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事業承継

おいしいから毎日飲める、手ごろなティーバッグを広めたい 

株式会社播磨屋茶舗 常務取締役 赤松 佳幸氏 

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株式会社播磨屋茶舗 常務取締役 赤松 佳幸氏

1948年姫路で創業した播磨屋茶舗は、日本茶の製造、卸、販売を広く手掛けている。現在の赤松修二社長が2代目を継ぎ、ティーバッグ加工を内製化したり、姫路城前にグリーンティースタンドを開店したりと企業努力を重ねてきた。しかし時代の流れが薄利多売の収益構造に変化を求めていた。これを目の当たりにした3代目承継予定の赤松佳幸氏は、次世代にお茶を気軽に楽しんでもらおうと「t to(ティートゥー)」というブランドを立ち上げ、販路拡大に挑み始めている。

一度疑問が湧いたら、必ず解決したい
大企業では通用しないセオリーだった

株式会社播磨屋茶舗

2021年9月30日、新しいお茶のブランド「t to(ティートゥー)」のECサイトがオープンした。

「これまで意外となかった『かんたん、おいしい。しかも、ヘルシー』なお茶を手ごろな価格と形のティーバッグで提供することで、若い世代にも無理なくお茶を日常使いしてもらえるようにと考えました」


このブランド開発と販売を担う赤松佳幸氏はそもそも家業をすぐに継ぐつもりはなく、大学卒業後はフィットネス関係の大手企業に就職した。

「祖母からは『将来はあんたが継ぐんやから』と言われたことがあったくらいで、両親からは後継ぎにという話はあまりありませんでした」


家が茶舗なのに、日頃からお茶にあまり縛られない生活をする家族だった。

「大企業に就職してみると、すべてがシステム化されていたり、尊敬できる先輩がいたりと学ぶところが多かったです」


しかし、昔から疑問に感じたことがあるとどうしても解決したくなる克己心が強かった。それが大きな組織、ましてや体育会系の会社ではなかなか叶えられない。そこで生まれた葛藤を、両親に相談した。

「それなら早めに帰って家業を継げばいいと言われました。でもお茶の知識がゼロだったので取引先である製茶問屋で2年間修業をさせてもらいました」


社長である父も、30代まではお茶とは全く関係のない会社で働き、その後婿養子として家業を引き継いだ。その時、自分がお茶の勉強をするのがとても大変だったからと設けてくれた修行の機会だった。


家業に縛られてこなかったからこそ
生まれた新しいお茶の提案

播磨屋茶舗のティーバッグ茶ブランド「t to」

播磨屋茶舗のティーバッグ茶ブランド「t to」

播磨屋茶舗のティーバッグ茶ブランド「t to

家業に改めて入り、赤松氏は会社を見つめ直してみた。

「自分たちでティーバッグを加工して内製化できる工場をもっているってすごい強み、資産なんです。しかもうちの工場長は機械のメンテナンスもすべて自分でできてしまうほどの腕がある。普通は仕入れなくちゃいけない部品まで自らメンテナンスできるから、安くて高品質なものが生産できるんです」


不織布ではなくメッシュ使いのティーバッグは、お茶をおいしく飲めるがその分値段が高いのが常識だった。

「ティーバッグのお茶ってこんなにもおいしんだって改めてびっくりしました。これまでお茶をあまり飲んでこなかったからこそ、衝撃を受けましたね」


知り合いに聞いてみると、おいしいティーバッグのお茶は高くて、毎日は飲めないという答えにも驚いた。

「うちなら、多種多様なお茶を仕入れていますし、中間マージンがなく、自前だから手軽な価格でおいしいお茶のティーバッグを売ることができます」


そして、忙しい若い世代のために飲むと体や心をサポートできるという健康を意識した、ちょっと欲張りなお茶を広めようと新ブランド「t to」を立ち上げた。

「気持ちをリフレッシュさせたり、リラックスして眠ったりとシーンに応じて手軽に飲めるお茶を目指しました」

全部で5種類のティーバッグを、1つ70円しないという価格にこだわって販売している。競合の半分から1/4という低価格だ。


「毎日自分が飲むことを考えたら100円はきついなと思って、値段にはこだわりました。それに健康茶ってクセが強くて、味はいまいちだけど我慢して飲むというイメージも覆してみたかった」

値段も味も我慢せずに、もっとティーバッグでお茶を楽しむというライフスタイルを浸透させようとこだわり抜いた。


壁打ち相手がいたからこそ
理想のブランディングができた

赤松佳幸氏

特定のクライアントに集中している売り上げを分散させないといけないと考えたり、自分たちの販路を独自に作り出すという発想はどこから生まれたのだろうか?

