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「経営ペディア」特別企画 オンライン・セミナー

「コロナはチャンス! 3人の経営者があかす ウィズコロナ時代を勝ち抜く経営のヒント」レポート

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  • イベントレポート

この記事は12分で読めます

9月24日、エヌエヌ生命主催にて、業種の異なる3人の経営者を招き、経営者向けオンライン・セミナー「コロナはチャンス! 3人の経営者があかす ウィズコロナ時代を勝ち抜く経営のヒント」が開かれた。

登壇者

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株式会社ヴィエリス/代表取締役社長 佐伯真唯子 氏

株式会社ヴィエリスは、脱毛サロン「キレイモ」を全国に約60店舗展開。佐伯氏はその創業メンバーであり、2019年3月より代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)に就任

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株式会社リゲッタ/代表取締役 高本泰朗氏

父が設立した履物製造業タカモトゴム工業所を事業継承。現在は「リゲッタ」をはじめとするコンフォートシューズを企画・製造・販売している

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株式会社FBマネジメント/代表取締役社長 山田一歩 氏

「100年企業を100社創る」というビジョンのもと、老舗企業に特化した経営支援グループとして成長し、年間1,000社のコンサルティングを行っている

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が私たちにもたらした環境の変化は計り知れない。人の行動に大きな影響を与え、経済活動を大きく変えてきた。特にその影響を大きく受けているのが、日本の企業の約99%を占め、日本経済を動かす力である中小企業である。

先の読めないウィズコロナの環境にどのように対応していけばよいのか?コロナ禍が収束した後にはどのような環境や社会の変化が待っているのか?長期的な事業継続に向けたヒントとは?

 

セミナーは、①コロナ禍で直面した問題②どのように難局を対応してきたのか③これからの戦略という3つのテーマに沿って進められた。

① コロナ禍で直面した問題

佐伯氏(以下、佐伯)

2月は影響が限定的だったが、3,4月は影響が出始め不安が募った。実店舗の個室でお客様の肌に触れる業種でもあるため、お客様の不安に繋がりやすいということや、緊急事態宣言中、店舗を休業せざるを得なかったこともあり、再開の見通しが立たない中、来店を楽しみにされていたお客様一人一人に連絡し、来店を諦めていただくのは申し訳ない気持ちで一杯だった。スタッフも今後の生活がどうなるか不安を感じていたと思う。

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高本氏(以下、高本):

3月は情報が整っておらず、はじめに幼稚園、小学校が休みになり、パートさんたちのお子さんをどうするかという問題が出た。社内でスタッフが学童保育のようなことをやって対応したが、毎週情報が変わり、店舗営業するのは不謹慎なのではないかという気持ちにもなった。直営店舗4店舗を4,5月の2ヶ月間休業したほか、卸先の店舗と10数店舗のパートナーショップも一時閉店。さらに、スポーツ用品店などへの納品がストップし、支払猶予の要望を受けることもあった。とにかく情報をかき集めながら、店舗の正社員11人の人件費とアルバイトさんの給与保証、4店舗の家賃を確保する日々だった。売り上げ、商談、展示会、全てが止まった。スタッフの命を預かっているという意識から来る不安と、売り上げと両方で悩んでいた。

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山田氏(以下、山田):

元々、老舗企業はリアルなビジネス中心のところが多いが、今回は人の移動が止まったことで、ホテルや飲食や物流に付随する業種はダメージが大きかった。あとは、百貨店など卸を通じて販売している会社等だ。その他は、思ったほどダメージは受けていない印象だ。経営の柱となるサービスが2種類以上ある企業は影響を最小限に食い止めている。例えば、販売エリアが分散されているとか、リアルとオンライン両方の販売方法があるとか、主となる事業に加え不動産事業収入も得ている、とかだ。

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② どのように難局に対応してきたのか

高本:

スタッフ、財務、本業、と分けて考えた。まず、スタッフに関しては、コロナに対し「自粛派」と「自粛しない派」の両方の意見を取り入れた。情報はスタッフと随時共有し、必要以上にコロナを恐れず、基本的な安全対策の実施を徹底した。手洗いやマスク着用など新型コロナ対策の知識をシェアしたり、出勤方法を段階的に変更したり、時差出勤、車通勤、リモート勤務などを行ったりした。スタッフから同居家族の年齢を聞いたり、通勤中の交通機関の混雑率を聞いたり、スタッフ一人一人の実態を把握し、各個人の状況に合わせて柔軟に対応した。

 

財務に関しては、キャッシュフローの安定を図り連鎖倒産のリスクを軽減するため、緊急保証制度等を活用し保証協会、商工中金、公庫などから借入れをした。

 

本業においては、ZOZOTOWN等のECモールへの水平展開の実施や、巣ごもり需要に合わせて自宅で出来る、サンダルの色塗りワークショップを開催した。医療従事者に向けた格安のリゲッタ販売も行った。そうして過ごしつつ、6月になったら国が何と言おうと店をオープンさせて営業するぞ、という気持ちだった。

