インボイス制度導入でどうなる? 税務調査の方針と留意すべきポイント
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いま「SDGs」(エスディージーズ)が注目されています。これは、国連が貧困撲滅や環境、技術革新等に関する17の目標を定めたもので、日本においても、規模を問わずSDGsに取り組む企業が増えています。ポイントは、主体的な取組みにより世界や社会に貢献しながら、企業発展につなげること。今回は、SDGsの重要性と取組みのヒントについてまとめてみました。
「SDGs」(エスディージーズ)という言葉を新聞などで見ない日はなくなりました。これは「Sustainable Development Goals」(サステナブル・ディヴェロップメント・ゴールズ)の頭文字の略語で、「持続可能な開発目標」と訳されます(なお、小文字のsは複数形のsです)。簡潔にいえば、「地球規模の課題を踏まえた、全世界共通の持続可能な成長戦略」です。
SDGsが掲げている目標等は、国連加盟国193か国すべての合意により2015年9月に策定され、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2020アジェンダ」という合意文書に盛り込まれました。SDGsは、2030年を目標年度にした持続可能な社会づくりに関するこれまでのルールの集大成といえるものです。
具体的には、人・社会・地球などの望ましい未来像を目指すための、貧困撲滅、健康、環境、技術革新、協働などの17の目標と169の具体的活動(ターゲット)によって構成されています。17目標は分かりやすいピクトグラム(絵文字)で表現されています(図表1)。
SDGsは、先進国も途上国も、政府も企業もすべてで取り組むものであり、企業の規模にかかわりません。特色は自主的に取り組むという点です。
SDGsでは、企業の「本業力」を使って創造性とイノベーションを起こし、社会課題を解決するという、本業活用が推奨されています。リスクを回避しチャンスをつかんで、社会課題を解決しながら経済価値も上げるところに大きな特徴があるのです。SDGsへの取組みにはさまざまなメリットがありますが、大きく分けると図表2のようになります。
企業コンサルをしていると、SDGs 経営では、組織内変革が進み、対外的にも企業価値が向上することを実感します。
組み事例からSDGs経営を見てみましょう。政府は、ジャパンSDGsアワードの表彰を2017年から行っており、第1回12団体、第2回15団体、第3回11団体を表彰しました。第2回、第3回では、すそ野が広がっています。例えば、公益社団法人日本青年会議所も第3回で特別賞を受賞しています。これらの受賞事例のうち、企業事例がSDGs経営の参考になります。
第1回外務大臣賞の住友化学は「オリセット®ネット」事業によりアフリカでのマラリア感染防止を主軸とし、第2回外務大臣賞のLIXILは安価で高品質なトイレを途上国に提供、会宝産業は自動車リサイクルのグローバル・パートナーシップの形成です。
① 内閣総理大臣賞を受賞した日本フードエコロジーセンターの事例
国内を主とする活動の事例です。日本フードエコロジーセンター(従業員35名)は食品リサイクル事業を本業とする会社ですが、食品廃棄物を有効活用するリキッド発酵飼料を産学官連携で開発し、産廃物処理業と飼料製造業の2つの側面をもつ新たなビジネスモデルを実現しています。
「産廃物処理」面では、国内で生じる食品残(ざん)渣(さ)から良質な飼料を製造することで輸入飼料を代替し、食料安全保障にも貢献しています。
また「飼料製造」面では、同社の飼料を一定割合以上用いて飼養された豚肉をブランド化し、関係者を巻き込んだ継続性のある循環型社会を構築しています。
これらの取組みが、食品ロス対策のロールモデルとなり得ること、多様な関係者と連携していること等の評価を受け、受賞につながっています。
② 中堅・中小企業のその他事例
さらに、中堅・中小企業の取組み事例を2つご紹介しましょう。
SDGsは、企業経営との関連で見ると、企業統治や環境課題への対応をはじめ、働き方改革、人材の確保・採用、消費者対応、マーケティング、ブランディング、地域社会との関係などを幅広くカバーしています。
投資家も、ESG(イーエスジー)、つまり環境(Environment(エンヴァイラメント))、社会(Social(ソーシャル))、企業統治(Governance(ガバナンス))を重視した投資を行っているわけですが、ESGの判断材料としてSDGsが使われています。
さらに、政府も2019年12月に、2016年の策定以降初めて「SDGs実施指針」を改定するとともに、2020年のSDGs推進のための具体的施策をとりまとめた「SDGsアクションプラン2020」を決定しています。今後、ますます各省庁の政策にSDGsが取り込まれていくことでしょう。
この結果、企業規模にかかわらずSDGsへの対応が、取引先確保、資金調達、ブランディング、人材確保など、さまざまな面に大きな影響を及ぼすようになっています。いまやSDGsは、経営トップが重大な関心を寄せるべき経営マターになったといえるでしょう。
自主的取組みとされていますが、SDGsの重要性、将来性を理解して積極的に取り組むことで、「ライバル企業との差別化」「企業の存続」といった面で大きな効果を期待できます。
中小企業では、経営トップが企業の成長戦略としてSDGsに取り組むことを決断すれば、大企業よりも早く導入できます。一刻も早く「わが社はどのような取組みができるか」を検討し、SDGs活用に踏み出すことをおすすめします。
具体的な導入方法と優良事例については、わかりやすく一問一答の形でまとめた書籍『Q&A SDGs 経営』(笹谷秀光著、日本経済新聞出版社、2019年)もご参照ください。
著 者
笹谷 秀光(ささや ひでみつ)
CSR/SDGs コンサルタント
日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、サステナビリティ日本フォーラム理事。
東京大学法学部卒業。1977 年農林省入省。2005 年環境省大臣官房審議官、06 年農林水産省大臣官房審議官、07 年関東森林管理局長を経て、08 年退官。同年株式会社伊藤園入社、取締役、常務執行役員を経て、19 年4月退職。主な著書:『Q&A SDGs 経営』(日本経済新聞出版社・2019)。
笹谷秀光・公式サイト
この記事は、エヌエヌ生命プレミアレポート2020年5月号からの転載です。 この記事に記載されている法令や制度などは2020年4月作成時のものです。
法令・通達等の公表により、将来的には制度の内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。
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