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M&Aとテクノロジーで事業承継問題の解決を目指す
MANDA株式会社 代表取締役 森田洋輔 氏

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日本の中小企業では経営者の高齢化が進みつつあり、後継者が不在の企業も少なくない。スムーズな事業承継は一刻を争う課題だ。そのような現状を踏まえ、M&Aとテクノロジーで事業承継問題の解決を目指すのがMANDA株式会社だ。同社を起業した森田洋輔氏は「価値ある事業を一つでも多く未来へつなぐ」という思いのもと、日本最大級のM&A検索エンジンを開発。中小企業と買い手のマッチングをサポートしている。父が起業した会社の廃業を目の当たりにしてきた森田氏が「生涯をかける仕事」と言い切るM&A支援の今、そして未来へのビジョンを語る。

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MANDA株式会社 代表取締役 森田洋輔氏(もりた・ようすけ)


1980年生まれ。栃木県出身。ヤフーで決済金融領域のサービス企画を10年間にわたって手がけ、2016年にまつげエクステサロン「eclat」を承継して経営者に。2018年にMANDA株式会社を設立し、M&A検索エンジン「MANDA」を開発。中小企業の事業承継に関する課題解決に尽力している。

日本の中小企業が直面する「事業承継」を
テクノロジーで解決していくために

経営者が60歳を超え、なおかつ後継者が不在という中小企業は日本に約127万社あり、今後10年で多くの企業が廃業を余儀なくされるという。さまざまな施策が進められる中、注目を集めているのがM&Aだ。しかし、会社を第三者へ譲渡する仕組みとしてのM&Aは年間約4000件(2018年度)にとどまっており、活性化はほど遠いのが現状だ。

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「中小企業庁も今後10年で60万社、1年で6万社をM&Aで引き継ごうという方針を打ち出していますが、いずれにせよ現状の年間4000件とは大きな開きがあります。このギャップを解消すべく、M&A仲介会社もマッチングサービスを展開しています。ただ、手数料の問題からM&Aが成立するのは大規模の会社がほとんど。中小企業は相手にされないケースも少なくありません」(森田氏・以下同)


森田氏が開発した「MANDA」は、手詰まり状態となった事業承継問題の現状の打破に期待がかかるM&A検索エンジンだ。検索エンジンのGoogleと同じ手法を取っており、30以上のM&Aサービスが紹介する会社の売り出し情報を自動収集し、データベース化。会社を買いたい企業は「MANDA」を通し、日本中のM&A情報を手軽に閲覧できる。会社を売りたい経営者であれば、業種や営業利益などの項目を入力することで、M&Aの推定価格を試算できるサービスもある。

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「これまでのM&Aは、仲介会社が持っている情報の中で売り手・買い手のマッチングが進められてきました。これでは仲介会社ごと、さらに営業担当ごとに情報が抱え込まれるという問題があります」と森田氏が語る通り、M&Aの情報は仲介会社間で共有されておらず、マッチングの障壁になっていた。MANDAはテクノロジーによって情報をオープン化し、検索を容易にした。これによって円滑なM&Aを支え、市場の活性化を目指す。

「機能をオープンにすることで、1人でも多くの経営者に事業承継を考えていただければと考えています。M&Aマーケットのシェアを奪い合うのではなく、目指すべき6万件と現実の4000件のギャップを埋めるために何ができるのか?それが私たちの課題です」

父の会社が廃業せざるを得なかった
ほろ苦い思いが起業を後押しする

事業承継の課題解決に尽力する森田氏だが、ビジネスの原点には、自身が経験した「中小企業の廃業」があるという。

 

「父は地元の足利市でソフト開発会社を起業し、社員20人規模まで成長させたのですが、急逝。母は私が承継することを望んでいましたが、私はヤフーで仕事に取り組んでいたこともあり、実家に帰って承継することはできなかったのです」

 

やむなく廃業という選択肢を選んだが、身の振り方を急に考える必要に迫られた社員、発注先を新たに開拓しなければならない取引先、そして煩雑な手続きに追われた家族。それぞれの立場に困惑があった。森田氏にも「もっといい引き継ぎ方があったんじゃないか」という思いが残ったという。

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「これがM&Aでうまく引き継げていたら、どうだったでしょうか。社員は環境を変えずにそのまま働けました。買う側も、システム部を新たに立ち上げることなく、開発チームを確保できた。会社を売る側は廃業の処理に忙殺されることがありません。それぞれにメリットがあったでしょう」

 

ひとつの会社がなくなるインパクトを、身をもって体感した森田氏だが、2016年には妻が経営していたまつげエクステサロンを引き継いだ。スムーズな親族内承継を経験したこともあり、MANDA設立につながるミッションを模索し始める。

 

「何かできないか…と、新たなビジネスを構想している時のこと。『人生の100のリスト』(ロバート・ハリス著)という本を読み、自分も人生でやりたいことをリストアップしてみたんです。ツリーハウスを作る、富士山に登るなどなど、秘めていた願望を可視化する中で、『生涯をかけて取り組みたい仕事を見つける』という項目が、ふっと浮かんできました」

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いつでも見直せるよう、スマートフォンに「人生の100のリスト」をメモしているという森田氏

中小企業の役に立ちたいという思い、父の会社の廃業にまつわる苦い記憶、そして事業スキームを形にするのが得意な自分の特性。すべてがつながる事業を目指し、森田氏はMANDA設立へと動き始める。ヤフー時代の同僚に声をかけて創業メンバーを確保し、事業計画を立案。「価値ある事業を一つでも多く未来へつなぐ」というミッションが定まった。

 

2018年7月――満を持して、MANDA株式会社が始動する。

より多くの中小企業を未来へつなぐため
M&A検索エンジンが基盤になる

情報の提供元からは手数料を取らず、MANDA社が独自のM&A案件を織り交ぜて成約料を獲得するというビジネスモデルを構築し、起業から1年後の2019年には検索エンジンとして「MANDA」ベータ版を始動。現在は3700件以上のM&A情報をユーザーに提供している。検索エンジンとして掲載情報を右肩上がりで増やしつつあり、インターネットには縁遠い70代~80代の経営者に向け、いかに情報を届けていくかが今後の課題だ。

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「冒頭に掲げたように、今後10年以内に廃業の危機に瀕する中小企業は127万社あります。そういった企業が売却先を探す際に、まずは顧問税理士、地銀、商工会議所などに相談するケースが多いのですが、インターネットの検索エンジンはなかなか思い浮かばないでしょう。事業承継問題を解決できる税理士、会計士を増やすべく活動する(一財)日本的M&A推進財団と連携し、MANDAを税理士、会計士が本当に使いやすいプラットフォームにすべく、検討を重ねています」

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目指すのは、中小企業にもM&Aが浸透し、世代交代・事業の多角化が当たり前のように行われている未来だ。「中小企業が生産性を向上させ、働き方改革を推進していくためにも、積極的なM&Aが欠かせません」と森田氏は提言する。

 

「昨今はリモートワーク・テレワークが推奨されるようになり、多様性のある働き方を模索する動きも活発です。こうした時代の変化、デジタル化の進展に対応していくためには、次世代へのスムーズな引き継ぎが急務になるでしょう。より多くの中小企業を次代につなぐため、M&Aを活発化させる基盤づくりに注力していきたいと考えています」