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経営のヒント

「経営者の守りたい”大切なもの”」対談
株式会社茨城ケミカル 大和田美佳さん
株式会社エイワンスポーツプラザ 鳥居清美さん

  • 女性経営者
  • 後継者
  • 人事

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父親の他界後、茨城に戻り、業務用洗剤や衛生管理用品の販売やコンサルティングを手掛ける株式会社茨城ケミカルを承継し、2010年に代表取締役に就任した大和田美佳さん。
一方、3人の子育てをする専業主婦だった鳥居清美さんは夫を亡くした後、同じ2010年に事業承継し、静岡にある株式会社エイワンスポーツプラザの代表取締役を務めています。
突然事業を引き継いで10年を経て、立派な女性経営者となったお二人が、このコロナ禍で経営者が守りたい大切なものなどについて語り合いました。

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コロナ禍のおかげで進化した柔軟な営業姿勢やデジタル対応

大和田:緊急事態宣言が出たときの静岡は、どんな感じでしたか?
鳥居:静岡は神奈川と愛知に挟まれた立地なのでコロナがまん延するのではと、とても不安でした。
大和田:茨城は意外に冷静で、東京だけがテレビで騒いでいるという捉え方でした。だから怖いという感覚は、じわりじわりと後からきましたね。
鳥居:休業とか、自粛とか言われている時期ってどうしていましたか?
大和田:大変でした。業務用洗剤の販売先が学校や飲食店さんなのですが、まず学校が緊急事態宣言で休みで給食が全くなくなり、飲食店さんも自粛で仕事が減りました。お客さまで普通に動いているのは、病院と介護施設のみ。

緊急事態宣言が出た数か月後には社員を1/3休ませて、6月はこのままだと給料を払えないかなと思いました。その後消毒アルコールの需要が増え、それをお客さまにご案内しながら、つないでいました。
鳥居:こちらは緊急事態宣言時に、キッズスクール2店とスポーツクラブ3店全て、スーパー銭湯と24時間フィットネスを休業しました。営業できたのは、デイサービスのみ。

休業は、お客さまにとっても社員にとっても、意義のある事だとは思っていましたが、不安は続きました。
大和田:在宅が続くと、運動したくなりますけどね。
鳥居:体を動かすことに関連する部署は、今は8割くらいまで戻りました。運動は、やれば免疫力が上がるので、皆さんそこはご理解いただけている。でも入浴施設とか飲食は、ほとんど戻らない感じが続いています。
大和田: うちのお客さまの業種は多岐に渡るので、もう戻ってきたところと、このままどうなるのだろうというところと、2極化しています。そんな中、経営環境が変わったと思うのですが、いかがですか?
鳥居:良い意味では、デジタル化が加速しました。リモートでスタジオレッスンのプログラムを配信したり、Web内で入退会の手続きができるようにしました。お客さまが接触しなくて済む、ストレスフリーの状態を作ったり、社内会議や社員総会をリモートやビデオで行ったりと、新しい試みが進んでいます。
大和田:そういうIT人材もいらしたのですか?
鳥居:こうなってから、ニューノーマル時代に合わせたプログラムを作ったり、PCを担当してくれたりとみんなが積極的に取り組んでくれています。
大和田:やはりお客さまも変化してきているので、自分の会社も変わらないと存続できないと強く感じましたよね。もともと「お客さまからのリクエストは全て受けよう。断わらないようにしよう」と社員には伝えていました。

お客さまから、フェイスシールドや非接触型の体温計、オートフリーのディスペンサーなど今まで扱っていなかったものを欲しいといわれるようになり、何とか仕入れ先を探してご案内しています。既存の商品だけにとらわれずに、お客さまに合わせて、必要なものを提案するという姿勢に拍車がかかりましたね。

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人という財産の大切さが身に染み改めて感謝の気持ちが生まれた

大和田:休業下での従業員の方のケアなどどうされましたか。
鳥居:店舗が休業中であっても、水の入れ替えとか、店舗の清掃などがあったので、最小人数だけは会社に出てきました。大和田さんのところは、皆さんお休みに?
大和田: 6月は開店休業状態でした。それでも全員が休んだことは一度もなくて、交代で事務も営業も調整しながら出社しました。感染症にかかった患者さんを受け入れている病院も得意先だったので、やはりみんな不安で「うつったらどうするんですか」とか、「そんな危険を冒してまで、洗剤を運ぶんですか」という意見もありました。でも、洗剤がないと病院も機能しないからと説明し、話し合いながら活動していました。
鳥居:いわゆるエッセンシャルワーカーですものね。
大和田:会社に行きたくないという社員もいました。その気持ちは十分わかったので、休み中は電話で1時間くらい話をしたり、マスクやアルコールを売っていたので、不安が解消できるのであればそういう商品を社員に渡すとか、あらゆることをしていました。

