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中小企業経営者のための 投資のきほんと進め方

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この記事は4分で読めます

この記事のポイント

  • 1.投資の損失が企業の存続に支障をきたさないよう、中小企業の投資は安定運用が大原則
  • 2.投資目標の設定と運用計画の策定には『ゴールベース運用』が有効
  • 3.具体的な目標設定には『SMARTの法則』を活用する

1 中小企業が投資をする際のポイント

中小企業の場合、投資の損失によって企業の存続に支障をきたすようなことは避けなければならないため、安定運用が大原則となってきます。

2 経営者として知っておきたい投資の考え方

(1) ポートフォリオ運用

ポートフォリオ運用とは、投資資金を株式や債券など異なる複数の資産に分けて投資する運用手法で、分散投資のことです。分散投資することにより、価格変動リスクの軽減を図りましょう。

(2) 投資目標の決め方

①『ゴールベース運用』で目標の設定と運用計画の策定を!

投資は、無計画でやるべきものではありません。
投資目標の設定と運用計画の策定には『ゴールベース運用』が有効でしょう。
ゴールベースの「ゴール」とは将来の目標のことで、ゴールベース運用は、達成したい目標を設定し、目標達成のための運用計画を立てて投資を実行する手法です。
ゴールベース運用では目標達成のための金額を明確にし、ゴールから逆算して運用計画を立てます。
運用成績よりも目標の達成を重視する手法で、長期的な運用に適しています。
まずは、具体的な目標を設定し、ゴールを明確にしましょう。
具体的な目標は、例えば「20年後に退職金5,000万円支給」などです。

② 具体的な目標設定には『SMARTの法則』を活用

具体的な目標の設定のためには、『SMARTの法則』を活用するのも一法です。
『SMARTの法則』の「SMART」は、それぞれ、Specific・Measurable・Achievable・Relevant・Time-boundを表しています(図表1)。

■図表1  投資目標の設定に有効な「SMARTの法則」

S Specific 具体的な
M Measurable 測定可能な
A Achievable 達成可能な
R Relevant 関連性のある
T Time-bound 期限が明確な

Specific(具体的な)とは、目標は具体的であればあるほど達成しやすいということです。例えば、「退職金をたくさんもらいたい」という目標では、いつなのか、いくらなのか、具体的なものがなく、どういう運用がふさわしいか分かりません。


Measurable(測定可能な)とは、測定可能なものでなければ、目標にふさわしくないということです。「増やす」というだけでは、目標を達成できたかどうかが分かりません。よって、誰もが分かるよう、測定できる目標にする(数値化)必要があります。


Achievable(達成可能な)とは、達成可能かどうかも重要であるということです。達成不可能な目標は、無意味です。


Relevant(関連性のある)とは、他の目標と関連性があることが必要ということです。例えば、「目標達成のために新たな事業を始めて会社の業績に安定的に好影響を与える」、「スムーズな事業承継につながる」といった、つながりの重要性のことです。


Time-bound(期限が明確な)とは、期限の区切りが必要ということです。例えば、退職金の準備のために運用を行うのであれば、いつ退任するかという時間の制限がないとふさわしい運用商品も選べず、目標達成は困難です。

③ 運用計画の実行後も定期的な見直しが必要

具体的な目標が決まったら、ゴールまでの期間、リスク許容度、現状の保有資産、将来的な損益の見通し、運用商品のメリット・デメリットなどを把握します。
把握した情報をもとにゴールまでのプロセスを考え、運用計画を策定します。
運用計画が策定できれば、運用計画を実際に実行します。
ゴールまでの期間やリスク許容度を考慮したうえで運用商品や資産配分を決定し、ポートフォリオを決定します。
一度運用計画を実行したらそれで終わりではなく、運用状況を確認し、定期的に見直しを行うことが必要です。
世の中の変化はめまぐるしいため、定期的に運用状況を確認し、場合によっては、運用商品や資産配分を変更し、ゴールを目指しましょう(図表2)。
ただし、長期運用が大前提のため、一時的な値下がりに慌てて変更するということは避けましょう。

■図表2 投資もマネジメントサイクルが重要

図表2 投資もマネジメントサイクルが重要

【著者】

國村 年(くにむら みのる)

公認会計士・税理士・香川大学大学院客員教授・日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格者・戦略MG インストラクター


関西学院大学経済学部卒業。1996年から監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、2007年から小谷野公認会計士事務所に勤務したのち、2011年に香川県高松市で國村公認会計士事務所開業。贈与・相続、事業承継、M&A・組織再編、棚卸のコンサルティングを中心に行っている。著書・執筆は、『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A』(中央経済社)など多数ある。

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