インボイス制度導入でどうなる? 税務調査の方針と留意すべきポイント
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昨今のコロナ感染症の拡大を契機として、既存の事業継続計画(以下「BCP」)の見直しを進める企業が増えてきています。そこで感染症を想定して、BCPを見直すポイントについて紹介します。
コロナウイルスの感染拡大が続く中、皆さんの会社の状況はいかがでしょうか?多くの社員が出社しているタイミングで社員の感染が発覚した場合、その社員の2週間程度の出社停止だけでなく、濃厚接触が疑われる社員の出社停止なども想定され、業務に大きな影響が出てしまうこともあり得ます。状況によっては、工場の一時操業停止や店舗の一時閉店をせざるを得なくなることも考えられ、とくに人員の少ない中小企業の場合は事業への悪影響は非常に大きなものとなってしまいます。
当初の想定以上にコロナ禍が長引いている状況を鑑みると、BCP(事業継続計画)に疫病や新型インフルエンザなど感染症対策を盛り込む時機といえるのではないでしょうか。
感染症対応は、大きくは、感染予防策と発生後の対応に分かれます。
コロナの感染は、飛沫感染と接触感染が中心といわれておりますので、人と人との距離を取る、マスク着用や咳エチケットによる飛沫感染防止、オフィスの換気などが欠かせません。
感染予防策としては、図表1にあるような、コロナウイルス対策として求められている様々な取組みを自社なりにきちんと定め、確実に実施することが重要です。
次に、発生後を想定した対応としては、まずは発生時の対応責任者や、社内での対応ルールの設定をしておきます。感染者や濃厚接触が疑われる人の自宅待機ルールやその場合の給与支払いのルールなどをきちんと考えておきましょう。また、責任者や上司等以外に感染した個人が特定されないような配慮も必要です。
感染発生後の対応は、基本的には保健所の指導に沿って行っていくことになりますが、濃厚接触者の特定に時間がかかることも考えられるので、社内で進めておくことなども検討しておいた方がよいでしょう。詳しくは図表2のチェックリストを参考にしてください。
BCPとして重要なのは、感染症などで、一定数の社員が出社できなくなったことを想定し、優先事業、優先業務を明確化することです。1割減、5割減などの想定別に、限られた出社人員で遂行すべき業務を明確にし、そのために必要な多能工化の推進など、その対応策の実施が求められます。
以前から新型インフルエンザ対策を検討していた企業でも、今回のコロナ禍の状況によって見直すべき点があります。
従来の感染症対策は、一定(3割など)の従業員が感染症にかかって出社できなくなるという想定でした。その人数が出てこられない中で、どのように業務の優先順位を定めるかを検討・実施していたと思います。
しかし、今回のコロナウイルスのような強力な感染症では、緊急事態宣言が行われ、全社員の出社停止や、8割減などの対応も求められる可能性が出てきました。そのため、こうした状況においても事業を継続するための対応策を検討し、BCPに追加する必要が出てきたといえます。
スタッフ業務(本社や管理部門など)については、完全なテレワーク(自宅やリモートオフィスなどでの業務遂行)が可能となる体制やインフラの構築が求められます。
これらは短期的には実施が難しい状況ではありますが、政府も電子化の推進を進めていくであろう状況下では、スタッフ職については、ペーパーレス、電子承認の推進や、ノートパソコンや回線確保など、テレワーク可能な環境の早期構築が必要といえるでしょう。会社に行けなくても、テレワークで業務継続ができるような体制の構築が求められています。
リアルの対応が求められる生産やサービス要員についても、最小限の従業員で運用できる体制の確立に向けて、さらなる検討が必要です。
一定の出勤率の低減、3密の回避を想定すると、工程や職場での要員の間引きを実現する必要があります。ハードルの高い無人化や完全自動化に向けた検討の前に、一定の出勤率でも生産やサービス提供を妨げないような工程別など小規模での省人化(従来5人でやっていた作業を3人で実施できるようにするなど)対策が急務となりました。
主要ラインや工程ごとに、自動化ができそうな作業と、人間でなければ実施できないような作業を切り分け、自動化できそうな業務は一部でも早期導入の推進と出勤必要作業者数の削減等の推進が求められます。また、人でないとできない作業の作業スペース確保等の対応、自動化、リモートでの監視や対応の強化も検討しましょう(図表3)。
徐々にでもかまいませんので、中期的に事業継続力向上に向けた施策を着実に実施していきましょう。BCPを改定する際の流れについては、図表4を参考にしてください。
今回は、感染症対策に向けたBCP見直しのポイントを説明しました。今回述べてきたようなテレワーク・リモートワーク対応力の強化や、リアル現場での省人化の早期推進は、今後の労働人口の減少に向けて必ず求められる対策です。
また、今後に向けては、さらなる異常気象や温暖化などを想定した対応も求められる可能性があります(図表5)。
今の事態を不幸ではなく、良いきっかけととらえ、対策検討のスピードアップを図ることは、今後の自社のサステナビリティ(経営の持続性)強化のためにも大変重要です。今を変革のチャンスと受け止め、前向きに自社としての対応策を積極的に検討していただきたいと思います。
【著者】
大谷 羊平(おおたに ようへい)
株式会社日本能率協会コンサルティング 取締役 シニア・コンサルタント
自動車、自動車部品、家電、住宅、アパレルなど各種メーカー、ソフトウェア会社、出版社など100社以上の大手・中堅・中小企業にて企業改革活動の支援をおこなっている。業務改革や基幹システムの更新支援を中心にしつつ、ガバナンス強化からリスクマネジメント、コンプライアンスの強化などGRC領域も専門としている。BCP策定については、2006年以降10数社で支援している。
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