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突然の事業承継が教えてくれた経営の教え

“もしも”の時の備えの大切さ

有限会社オフィス・バロン 代表取締役 木本 圭亮氏


  • 関東
  • 後継者
  • 相続

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茨城県日立市で、ブライダル映像の制作を皮切りに45年かけて業務内容や規模を拡大してきたオフィス・バロン。現在の代表、木本圭亮氏は、先代として会社を取り仕切っていた母親が2020年に突然亡くなったことから、3代目を継ぐことになった。心の準備もなく、経理をはじめとした業務の引き継ぎが全くなされないままに経営者になったときの苦労を語ってもらった。

 

父が築いた経営のしくみと組織を引き継いで支えた母の突然の死

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オフィス・バロンは、ブライダル映像の制作からスタートし、今では自治体や企業のPR映像や学校などのイベント映像の記録も手掛けている。

「イベントの企画運営を担ったり、葬儀のサポートなどもするようになり、最近では、ドローン撮影やYouTubeのライブ中継などのお手伝いもしています」

 

地元の日立市を中心に誠実に仕事をすることで、地盤を築いてきた陰には、創業者の「会社をずっと安定して継続させたい」という強い思いがあった。

「現会長の父と2代目の社長を継いだ母は、年齢が14歳も離れていました。父が高齢になり、しっかり者の母に経営を任せたのが10数年前になります」

 

会長には、自分がいなくなっても会社が回るような組織を作り上げて、引き継ぐという大きな心積もりがあった。

「会社は組織を作ることが一番大変で、大切だと思います。今の自分の代まで続くしっかりとした組織をつくってくれたのには、感謝と尊敬の思いでいます。おかげで今でも取締役を中心にしっかりと会社を支える体制が整っています」

 

しかし202011月、2代目社長である母が自宅で倒れ、帰らぬ人となってしまった。

「その日は父が外出していて、自分も会社にはいませんでした。帰宅した父が発見し、病院に搬送したのですがそのまま意識が戻ることはありませんでした」

 

今まで大きな病気一つしたことがなかった母の突然の死をにわかには認めることができずに、何度も「これは夢では?」と思ったという。

「今では、この経験を未来に生かしていけばよいのだと前向きに思えるようになりました」

月末の振り込み先も金額もわからない

引継ぎ資料の大切さを痛感した

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一人っ子であった木本氏は、幼い時からいつかは自分が会社を継ぐのだろうと感じながら、育ってきた。

「ずっとサッカーをやってきたので、いつか選手になりたいという目標をもっていたのですが、心の片隅ではそれは難しいよなとも自分で思っていましたね」

 

学校を卒業すると、英語を学ぶために海外に留学した。

「葬儀を手掛けるセレモニーサービス事業部の制服を海外で作っていたので、その交渉を任される形で、語学を学びに行きました」

 

帰国後入社すると、まずは撮影現場の業務を覚えたり、カメラ撮影や編集を学んだりしながら技術を習得していった。

「いずれは自分が代表になるということを常に意識して考え、そこから逆算して会社内で動くようにしていました。やはり自分の役職によって 責任感が違ってきますから、この仕事を今の自分がしていてもいいのかと常に焦っていたように思います」

 

もともと2025年には事業承継をして、代表になることは決まっていたが、経営については母親である2代目社長任せだった。

「今、考えると資金繰りや経理のこと、契約のことなどをマメな母に全部管理してもらっていましたね」

 

母がいなくなってまず困ったのが、月末の振り込みだった。どの取引先に、いつ振り込めばいいのかなどが皆目わからなかった。

「税理士やほかの役員のかたに相談して、色々な資料を引っ張り出してきては、確認しながら支払いなどの経理業務をなんとかこなして、稼働させていました」

 

この時、引継ぎ資料がないと、いかに大変かが身に染みて分かった。

「会社をどう存続させていくかは、知り合いの経営者の方々にも相談できますし、具体的に行動に移すこともできます。でも日々の会社管理についてはどうすることもできませんでした」

