父が築き守ってきたプロテック 「人のために」の理念を貫きたい プロテック株式会社 代表取締役 小松 麻衣氏
- 40-50代
- 北海道・東北
- 女性経営者
- 後継者
経営者の父親の背中を見て育った女性は多いことでしょう。しかし、跡取りとして親から事業を引き継ぐとなると相当の覚悟と決断が必要になってきます。
今回は、事業承継をして自分の時代に合った会社経営を模索してきた、大阪で会社を経営する女性経営者2人に、これから事業承継をしようと考えている女性が教えを乞いました。
大阪編の第2回目は、自らが手掛けた新商品開発のお話です。
小野 先ほどから新商品開発というキーワードが出ていますが。お二人とも実際に手掛けられた商品がありますよね。
竹内 インテリアにもなるオシャレな突っ張り棒「DRAW A LINE」と木材と組み合わせて棚などが作れるパーツブランド「LABRICO」という2つの商品を作りました。自分が若い女性だったっていうのが、商品開発にものすごく役立った。あるときホームセンターさん主催の取引先懇親会に行ったら、皆さん、スーツを着たおじさんばっかりなんですね。
小野 真っ黒の
竹内 そうなんです。ほんまに女おらへん、みたいな(笑)。それで何で買うてくれる人が女の人やのに、作っている人が買うてくれる人の気持ちを一切分かりもしいへんような人たちがやっとんねやろ、と思ってびっくりしたんです。この人たちはホームセンターで売っている商品を道具としか見てないなあ、と。私だったら、自分の暮らしにどう生かされてるのかっていうライフスタイルで見ることができる。これから新しい事業展開をしていくときに絶対、優位性があるし、差別化要因になるっていうふうに気付いたんですね。
小野 その発想力はどこから?
竹内 前職が新聞記者だったので、自分が興味をもっている対象に対して入っていくということをするタイプだったんです。とりあえず自社商品を知るためにお客様に近いところに行こうと。たまたま突っ張り棒を雑誌でよく紹介してくれてる方が、整理収納アドバイザーの方が多くて。じゃあ、この資格を自分も取って、そのコミュニティに入れば、何でうちの商品が売れてるのか、なぜ買うのか、嫌な部分とか、教えてくれんのちゃうかなと思って。そうしたら、突っ張り棒って当たり前すぎて、新たな使い方とか生まれないと思っていたんですけど、実はそうじゃないっていうのに気付きました。この良さを生かしてまた新しい市場創造ができるんじゃないかっていう突破のきっかけをいただいたんです。
小野 草場さんの商品開発のきっかけは?
草場 社長になってから、照明のことを勉強しにミラノに行き始めたわけですね。そこでプロダクトデザイナーの喜多俊之さんに出会ったんです。「デザインって形と色でしょ?」って言ったら「いや、違うよ。デザインは使い手への思いやりと作り手への配慮」って、その言葉がスッと入ってきた。私はね、外部のデザイナーさんはみんな、自分の家庭教師やと思うようにしているんですよ。初めての自社製品を展示会に出すならミラノからっていうのは決めてたわけ。だから、ミラノに行くなら長年にわたって実績を積まれている喜多さんが、私にとってベストやったんです。
小野 この照明、きれいな形ですね。
草場 これは、「ALED」(アレッド)というスタンド照明で、ヘラ絞りという金属加工の職人を主役にしたプロダクトです。下請け体質から脱却するぞというシンボルにもなったプロダクト第一号ですね。で、その次は自然の一部を空間に取り入れながら、オフィスのリノベーションをやりたいって思ったんですよ。窓から緑が見えない部屋でも、そこに入ったらまるで森にいてるようにリラックスできる、視覚的なリラックスが得られるインテリアのための照明をということで生まれたのが「PLATREE」(プレートリー) です。今年9月、リリース予定です。
竹内 「LABRICO」を売るときに考えたのが、ユーザーから販売店に置いてくれというリクエストがくるような展開にしようということ。そこで、DIYというテーマでフォロワーが何万人かいるようなインフルエンサーと言われる人たちにアプローチして、使っていただき、ネット上で話題にしてもらったんです。それを見て、お客様がホームセンターに「LABRICO」ないんですか?って言いに行くようになったんです。そうしたらお店の担当者が本部に「欲しい人がいるから、買い付けて」ってなった。1年くらいかかって、ほぼすべてのホームセンターに入れることができたんです。
小野 すごいですね。
竹内 既存の突っ張り棒は、競合製品があったら、必ずそれより下をいく値段で出すのが常 とう手段で、そうじゃなきゃ売れないって言われていたんですけど、LABRICOの場合、私たちは高く売ったんですね。今までは原価積み上げで売値を決めていたのですが、お客さんに届ける「価値」で値決めしようとしたんです。それはとても新しいことで、社内でも半信半疑だった。でも私たちは価格で競争するのじゃなくて、価値で競争するから絶対、スタートから安い値段では売らないって。さらに、SNSでの使用シーン提案やメディア露出で競合相手から市場を奪う通常のスタイルではなく、市場を創造する努力をしたことで、何と かうまくいったんです。まずはやってみないと。
草場 柔軟ですよね、考え方がね。
竹内 結果出さないと、誰もついてこないんでね。そこまでがしんどいっていう(笑)。
小野 今、私がやろうとしていることは、まさに同じような感じです。苗の別のブランドを作る過程にあるんです。価格で勝負するところは避けたいんです。
草場 やっぱり(笑)。
小野 若い世代でちょっとハイエンド向けのブランドを考えているんですけど、そういう方に売ろうと思ったら文化農場の名前ではちょっとずれてくる。なので、それなら別のブランドを作ってやっていこうと進めています。最初は文化農場のなかのブランドとして。売上がついていくようであれば、別のブランドとしてまた会社を別にしてやろうと思っていたので、今日の話はとても参考になりました。
平安伸銅工業株式会社 代表取締役
竹内 香予子氏
収納用品メーカー/資本金 4900 万円/従業員数57人
1952 年祖父が創業。1996年父が社長就任。2010年入社し、2015年社長就任。
つっぱり棒博士、整理収納アドバイザー。著書『魔法のつっぱり棒でお部屋が変わる』(別冊エッセ)(扶桑社)
照明事業部(開発・設計・製造・販売)、ダイカスト事業部(金型設計・製造・販売)/
資本金 5000万円/従業員数 52人
1961年創業。1967年株式会社盛光電器製作所として設立。2009年代表取締役社長に就任
有限会社文化農場
小野 未花子氏
野菜苗生産・販売/資本金非公開/従業員数 15人
1965年創業。大学卒業後、ロンドンの大学院でビジネスを学び、家業を見直す。後継ぎになるべく勉強中。アトツギU34会員。
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