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事業承継

仲卸が「魚のプロコンサル」になる日まで
“後継ぎ資産”を糧に、暴れまくる

一鱗共同水産株式会社 営業部長 本間 雅広氏
RESUPPORT 代表/デザイナー 前 NPO法人北海道エンブリッジ 事務局長 江川 南氏

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この記事は8分で読めます

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「家業イノベーション・ラボ」は、エヌエヌ生命が、NPO 法人 ETIC.(エティック)や NPO 法人農家のこせがれネットワークと共催し、意欲的な家業後継者のつながりを創出している。今、強化しているのが全国の「地域コーディネーター」との連携による、次世代後継者の発掘やサポート。今回は、家業イノベーション・ラボに参加している家業イノベーターと、そのエリアのコーディネーターの対談企画第一弾だ。札幌市中央卸売市場で水産仲卸をする一鱗共同水産の三代目、本間雅広氏。教師から転身、家業に入るも業界や家業の課題に直面し、苦悩する日々が続いた。自社パンフレット制作で出会った江川南氏がつないでくれた、地域の異業種や全国の後継ぎとの出会いから、仲卸の枠を超えた活動が加速している。

3代目として感じた危機感
“鮮魚の卸売り業界”に未来はあるか?

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国内外から集められた大量の魚の下見をし、セリ落とした後小分けにしたり、加工をし、スーパーや小売業者に販売するのが仲卸の仕事だ。ただの仲介業者ではなく、海にいる漁師と消費者をつなぎ、安定した質と量の魚を適正な価格で流通させるのが信条。そのための目利き力と胆力でセリの場で日々勝負する「選魚職人」というプロ集団だ。

 

「祖父の代から60年続いてきました。大量に買って、大量に売れた時代に築いてきた信頼財産で今があります。おそらくピークは約20年前。今後は漁獲高が減少し、人口も減る。流通経路はもっと変化するでしょう。このまま同じことをしていては、明るい未来は描けません」

 

会社は二代目の父が経営し、順調に事業を大きくしている。自分は日本史教師となったのだが、その職を辞し、25歳で家業に入ったのはその父親に負けたくないという一心からだった。

「昔から父親に負けることは許されないと思って生きてきました。あるとき親子でゴルフに行ったら、料金がすごく高い。教師を続けていても自分の息子にゴルフをさせられる自分にはならないなとわかって、3カ月悩みました」

結果、いっそ同じ会社に入って、父親より高い給料をもらえるまでになろうと決意した。「今、その戦いの途中ですね。悔しさをかみ殺しながら、いつか見ていろよと思ってます」

自分と一緒に未来で活躍する
そんな人を今、採用したい

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初めて足を踏み入れた市場で魚の量に圧倒されたり、自分の年収くらいの金額をかけて、仕入れた魚が果たして売れるのか悩んで眠れない夜もあった。

「でも何年働いても、自分が一番の若手なんです。このままでは自分の代になったときに、ひとりも社員がいなくなると新卒採用を願い出ました」

 

前職の縁で学校訪問をしようとパンフレットを探したら、25年前に祖父が作ったものが出てきた。

「ギリギリ、カラーなんですけど、なんだこれは!って。この業界に未来はあるのかと暗たんたる気持ちになりましたね」

 

なかなか仕事に楽しさを見いだせず辞めることまで考えたが、どうせなら最後にひと暴れしてやろうと考えなおした。

「会社に足りない、新しいパンフレットやホームページを作って、その反応を見てからでも辞めるのは遅くはないと、役員たちに直訴しました」

そこで知人に紹介されて出会ったのが、デザイナーの江川氏だった。

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デザイナーがつないでくれた
後継ぎコミュニティ

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本間氏の熱い思いを聞いて、江川氏が提案したのが魚の形をした斬新な入社案内だった。

「デザイナーは、クライアントの“どうあればいいのか?”という悩みをデザインで解決するのが仕事の基本だと思っています。これをプレゼンしたとき、通るか不安でしたが、社員の方が面白いと言ってくださって制作できました」

 

そこには本間氏の周到なプレゼン必勝術があった。

「大学まで続けたソフトテニス部で培った、事前の根回しで敵対勢力を孤立させる作戦をここでもフルに活用して勝利しました」

 

