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top > 経営ペディア > 事業承継 > 女性経営者座談会 私たちができたから、あなたにもできる!「女性たちの事業承継応援記」~大阪編~第3回目
事業承継

女性経営者座談会
私たちができたから、あなたにもできる!
「女性たちの事業承継応援記」~大阪編~

  • 女性経営者
  • 後継者

この記事は6分で読めます

経営者の父親の背中を見て育った女性は多いことでしょう。しかし、跡取りとして親から事業を引き継ぐとなると相当の覚悟と決断が必要になってきます。
今回は、事業承継をして自分の時代に合った会社経営を模索してきた、大阪で会社を経営する女性経営者2人に、これから事業承継をしようと考えている女性が教えを乞いました。
大阪編の第3回目は、成長する経営者のお話です。

会社は社長の器以上にならない
だから心の器をぐっと広げなければね

最初は勝手な価値観や
やりたいことを押し付けていた

小野 経営者になって自分が変わったなと思われたことありますか?


竹内 今の会社をやることになって考えたのは、ビジョン経営をしていきたいということです。どういう人に対してどういう価値を提供していくのか、スタッフにもどういう価値観を共有していってほしいのかという、ビジョンを立て実現していくための価値観を擦り合わせていきながら、組織づくりをしていこうっていうふうに変わっていきました。


草場 それまでは?


竹内 自分がやりたいことを押し付けるばっかりだったんですね。私が記者になりたかったのは、正しい世の中を作っていくためにペンで世の中をぶった切るんや!みたいな正義感から。でもそれが空回ってるようなところがあったんです。でも、こうやって仕事をしだしたら、プロダクトをお客様が手に取ってくださることを通じて、皆さんの暮らしをどう変えていきたいのかを考えていくと、自分がどうしたいとかじゃなくて、相手のことをもっともっと考えていかなきゃいけないよねってよくわかりました。そこから自分の行動、立ち居振る舞いが変わってきたかなと思います。仕事は1人でできることじゃないので。結果的に私自身がもっとお客様や社員のことを思うようになって、どうしたら相手が喜んでくれるのかっていうのを考えるようになりました。わがままな部分の角が徐々に取れてきたかなというふうに思います。


草場 女性の本能とか本質ってあると思うんですよ。男性にはない本質。それは多分、母性愛やと思いますよ。人を喜ばせて喜ぶというね。今はジェンダーのこともあると思いますが根本的に、男性のできることは、力技的なところだったり、大きな決断であったり。それと女性のもともと持ってる本質っていうのは、違うと思うんです。今、竹内さんが言われたこと、私も共感しますもん。スタイルですね。


竹内 あ、そうですね。男性的なリーダーもそれはそれで必要とされていますし、それぞれの利点があると思います。だからスタイルがあっていいのかなという気はします。

誰を信じたらいいのかわからない
必死感でいっぱいでした

草場 私が最初にした仕事は固定費の削減。要らない機械は捨てる。3つある倉庫状態の建物は掃除して収益物件に変える。人員整理もしましたね。そのときに、社員までもが敵に見えたこともありました。誰を信じたらいいのかも分かんない。そのときは、体質改善を早くやりたいっていう必死感でいっぱいでした。会社がつぶれそうやねんから、ここまでやって当たり前やろ?っていう勝手な自分の価値観を社員に押し付けてました。


竹内 よくわかります。


草場 何でわかってくれへんの?何で私の意志が通らんの?っていう怒りがありました。そういった感情がいったん自分の中で鎮まったときに、もしかして自分が間違ってるんじゃないか?って気付きましたね。相手の立場になって考えたら、いきなり会社が売上落ちたゆうて、弟が社長やと思ってたら娘がいきなり社長になって、ものづくりも知らんもんから、ストレートなものの言い方されたら、誰でもむかつくわなーと。冷静に自分の姿に気付いて反省しつつ、社長って心の器をぐーっと広げな対応できへんな、社長の器以上に会社は伸びないっていうのは、こういうことかなって(笑)。


小野 厳しいんですね。


草場 思ったことがすぐ言葉に出る自分は今も変わらないと思うんだけど、じっくり人を見るようになったし、慎重になった。やっぱり自分の判断が正しいかどうか、むちゃくちゃ悩みますね。今も皆が皆、私についてきてるのかっていったら、そうでもないんですけども。それはもう、会社自体の居心地が良いであったりだとか、仕事が好きとか、仲間が好きとか、何かそういう私以外のところの価値が会社に定着していけばいいなっていう過程ですね、今は。

良いものは、広めなければもったいない
世界でも、東大阪でも、どこにでも

小野 これからの夢や描いているゴールの姿などありますか?


竹内 創業以来受け継いできた「アイデアと技術で暮らしを豊かにする」というビジョンに私の代になって「私らしい暮らしを世界へ」という言葉を足したんですね。そこは私の思いの部分なんですけれども、今はそれを実現していくのがひとつの目標です。もともとやってきたことを、もうちょっと拡大していって、突っ張る、突っ張らないにかかわらずにライフスタイルの変化に合わせて自分らしくアレンジしていって、住まいの状況を変えていけるような道具の開発とシリーズ化を目指しています。


草場 世界に向けても?


