよく知らなかったのですが、いろいろな分野の方に意見をいただけて本当に勉強になりました。
藤田:和菓子業界は高齢化が進み、後継者不足に悩んでいます。洋菓子は価格を上げて収益を高める構造改革に取り組んで、この10年で改善を図りましたが、和菓子業界は「高いと売れない」という固定観念にとらわれていました。人件費も材料費も上がる中、やはり高くても売れるという収益性を確保しながら、お客さまに価値を感じていただかなくてはいけないのだという気づきをもらえたのが一番大きい収穫でした。
高橋:まさに同じです。大手が安く売っている豆腐に付加価値を付けて高く売るために、直売所を作ったり、豆乳スイーツを作りたいと考えていたので、どう進めたらいいのかをアイデアソンで相談させてもらいました。例えば、プレスリリースをするなんて言う方法を僕は知らなかったし、SNSでどうお客さんを獲得していくとか、店のブランディングの仕方などもわからなかった。情報だけがちまたにたくさんある中、具体的なアドバイスをいただけたのがありがたかったです。
藤田:それまでと違う発想をもらえたことも大きかった。どういう場面で和菓子を食べるのか、どういうパッケージにすると食べやすいのかということなど考えたことがなかった。自分がおいしいと思った和菓子を真面目に作って、お客さんに提案する今までとは、逆の組み立て方で和菓子を考えることが斬新でしたね。
若松:高橋さんは、ほぼ赤字で借金も抱えた豆腐店の生産効率化を図ったり、売り方を変える努力をされて黒字化させたのを知っていましたから、参加する経営者にも刺激になると狙っていました。藤田さんも新しい挑戦をしたいと精力的に動いていましたし、法人化し、事業承継されるということで、よいタイミングだなとお声がけしました。
高橋:豆腐を3割ほど値上げしたいと職人気質の父親に言ったら、「頭がおかしい」と言われて大げんかしました。それで「やれるもんならやってみろ!」と言われて半ば強引に承継しました。取引先にきちんと説明して回った結果、売り上げは下がりましたが、利益は出るようになりました。
藤田:承継の話は10年くらい前からあったんですが、細かく決まっていませんでした。あるとき法人じゃないから、ホテルイベントに出られないと言われ、個人事業の社会的信用の限界を痛感したことが、法人化して継ぐきっかけになりました。
若松:家業は、どのタイミングで承継するかが非常にわかりづらいですね。親は「まだこいつわかってない」と思っているし、継ぐ側は「仕事はできているし、もっと現状を変えたい」と思っている。私は、次の世代が30~40代のうちに事業承継するほうが、現役感があって良いと思います。
藤田:親の世代は、和菓子は値段を上げたら売れないと思い込んでいたんです。でも「うちの商品は良いものだから、自信をもってこの価格にしよう」とやってみたらちゃんと売れて、しかも次に良い商品を作る余裕も作れる。私には直接言わないけれど、父が「なんかインターネットでやってるみたいなんだよ」とうれしそうに周囲に話をしていることを回りまわって耳にしました。
高橋:今まで卸一辺倒だったのを、直売やネット販売も視野に入れて売るチャンネルを増やしていきます。うちの父親が何も言わないってことが、今のやりかたを認めてくれていることになると思っています。アイデアソンで「親の世代のビジネスモデルは、事業承継するころには賞味期限切れになっている」という話を聞いて、全くその通りだなと思いました。しかるべきタイミングで経営者となったほうが、やりがいもあるし、楽しく家業に取り組めると思います。
若松:これからどんな事業展開を考えていますか?
藤田:茨城県は干し芋の生産が日本一なので、それを使ったお菓子を考えています。去年、県がパリの隣の都市、エソンヌ県と姉妹提携都市になったので、フランス製のコニャックを使って日仏の懸け橋となるような和菓子を作りたいんです。フランス大使館の人に食べてもらおうとか、県の公式のお土産としてフランスに持っていってもらおうというアイデアも出てきました。世界に目を向けることになるとは思ってもいなかった。こんな楽しいことを考えてもいいんだ、道は広がるよとみんなからアドバイスをいただいたおかげです。
高橋:私も海外で豆腐屋をやりたいというイタリア人と知り合って、今、毎週末うちで豆腐作りを教えています。以前だったら、こういうことに関わろうとは絶対に思わなかった。でもアイデアソンに参加して「いろいろできるな!」と、柔軟な考え方ができるようになったおかげで楽しいです。カフェも始めたくて、そこにはインターンを活用していけたらと思っています。うちなんかでも、インターンを呼ぶことができるなんて思ってもみなかったですから、この発想もアイデアソンに参加したから生まれたんです。
藤田:自分の思いをかなえるために口に出して「やります」っていうと、より実現性が高まりますよね。去年から「フランスに行きたい」っていろんなところで言っていたら、県の職員の方とつながって「フランスのジャパンエキスポで、練り切りあんの生菓子を作る体験講師をやってみたい」と話したら、前向きに検討してくれています。やりたいことって言ったもん勝ちだから、ますます楽しくなる。若い世代には、やりたいことをどんどん宣言しながら、行動に移してほしいですね。
高橋:今、水戸農業高校の生徒が無農薬で作っている大豆を使って豆腐を作ろうと考えています。これも豆腐作りの講師として呼ばれたのがご縁で始まったことなんです。直売所ができたら週末限定販売の目玉商品にするつもりです。
若松:将来を見据えながら、地元の良いものを生かし、どう海外にも売っていくかの話をお二人がしていることが、とても魅力的です。扱っているものは昔ながらのものだけど、ニッチな商品だからこそ先駆者になりえる。それができるのが家業なのではないかと、話をお聞きしながら思いました。
「家業イノベーション・アイデアソン2020」でのワンショット
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