江川氏は今年4月に個人事業主として独立し、中小企業のブランディング支援を行っているが、前職であるNPO法人北海道エンブリッジでは事務局長を務め、地域コーディネーターの活動もしていた。ここで魅力的な北海道の企業と若者をつないで、長期インターンシップを経験してもらったり、地域の次世代後継者とのコミュニティづくりコーディネーターを担っていた。

「家業イノベーション・ラボから札幌で面白い後継者がいたら紹介してほしいと頼まれて、本間さんと一緒に東京で行われた「事業ブラッシュアップ会」に参加して、全国の家業の後継ぎをご紹介することができました」

 

本間氏は、それを契機に札幌にいたのでは出会わなかったであろう後継者たちとの交流を深めて、自分の学びの場としている。

「家業イノベーション・ラボで出会う人はめちゃ面白いです。普通だったら会えないような方から話が直接聞けます。押し付けられる感じは全くなくて、やんわり話をしても、答えをくれるんです。大成功した人の話を壇上から聞かされるより、自分と同じように悩みながら挑戦している家業経験者の話のほうがしっくりきます」

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NPO法人北海道エンブリッジが開催する、創業支援プログラム「mocteco(モクテコ)」の様子

パンフレットが生み出した
異業種社長との協業

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このパンフレットは、地元札幌での異業種との出会いも生んでくれた。知り合いとのバーベキューの時のこと。このパンフレットを配っていると「面白いね」と反応してくれる人がいた。

「それが札幌で人気のイタリアンレストランや『夜パフェ』を流行らせたGAKUさんでした。いったい何がしたいのかと話が盛り上がりました」

 

仲卸という職業をもっとみんなに知ってもらいたい。おいしい魚をもっと多くの人に食べてほしいと訴えた。

「そこでおいしい魚を出す飲食店『一鱗酒場』を一緒にやることになりました。開店したとたんにコロナで緊急事態宣言がでたので、お客さんが来ない。(笑)でもスタッフは底辺を見てるので、あとは上がって行くしかないとわかっているので、大丈夫です」

 

ここで若者が好んで食べる魚を知ったり、GAKUさんが生み出すメニューに、新しい仲卸の可能性を感じている。

「この店はマーケティングの大事な場です。僕ら仲卸は、魚の売り方までコンサルできなくては存在価値がないとわかりました。ここで得た魚料理のレシピなどの情報を卸した先に提供して、魚の価値をもっと上げていきたいですね」

他業種の人からもらうアドバイスは、たいてい的を射ていて、正解なのだという。

“後継ぎ”って、ぶっちゃけ「お得」
やる気さえあれば、なんとかなる

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「『一鱗酒場』は、地元の経営者の方などとの出会いの場になってきて、いろいろなお話をいただけるようになってきました」

地元で有名なパン屋『どんぐり』の社長ともここで知り合い、廃棄処分するしかなかったパンを仕入れて市場で安く売るようになったり、ラーメン店やカフェとコラボ商品を出したり、デパートの催事場から声がかかるようになった。

 

江川さんは最近、本間さんとの出会いを通じて考えが変わったことがある。

「父が会社を経営しているのですが、家業を継ぐ気は全くありませんでした。でも本間さんを見て、いろいろな家業の継ぎ方があるんだなと学びました」

自分らしく家業を継ぐことに興味がわいてきて、自分の得意分野を生かしながら継ぐことも視野に入れて考え始めたという。

 

「後継ぎって、ぶっちゃけ『お得』ですよね。商売の土台もしくみも信用という財産もあるなかで、新しいことをやると注目されて、褒められるんですよ」

本間氏は今でも迷いが出ると、意欲的な経営者や後継ぎ、学生たちに家業イノベーション・ラボやNPO法人北海道エンブリッジ、行政が主催する会を利用しては、積極的に会いに行っている。

 

「後継ぎはね、やる気さえあればなんとかなります。先祖のおかげで今があるから。でもね、いつかそれをぶっ潰して、もっと進化させてやろうとは思っていますよ」

市場の流通システムは最強だと知った今だからこそ、それを超えた先の未来を見据えて仲卸の存在価値をもっともっと高めたいと日夜考え、動き続けている。

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