40年築いたお客さまとの家族のような関係をこれからも守り抜く 株式会社日本リスクコンサルタント 代表取締役 小平 義久さん
- 60代-
- 関東
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2025年10月、「ビジョンを実現するつながり」の活動の一環として家業後継者を対象に6回目の「オランダスタディツアー」が開催されました。
そこに参加した小嶋織物株式会社(以下、小嶋織物)の小嶋恵理香さんと2024年に参加した株式会社乗富鉄工所(以下、乗富鉄工所)の乘冨賢蔵さんに、このツアーならではの体験や得られる学びや参加後に起きた変化についてエヌエヌ生命保険株式会社(以下、エヌエヌ生命)保谷友美子が聞きました。
※「オランダスタディツアー」で、より詳細なツアー記事がご覧いただけます。
保谷 エヌエヌ生命の親会社であるNNグループの本社はオランダにあります。そこで家業後継者・経営者の方にオランダ最先端の取り組みやサステナビリティを体感していただき、ご自身の事業や地域に役立つイノベーションのきっかけになれたらと、オランダスタディツアーを毎年実施しています。
乘冨 私は、福岡県柳川市で80年近く続く水門メーカー、乗富鉄工所の三代目です。オーダーメイドで水門を作る技術を生かし、オリジナルのキャンプ用品や家具なども手がけるようになり、海外進出を模索する中で2024年9月のツアーに参加しました。
保谷 1年半という時間を経て、あの時を振り返ってみていかがですか?
乘冨 ツアー中は海外へプロダクトを売ることばかり考えていましたが、オランダで見た水門からのインスピレーションが帰国後どんどん膨らみました。そこから得たものが大きく自分にフィードバックされていると気づきましたね。おかげでオランダと柳川の共通点に気付き、「人と水が共生する未来」という大きなビジョンが生まれました。会社のスローガン「OPEN THE GATE」にも確信がもてるようになって、活動の幅が広がっています。
保谷 今年のツアーに参加した小嶋さんはいかがですか?
小嶋 小嶋織物は、京都府木津川市でもうすぐ創業100年になる織物の壁紙とふすま紙を作っている会社で、私は四代目社長になるべく修行中です。このツアーでは、自分の考え方やこれからの人生にとても大きな影響を受けました。大人になってから自分と世界を見つめなおす時間を1週間もいただき、インプットしすぎて頭が爆発しそうになるなんて夢にも思いませんでした。あらかじめ参加者の興味に合わせてカスタマイズされた視察先に連れて行ってもらって見学したり、スタートアップ企業の方と意見交換したり、他のプロジェクトでは得られない貴重な経験をたくさんしました。
乘冨 それを忘れないうちにと結構な量のレポートを夜な夜な書いたり、ツアー仲間と議論したりしたのが忘れられません。それは今でも自分の大きな財産になっていて、レポートを時々読み返しています。
保谷 具体的にオランダスタディツアーで得られたものを教えてください。
小嶋 私は、日蘭協業支援プログラム「MONO MAKERS PROGRAM」(以下、MMP)に選ばれて参加したので、デザインスタジオ「STUDIO SAMIRA BOON(スタジオ・サミラ・ブーン)」で協業相手のサミラ・ブーンさんと対面で打ち合わせするのがひとつの大きな目的でした。第7回京都インターナショナル・ギフト・ショー2026で行うMMPの国内成果報告会に向けて小嶋織物のテキスタイルを使った「バーチカルブラインド」の製品開発にチャレンジしています。
保谷 小嶋のテキスタイルが一番美しく見えるようにと選んだのが、縦長のバーチカルブラインドだったのですか。
小嶋 サミラさんはテキスタイルと光を組み合わせるのがとても上手なデザイナーの方だと今までの作品を見た時から感じていて、ここにたどり着きました。こうして形になったのも、彼女をご紹介いただき月二、三回、通訳までしてもらいながら打ち合わせができたからです。こうした形で約1年間併走してくれるのは本当に助かります。
保谷 でもこれからが本番ですからね。日本の規格に合わせたり、販路を探したりと大変なことも多いでしょうが、ツアー参加者の先輩たちの知恵も借りながら突破していきましょう。
小嶋 まだ四代目にもなっていない私が、海外のデザイナーと組みたい、欧州の市場を見に行きたいといきなり言っても経営陣はなかなか「うん」とは言わなかったと思います。でもこのツアーは無料で参加でき、しかも協業を後押ししてくださる。会社に打診するときに「1週間お休みをください。費用はかかりませんから行かせてください」と言えたのは、とてもありがたかったです。
保谷 ツアー内容はいかがでしたか?