鳥居さんの会社では、従業員の方の気持ちに変化はなかったですか。

鳥居:緊急事態宣言の前、まだ営業を続けているときの従業員は不安だったと思います。静岡県が休業宣言を出すとか、学校がすべて休みになったらやめる、それでも児童クラブが動いていれば、営業するなど基準は決めてありました。

でもお客さまの「まだ営業しているのか」という声があったり、逆に「開けてくれてありがたい」というお客さまもいるという状態で、休業前までの従業員たちは不安の中で働いていたと思います。
大和田:改めて気づいた大切なものありますか?
鳥居:スタッフがよく育ってくれていたなあということでしょうか。当社のスタッフはとても若い人が多いので、遊びたい盛り、宴会も大好きですし。みんなそれを自粛して、自分を律して、よくやってくれたと思っています。
大和田:私も今回、従業員、その家族、お客さまを含め人がすごく大事だなと感じました。もともとお客さまに衛生対策をご案内するのが仕事ですが、困難な環境下にあって「これをやったらいかがですか」と自発的に案内してくれる社員がいたり、社内をきれいに換気を良くするなど、よく気がつき動いてくれる社員がいたり、本当にありがたいと思いました。
鳥居:そういう人がいてくれるのが一番ですよね。私もそういうスタッフ全てが大切な存在だと思っています。 大和田:社員の相談にのりながら、その後ろの家族の存在も感じて、改めて社員のこと、その家族のことを大切にしなくてはと思いました。

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時代を読み、柔軟に対応する変化を恐れない会社にしていきたい

鳥居:ご自身の会社を今後どのようにしていきたいと思っていますか。
大和田:時代に伴って売るもの、業態は変わっていくと思っています。そうしないと生き残れない。変化に柔軟に、今までのやり方に固執しないでやっていきたいと思っています。そして会社は、人がいないと回らないので、従業員がここで働いてよかったと思えるような会社にしたい。

今はまだ全然できていないので、余計にそう思います。特にこういう不安な環境下にいると、そこがすごく重要なのですが、まだ模索しています。
鳥居:これからは、もっと個人を大事にする時代になっていくと思います。それがニューノーマルのひとつ。なので密を避け、少人数のお客さまのニーズに合わせたスモールクラスを展開していきたいと思っています。そのほかに自分たちの魅力をSNSやWebで発信する力をもっと付けたいです。大和田さんも、SNSで発信していますよね。

大和田:お客さまが業務用の世界なので、実はやっていないんです。本来であれば、いろいろご案内したほうがいいんですが、HPも実は今はないのです。
鳥居:業種によって、ずいぶん違いますよね。当社の理念は、「健康で豊かな人生の創造」。健康というのは、体の健康だけではなく、心の健康も。

それは皆さんが話をしたり悩みを聞いたりというような場から生まれるのではないかと思っています。そのような質の高いコミュニティの場を作ることが、社会的意義にもなると信じています。
大和田:心も体も大切ですものね。

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恐れながら進化する
そしてしっかりと備えておく

鳥居:今後、もし働けなくなったり、不測の事態が起きたりしたら、どうしますか。
大和田:私たちは、感染しないような施策や方法をご案内している会社でもあるんです。

でも感染症は、日々身近にある。もし私が感染したら、会社はどうなってしまうんだろうと、日々悩んでいます。そうなった場合は、自分の重症度によりますが、家からでも病院からでも仕事が指示できる体制にしたいと思っています。

それから私が病気になったら、「会社は大丈夫なの」とか「お給料もらえるの」とか社員は不安でしょう。ですからある程度すぐ払えるよう、用意をしています。
鳥居:感染症という形だと、私だけではなくて家族にも問題が起きると思います。会社を誰に承継してもらうかをあらかじめ私が決めていたとしても、家族に感染したらそれもかなわないのでは?と、とても不安になります。

大和田:今後どんな準備や心構えが大切なんでしょうか。
鳥居:一番大切にしているのは、スタッフが安心して、希望をもって働ける職場を作ること。それが私の使命かなと思っているんですよ。

私は常に、「恐れながら進化する」と言っているんです。今は感染症だけではないですよね。気候変動もあり、そういう不測の事態に対して、いつも恐れながら、環境に順応して、進化していくことが必要なのではないかと思っています。
大和田:社員が働きやすい環境は、すごく重要だと思います。それに加えて、安心できる財源があるということも、大切だと考えています。従業員やその家族の生活を守る。何かあっても給料がきちんと払えるような状況でいたい。

ですから、今まで以上に金銭面での備蓄を多めにしようと考えています。それから、今まではあまり余裕がなくて、何かあったときに一人が休むと、その負荷は誰が担うの?という感じでしたが、今後はデジタル化も含めて、もっと休める環境を作れるようにと考えています。
鳥居:良いお話を伺えました。今日はありがとうございました。
大和田:こちらこそ。コロナが落ち着いたら、おいしいものを食べながら、またお話したいですね。
鳥居:そうですね、ぜひ。これからも、頑張りましょう。




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