 

この時の教訓から、会社業務の引き継ぎシートを作り、日々更新している。

「もし自分に何かあったときに、次に引き継ぐ人は同じような思いをするべきではないと考え、常に更新してわかりやすくしておこうと思っています」

未来にむけて前向きに経営するために

常に備えを繰り返し見直す

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会社の資金繰りや相続の手続きをするようになって、母へ感謝する思いが湧いてきた。

「法人でも、個人でもかなりしっかりと保険に入っていてくれました。そんな準備をしてくれていたことを全く知らなくて、それこそ保険会社の方に聞いて知りました」

 

どこの保険にどのくらい入っていたのかも知らなったので、かたっぱしから問い合わせをした。

「当時、コロナの影響を受けて仕事が止まっていましたから、その法人保険のおかげで運転資金がかなり助けられました」

 

それまでは保険の必要性について考えたこともなかったという。

「どちらかというと否定的でした。でもこの経験をしたことで、自分だけではなくて従業員を守るためなのだと改めて知ることができました。今ではどのくらいの保険に入れば、会社にとってよいのかという目安がはっきりわかりましたね」

 

このつらい経験は、今後の会社経営に必ず生きていくと実感できているという。

「経営者は、最悪のケースを常に想定しなくてはなりません。その万が一のときに備えの資金があるのとないのでは、全く心のありかたが違ってくると思います」

 

もうひとつ保険で助けられたことがある。

「自分が病気になったときに、就業不能保険のサポートがあるおかげで、不安な気持ちになることもなく、治ったら新しいことにチャレンジするんだという前向きな気持ちになれました」

 

いまでは定期的に保険会社と打ち合わせの機会をもっている。

「自分でも情報収集をして、今自分の会社に何が必要だろうという打ち合わせを入念にして、常に見直しながら未来に備えています」

 


口では伝えにくい会社のことは

ヒストリーブックに残して

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突然の事業承継を経験して、改めて思うことがある。

2019年にJC(青年会議所)に入会し、日立市の若手経営者と一緒にボランティアなどの事業を作り上げていきました。とてもきつい活動ではあったのですが、その経験のおかげで急な代表交代にも対応する力がついていたのだと思います」

 

同じ時期にしんどい経験を乗り越えた若手経営者の仲間には何でも相談できる。

JCではどんどん失敗できるし、そこでの経験を会社に持ち帰って新しく挑戦することもできました」

 

会社以外の場所でいろいろな立場を経験することが、会社での自分の役割の再認識にも生きている。

「自分が経営者になってみて、決断することとそれに責任を持つことの大きさが社員時代と全く違うと思うようになりました。母がいた時は、自分の承認欲求のままに言いたいことを言っていたように思いますが、今では下調べをきちんとし、全体把握をしたうえで、発言したり、判断するようになりました」

 

それでも、今でも先代に会社のことで聞いてみたいと思うことがある。

「オフィス・バロンは家族経営なので、プライベートの時は極力会社のことを話さないできてしまいました。でも、もっとしっかりどういう思いで経営していたのかを聞いておきたかったですね」

 

その準備のために、エヌエヌ生命では、「ヒストリーブック」を用意している。

「本当は日々の会話でそれができていればと悔やまれますが、先代の思いとかやり方が、いまだにつかめていないので、それがこうやって残っていれば助かりますね。事業承継をするうえでの、取引先の情報や対応方法、口座情報や運転資金、支払いのことなどの情報は、助かります」

 

会長は、全くと言っていいほど経営には口を出さず、任せてくれている。

「だからこそ、今までの経験を糧にこれからもどんどん成長し続けなくてはと思っています。今、改めて振り返ってみると、あのとき目標を掲げて次のステージにすぐに動くことができて本当によかったと思えるようになりました。もちろん自分の次の人にはスマートに引き継ぎますよ。“もしものこと”って本当に急に起きるんですから」



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