小嶋 プログラムが唯一無二の内容で感激しっぱなしの毎日でした。はじめはオランダで何が学べるんだろう?と考える必要がありましたが、多くのデザイナーが活躍している国なのだと初めて知りました。さまざまな施設を見学し、起業家やクリエイターの方たちと交流したおかげで、自分の視座がどんどん上がっていく感覚でした。個人的に約10年越しに、アーティストとのプロジェクトなども行うラボやショップを兼ね備えたオランダ テキスタイルミュージアムに行けたのですが、当時より様々なデザイン、プロダクトを自分ならどうするかという視野で見るようになっている自分がおもしろかったです。ツアー仲間から受けた刺激も大きかったです。
乘冨 参加者は異業種の方ばかりですが、みんな一歩踏み出して挑戦したいと考えている人たち。だから夜、宿に帰ってきてからも毎日のように議論していました。学ぶしかない環境ですし。大人の修学旅行みたいで愉快な時間でしたね。今でもその仲間とは経営やプロジェクトの話をしたり、情報交換したり協業するなど歴代からのつながりを含め関係が濃く続いています。
保谷 乘冨さんは、ツアーがオランダでよかったと思いますか?
乘冨 自分ではまず選んで行かない場所ですが、行ってみたらオランダ人との距離感がすごくよかったですね。当社は水門事業を軸としていますが、新たなプロダクトを生み出したので、そちらの拡販に意識が取られていました。でもオランダに行ったことで水門事業の描けていなかった未来が開けて、見通せるようになりました。柳川には昔から「水の一滴は血の一滴」という格言があり、みな生死をかけてこの地水を守るために努力をしてきたのですが、オランダに行く前はそんなことを知ろうともせずにいました。帰国後柳川の水門のことを調べていたら、川や水路を研究されている大学の研究者や市民団体の方、川を生かしたまちづくりをされている方などと知り合い、どんどんつながりが広がりました。オランダで水と人の関わり方を起点とした民意の形成を肌で感じられたことに大きく影響を受け自分に響き、水門事業の新たなビジョンが動き出しました。さまざまな人にオランダでの体験を話すうちに九州大学や新潟大学の先生方と共同で実装実験を始めることにもなりました。
保谷 工場に伺った際には、若い方が多くて、生き生きと楽しそうにかっこよく働いていたのが印象的でした。
乘冨 水門を開けたり閉じたりする人手は高齢化で減っています。スタートアップと協業してスマホで動かすようにするプロジェクトなども若手中心で行っています。今では大学の先生たちの知見をお借りして、気象や水路データと水門開閉のノウハウを掛け合わせてAIで最適化して遠隔操作するという社会実験を考えています。うまくいけばこの柳川モデルを東南アジアにまで展開できるかもしれません。
小嶋 すごい広がりですね。実は私もツアー後木津川市に戻ってから地元に何か貢献できないかという意識が高まりました。それはオランダの方たちが地に合ったことで将来を見据えてチャレンジし続けてきていると受け止めたからです。
織物と紙を貼り合わせる技術は全世界でも珍しく、日本では木津川市が100年以上続く有数の産地なんです。でも織物ふすま紙からはじまった地場産業は和室の減少に伴い、第二の柱である織物壁紙はビニール壁紙の台頭で需要も供給も減り、プロの建築関係者でも知らない方が多い産業になってしまいました。それで工場の横の築90年の建物をリフォームし、織物の壁紙とふすま紙のショールーム兼カフェ兼コミュニティスペースを作って、オープンファクトリーも含め、国内外の多くの方に来ていただき知ってもらう場を作れないかと補助金の申請を進めています。いつか木津川市の人が織物の文化があることをもっと誇りに思えるようになるといいなと思っています。
乘冨 うちでは来年、古民家カフェを経営します。柳川に来て川下りをして、もう少しゆっくり滞在してもらえる場所を作りたいのです。この古民家再生の基礎工事に水門を作ってきた鉄工技術が生かせます。まさに水門の技術で元気な街づくりにしたいという流れにつながりました。こうやって街の人たちと協力しながらいろいろな試みをやっていくのが楽しいし、会社のメンバーもそこから元気をもらっています。