竹内 はい。この価値観って日本だけじゃもったいないと思っています。日本の手狭な住環境でいかに快適に暮らすかと考えて、あらゆる工夫をしてきた私たちのリソースが、他の国や地域での私らしい暮らしを実現していくことに役立つのでは?と思っています。50平米に4人、5人で住むなんて、信じられない世界の国の人は多いと思うんですよ。それをとてもステキに実現してる人たちが日本にはたくさんいます。そういった文化をもっと紹介していけるし、それを支えてる道具っていうのがたくさんあるので、その一部として私たちはもっともっと情報を届けていける価値があるんじゃないかなと思っています。


草場 私は、去年東大阪市と近畿大学と一緒に「こーばへ行こう!」というイベントをやってみて「マチづくりにつながるモノづくり」をやり続けたいと実感しました。結局、町というコミュニティ、工場というコミュニティで、日常のライフスタイルを豊かに楽しく、人と人とで笑い合い、道端で井戸端会議し、みたいなのをやっていきたい。自分の生き方として地元の町工場に仕事を出さないのに、なぜ海外に仕事を出すのか?という疑問が消えない。だから、日本で踏ん張る選択をした以上は、照明器具だけやってていいの?って奮起して、違うことをやりながら存在をアピールして、領域を拡大することが事業につながると信じてやっていきたいと思いますね。


小野 その市民イベントでの人との交流は、影響力が大きかったのですね。


草場 めちゃめちゃ大きかったです。良いきっかけでした。別のイベントのときにもね、うまい棒ってあるじゃないですか、その周年企画展に照明器具を制作してくれっていうことで、「うまいBOMB(爆発)!」っていう照明を作ったんですよ。うまい棒を火薬に見立てて、バーッと詰めてね。「今までのうまい棒とは違うぞ!」ということを頼まれてもいないのに、作ったんです(笑)。


竹内 さすが大阪の会社ですね(笑)。


草場 東大阪のイベント「こーばへ行こう!」の時にね、何人くらいの市民が来てくれるだろう?ってなってね。「300人?」って言ったら、東大阪市の人が「初めてのイベントで、しかも一回も来たことのない工場やのに、絶対に無理!」って言われて。それを聞いて近畿大学の先生と「よっしゃ!やったろうや」ってなって(笑)。結果的に720人くらいの人が来てくれて。取引してない町工場の社長も100人くらい来てくれはったんです。私ら、モノづくりをする以外、イベントを主催すること自体が初めてのことやったけど、工場ガイドツアーでインカムをつけて説明するとか、スタッフそれぞれが役割分担して、みんな精一杯頑張ってくれました。翌日の朝礼は、みんなくたびれすぎて、あぐらをかいて座ってやったんですよ。だいたいいつもの朝礼って10分くらいだったのに、そのときは1時間くらい、みんなしゃべりが止まらなくって。ほんとに、やった意味はあったなって。小野さんは?


小野 現状は、もっと若い世代が日常的に土に触って、野菜を育てるような商品開発をやりたいなと思っています。文化農場のビジョンが「育てて学ぶ」なんです。いろんな世代に文化として継承していきたいというエッセンスは残しながら、子どもや若い世代も日常的に土に触れる機会を作りたいと思っています。そしてメディカルの分野とか健康美容の分野で自分のブランドとしてどんどんいろんなところに展開していければなというのが私の夢です。


竹内 壮大な夢ですね。良いと思う。


小野 最終的なゴールは、「農」の食べ物のサイクルを作ること。フードロスや食べ物でつながるエコシステムを構築したいです。


草場 ゴミになるようなものを作るのは、もう時代がまったく受け付けないからね。エコは絶対やから。そうか。めちゃめちゃ、やりがいがあって、面白そう。


竹内 お互いにがんばりましょう。

参加者紹介

平安伸銅工業株式会社 代表取締役 竹内 香予子氏

平安伸銅工業株式会社 代表取締役
竹内 香予子氏

https://www.heianshindo.co.jp/

収納用品メーカー/資本金 4900 万円/従業員数57人
1952 年祖父が創業。1996年父が社長就任。2010年入社し、2015年社長就任。
つっぱり棒博士、整理収納アドバイザー。著書『魔法のつっぱり棒でお部屋が変わる』(別冊エッセ)(扶桑社)

株式会社盛光SCM 代表取締役 草場 寛子氏

株式会社盛光SCM 代表取締役
草場 寛子氏

http://www.seiko-scm.co.jp

照明事業部(開発・設計・製造・販売)、ダイカスト事業部(金型設計・製造・販売)/
資本金 5000万円/従業員数 52人
1961年創業。1967年株式会社盛光電器製作所として設立。2009年代表取締役社長に就任

有限会社文化農場 小野 未花子氏

有限会社文化農場
小野 未花子氏

http://bunkafarm.co.jp

野菜苗生産・販売/資本金非公開/従業員数 15人
1965年創業。大学卒業後、ロンドンの大学院でビジネスを学び、家業を見直す。後継ぎになるべく勉強中。アトツギU34会員。


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