「家業に入り、まず何が自分にできるだろうと考え、経営講座を半年受けました。この時の経験や本などを参考にして播磨屋茶舗のブランディングをしたいと考えるようになりました」


グリーンティースタンドの多店舗展開などを考えたりもしたが、家賃や人件費などリスクが高い。そんななかコロナ禍となり、実店舗での販路拡大がなくなったころ、今の「t to」のブランディングを一緒にしてくれているデザイナーさんと出会った。


「播磨屋茶舗が新しく作るティーバッグのコンセプトをゼロから一緒に考え、壁打ちをさせてもらいながら”健康“というキーワードが生まれました」

独特のイラストにも大きな意味が込められている。

「日常に溶け込むゆるさを表現したかったのですが、決してチープにはしたくなかった。そこで江戸時代の素朴画の系譜をまねて、和風を残しつつ老舗が作ったティーバッグというしっかりとしたデザインを探りました」


経営講座がきっかけとなりアトツギU34にも加入した。

「入ってすぐに新規事業開発講座があり、事業計画書のフォーマットを共有させてもらったり、壁打ちをしながら損益計算書を修正しました。その後ピッチで発表をして、結構ボコボコにしていただきました(笑)」


そのおかげで、今があると感謝しているという。

「自信がないところってやはり突かれるから、改めてしっかり考えますし、絶対に譲れないところも見えてくる。いろんな人が自分のことのように考えてアドバイスをたくさんくれる機会はそうそうないと思います」


リリース後も、ティーバッグの味やサイトの使い勝手など感想を直接くれるのでありがたい。

「ましてや購入をしてくれるんですよ。今でも多くのメンバーに応援してもらっています」


今では壁打ち相手として、アドバイスする側にも立っているという。

「こういう気持ちでアドバイスをくれてたんやってようやく気が付きました。伝え方がすごく難しいけど、僕はズバッと言ってもらったときのほうがありがたかったので、もっと端的に伝えられるようにがんばりたいと思っています」


「その時代に合わせた絵を描く」
祖父からの教えをつないでいきたい

株式会社播磨屋茶舗

株式会社播磨屋茶舗

3代目を継ぐのはいつごろになりそうだろうか?

「父とは10年後をめどにと話しています。父が継いだのも40代前半だったし、70歳前には代替わりをしておきたいと思っているようです」


取引先との商談を今はすべて父である社長が一手に引き受けてくれている。新ブランドの立ち上げに集中できたのも、工場は工場長が、商談は社長が担ってくれているからだ。

「工場に顔を出すこともあまりできていませんし、取引先との人間関係の構築にも長い時間がかかりそうです。今後、本店と工場を一緒にするという話もありますので、そうなったら今以上に本業に貢献できるかなと思っています」


経営者になったときの重圧を想像するだに大変だと感じている。

「新しいブランドを手掛けてみて、収益を上げることの大変さが身にしみました。でも工場長もお茶に縛られなくてもいい、変わっていって当たり前だと柔軟に言ってくれています。みんなよい人ばかりなので、とてもやりやすいんです。感謝しています」


祖父が残した「その時代に合わせた絵を描く」という創業から大切にしてきた精神が今も会社には息づいている。だからこそ、ずっと働いてくれている約30人の従業員のみなさんを守らなくてはいけないと肝に銘じているという。

「高校までは自分を客観的に見られませんでした。でも今振り返るとめちゃめちゃ恵まれていたことがわかります。その分、きちんと恩返しがしたいなと思っていますし、それは今の自分にとって、ある意味やりがいに近いものなのです」


自分が戻ったことで播磨屋茶舗がもっといい会社になったと思ってもらいたい。

「お客さまから“いい会社だね”と言ってもらえるように、きちんとした良い商品を扱い、良い商売ができる会社にもっとなって、それを社員が自慢できて、誇りに思える会社にしていけたらと思います」

株式会社播磨屋茶舗

※アトツギU34はアトツギファーストに生まれ変わりました。


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