 

従業員に与える情報をしっかり取り入れるという意識を持ったことで、経営者として成長した部分もある。4,5,6月頃は従業員に「目先の売り上げは取らなくていい」と言っていた。靴業界は、製造をしているので、マスクの製造をし始めたところが多かった。しかし、理念に反するということで、当社はやらなかった。

 

目先の利益よりも、本業においてデザインや企画、開発という面で尖らせ、広げることが大切だという話をした。ほぼ全員のスタッフが、良いものを作って届ける大切さを意識するきっかけになった。

 

当社はこのコロナ禍を支える医療従事者へ、「社会に役立てることを」という気持ちから、コンフォートシューズの提供を行っている。医療の現場からは感謝の声が届いている。

 

リゲッタの商品は立ち仕事をする人に対して真摯に作っている。履いたことのなかった人から、「一緒に支えてもらえている気がする」という声があった。スタッフの何かしたい、という思いを実現するために、ほぼ原価で医療従事者の方に靴を送った。

 

心の面だけではなく、履きやすさの面でも喜んでいただけた。経営理念である「楽しく歩く人をふやす」にもかなっており、今後のビジネスや活動にも繋がっていくと思う。

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佐伯:

本社はすぐにリモート勤務に切り替えた。一方で、脱毛サービスの提供はリモートでは不可能であり、いつ営業再開しようか考えていた。最初の頃、渋谷など同じ駅周辺に4店舗あるようなところは、臨時に1店舗に集約したりした。

 

営業再開にあたっては感染予防対策が急務の課題だった。受付に飛沫防止用ビニールカーテンを設置、手指の消毒と検温の徹底、スタッフのマスク着用はもちろんのこと、アイシールド(当時は入手困難のためスタッフ全員で手作りした)とゴム手袋を着用しての施術など、細かい毛を見る必要があるエステティシャンのスタッフたちは慣れるまで大変だった。スタッフの休憩時間の食事は、部屋を分けるなど、ソーシャルディスタンスにも気をつけた。

 

リモート勤務になったお客さまが、パソコンを打ちながら指の毛が気になると言ってご来店される方などもあり、徐々に客足は戻ってきている。

 

開業は全店舗GW明けからと決めていた。1200人のエステティシャンを抱えているが、4月に入社した新卒には、動画での研修を行った。

 

安全対策はゴールがない。改良を加え、今も続いている。例えば最初は体温計を使っていたが、今ではサーモグラフィカメラで検温している。


山田:

情報は日々変わる。そういう時、有事の際のトップダウンの意思決定力、それを現場で実行する平時の時の組織力=組織マネジメント力の差が出ている

 

今の会社はボトムアップで組織をマネジメントしようとしているところが多いが、有事の時は間違いなくトップダウンでするべきだ。しかし、社長を尊敬していなかったり会社の理念に共感していなかったりするとトップダウンは効かない。

 

有事の時に動く組織を平時から社長が見せているかどうかが本質だ。社内の風通しや、会社の理念を共有しているという、基本が大事。また、常日頃から、「ビジネスモデル」×「組織マネジメント」の両軸を強化して、財務対策をしている会社は、有事において逆に強い。

 

50㎝横で同僚と仕事していたのが突然リモートワークでは、社員が迷いや不安を抱く。会社の方向性を示す、「大丈夫だよ」と言ってあげる、役割やミッションをもう一度示す。当たり前だがそういうことが意外と難しい。リモートワークとリアルを使い分ける「ハイブリッド経営」を成功させることが重要だ。

 

③ 今後の戦略

佐伯:

今よりもっとオンラインでのコミュニケーションが浸透していくこれからの時代には、実店舗で受けるサービスはより特別なものになっていく。特別な時間を過ごしにご来店いただくお客さまに対して、安全対策はもちろん、「わざわざ来て本当に良かった」と思ってもらえるクオリティのサービスを展開するためにより一層努力していきたい。具体的には、計画中だが、脱毛のみのサービスからリラクゼーションを含めたエステサービスなどへ展開していきたい。コロナがなければ考えなかったかもしれない。立ち上げ当初に考えていたことをもう一度考えるきっかけになった。

 

今は実店舗に来ないと購入不可な家庭用脱毛器等を、ECで売るということも考えている。また、一か所に何店舗かあって、上手くいかないと感じていたところを、コロナで統合できた。背中を押してもらったような面もある。

 

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高本:

B to Bは、服飾業界、スポーツ業界をはじめさまざまな業界と商売しているが、販売経路、形態の分散化を強めていきたい。また、D2C(Direct to Consumer)の勢いを強めて、他社の影響を受けにくい環境を作る。サービスが明確に決まっていないのはうちの強みでもあるので、柔軟にやっていきたい。今までもこの業界はずっとコロナのような状態だったようなものなので、その自覚を持つことが大事だと思う。