保谷 「オランダスタディツアー」に参加してみたいと考える方へアドバイスをお願いします。
小嶋 このツアーに参加する前は、選ばれし特別な人のためのもので私なんか関係ないんだと思いこんでいました。でも、参加経験者のお話を聞いて私もチャレンジしてみたいという気持ちが大きくなり、思い切って応募してMMPに選んでいただきました。だから誰にでもチャンスはあると思います。このスペシャルなきっかけを自分のものにすべく、勇気をもって一歩踏み出してほしいです。
乘冨 帰国後は、ものごとを発想する視点が変わり、自分に何らかの気づきが得られたのがわかると思います。そうなってから自ら生み出す次の一手がとても大きいのです。それをみなさんに感じてみてほしいですね。
小嶋 自分だけの旅だったら絶対に行かないようなところに連れて行ってもらえて、それが次につながっていくんです。ツアーのすべてが学びになります。学びにする、と強い心で参加しました。あと、同じものを見ても感じ方が違うメンバーとその感想を言い合うのが楽しくて。異業種でそれぞれ悩みも違うけど後継ぎという共通の使命を持った仲間たちと旅という濃密に過ごせたあの時間は宝物です。
乘冨 参加を迷う人に言いたいのは、「かかるのは時間だけ」だということ。費用や行き先、言葉の心配もなく、サステナブルを楽しくビジネスにつなげているオランダのダイナミックさを肌で感じることができるなんて、こんなに得なことはないと思います。
小嶋 このツアーを経て、どう成長していけるのか、これからの自分が自分でも楽しみです。
保谷 オランダスタディツアーの体験者は今や約30人。そのメンバー同士が会社を訪問し合ったり、数々の協業が世代を超えて生まれたりしています。このツアーで出会い、学び、そして生まれたつながりを守り育てながら、今後のイノベーションにつなげていただけるお手伝いがこれからもできたらと考えています。
株式会社乗富鉄工所 代表取締役 乘冨 賢蔵さん
1985年福岡県生まれ。九州大学卒。2010年に住友重機械マリンエンジニアリング株式会社に入社、2017年家業である株式会社乗富鉄工所に入社、2024年三代目として代表取締役に就任。ユニークな福利厚生や待遇改善を通じて組織改革を実施し、若手が活躍できる環境を整えた。「ノリノリプロジェクト」を立ち上げ、オリジナル商品の企画販売を行い、スイスでの販売もスタートさせた。業界の枠を越えて、地域に根差した持続可能な企業経営を目指し、次世代を見据えた柳川モデルを模索し続けている。
小嶋織物株式会社 取締役 デザイン企画室 小嶋 恵理香さん
1987年京都生まれ。大学卒業後、東京のテレビ制作会社でADとして働く。2013年祖母の葬儀を機に曾祖父が創業した小嶋織物株式会社に入社を決意。三姉妹長女のため、婿取りお見合い婚活を続けるも断念。自社製品に可能性を感じ、家業愛が一番強い自らが4代目を目指そうと決意し、活動の幅を広げる。その後、料理人と恋愛婿取りをし、今は家業に入ってもらっている。二児の母。
現在は伝統的な織物壁紙にデジタルプリント技術を掛け合わせた新ブランド「織彩美-SHIKISAIBI-」の事業責任者や広報など、「織物壁紙」の可能性を信じ、様々な方向から認知とファンを増やすべくチャレンジしている。
エヌエヌ生命保険株式会社 広報部 CSV推進チーム 保谷 友美子
2021年入社。社会貢献活動を担当。2021年伝統産業を担う後継者に向けた欧州進出プログラムを立ち上げる。後継者と海外デザイナーが協業しながら現地生活者のニーズに合わせた商品開発および海外販路開拓を支援している。
エヌエヌ生命が「ビジョンを実現するつながり」活動の一環として、家業後継者・経営者を対象に行っている取り組みです。親会社のNNグループの本拠地オランダの先進性やサステナブルな取り組みを実際に参加者に体感いただくことで、イノベーションにつながる学びの機会を提供します。
次回のツアー開催は10月を予定。下記より詳細をご確認ください。
お客さまの声をお聞かせください。
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