山田:

大きな会社でもまだECをやっていないところは多くある。インターネットを取り入れた商売はやっていくべきだ。顧客管理もデジタル化すべき。2025年までに後継者不在になる中小企業が増える可能性がある。

これからの時代は、リアルとデジタルで事業経営をとらえ、常にアンテナを張って、異業種の成功事例を積極的に取りにいき自社に活用できることは取り入れるスタンスが大事。

 

マーケティングとデジタルとM&A、この3つが、今後中小企業が進化していくポイントと捉えている。

 

M&Aに関しては、最近はネットで「スモールM&Aクラウド」ともいうべきプラットフォームがある。100万円くらいから買えるようなM&A案件がアップされている。普段からM&A出来る会社がないか、リサーチしておくことが必要だ。

 

また、リアルで強い会社がECを始める際に自社内で得意な人を探すのは困難だ。スモールM&Aで、ECが得意な会社ごと買う、などやってもいい。それが成長につながる。自分たちでデジタルマーケティングを始めるよりも、情報を積極的に取りに行くことが今後経営者に必要なのではないか。

【組織の育成について】

登壇者間では組織マネジメントについてもディスカッションが繰り広げられた。

山田:

ビジネスモデルも大事だが、組織マネジメントが大事。役割分担はどうなっているのか?

 

佐伯:

CEO室があり、そこに全ての情報が集約するようになっていて、そこが自分の右腕の部署になる。また、店舗の1200人を統括している営業部に、部長とマネージャーが7人ほどおり、そこがトップとして組織が構築されている。

 

高本:

山田さんが言っていた、緊急時はトップダウンというのは分かるが、ずっとそれだと社員が社長に依存してしまう。弊社では、15名ほどのコアメンバーと呼ぶ各部署のリーダーと、月に2回、6時間くらいしっかり話す。会社のこれからの経営計画など、理解度が増すように、自分たちが会社を運営しているという自覚を持ってもらいたい。ただ、中核のメンバーは苦しんでいると思う。まだ失敗の経験回数が少ない。中核メンバーに沢山挑戦してもらって、成功よりも失敗をよしとするくらいの姿勢じっくり5年、10年待って経験を積んでもらいたい。彼らは自分が家業を継いでから集めた人がほとんどだ。自分のことを信頼してくれていて、歯を食いしばってしんどいこともやってくれている。

 

山田:

一番大事なのは人柄。能力だけあって、突然上に立って失敗するケースは多々ある。自分と馬が合う人間を幹部に登用して長い目で教え込むほうが大体うまくいく。それも高本さんがおっしゃるように、半年、1年のスパンではない。私は「2人で旅行に行って、うまい酒が飲めるかどうか」で幹部に採用するかどうか、決めてください、といつも言っている。人格が合っていればそれなりにできることが多い。

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佐伯:

私は各部署が自ら提案し動いてくれるので、あまり口出しをしないようにしている。失敗したら皆、自分で気づいてくれる。創業時からいる幹部は3割ほど。中途採用の人もおり、さまざまだ。創業当時は全て自分で担うスタイルでやっていたが、視野が狭くなるし作業に追われるので、幹部に入ってもらった。

【視聴者の皆様へのメッセージ】

佐伯:

本日は貴重な機会ありがとうございました。まだコロナ禍ではあるが、弊社としてできる限り安心安全に努めてやっていきたいと思います。

 

高本:

脚にやさしいインソール、来年発売の阪神タイガースとコラボのサンダルを開発しました。引き続き楽しいことを、履物を通じてやっていきたいと思うのでよろしくお願いします。

 

山田:

当社は老舗の会社をサポートしていますが、個人的な理念として、自分の会社で徹底的に試していないことはお客様に提案していません。先ほどマーケティング、デジタル、M&Aの3つの領域の話をしましたが、当社のグループ自体が徹底的にチャレンジして、吸収したノウハウを老舗企業の皆様に提供する、そんな会社を引き続き目指していきます。今後、永続的な経営に悩まれることがあればぜひご相談ください。

【セミナーを終えて】

業種の違う3人の経営者がどう新型コロナ禍と戦ってきたか、赤裸々に語ってくれた。印象に残ったのは、有事の際トップに求められるのは、従業員と情報を共有し不安を解消することや、戦う姿勢を見せ続けること、また必要とあれば果敢に決断し素早く動くことなどだ。リアルだけでなくオンラインでの販売方法があることが大事、というアドバイスも説得力があった。


イベント後半は、視聴者からの質問も交えて進められたが、イベントで語られたメッセージが、多くの中小企業経営者にとって今後の経営のヒントとなれば嬉しい限りである。

 

 

 

3名の登壇者の取材記事(「経営ペディア」掲載記事)もご覧ください。


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