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事業承継

「カポック」から作る洋服を着ると、楽しみながら “サスティナブル”な世界が実現できる!
KAPOK JAPAN株式会社 代表 深井喜翔 氏

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1947年創業の老舗アパレルメーカー双葉商事株式会社4代目を継承する予定の深井喜翔氏。アパレル業界の大量生産・大量廃棄という負のシステムや環境汚染産業と言われる繊維産業の地球環境への影響を考え続けてきた。社会人になって木の実由来の新素材「カポック」と出会い、これなら持続可能な社会のためになるとファッションブランド「KAPOK KNOT(カポック ノット)」を立ち上げた。新規事業ローンチから、1年半が過ぎた今の事業構想や反響を聞いてみた。

木に実る“ダウン”カポック
たった5㎜の布地がダウンの暖かさ

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2018年末、深井氏は「KAPOK KNOT」というブランドの構想を始めた。このカポックは、インドネシアなどの熱帯に育つカカオのような実で、コットンの1/8の軽さでダウンの暖かさをもたらすという。

「繊維にするには短すぎるという弱点がありましたが、それを旭化成と共同開発した日本の技術でクリアし、シートにすることができました」

 

カポック繊維は、ダウンと違って非人道的な方法で羽毛を採取する可能性がないうえ、実の中の繊維を使うので木の伐採も不要。だから環境に優しいという。

「カポックのコートを着ることで、意識をしなくてもサスティナブルな世の中とつながることができるのです。このように社会性と事業性を両立することが創業の原点です」

 

フェアトレードや動物愛護だけを売り物にするつもりはないという。

「消費者、生産者、環境の3つの視点に立って、製品ができてから届くまでに関わる全ての人に寄り添ったモノづくりをしています。カポック製品を買うことでサスティナブルな世界といつの間にかつながっていたというのが理想です」

 

現在、専属の社員は一人だが、このコロナ禍で副業を許された才能あるブレーン33人が、得意分野を分担し、「KAPOK KNOT」の運営が成り立っている。

「メインで動いているのは8人です。まず大きな目標設定をしたら、コアメンバー3人が会議に必ず入り、プロジェクトの工程管理をしっかりしながら、形にしていきます」

 

この「KAPOK KNOT」が一躍有名になったのは、クラウドファンディングサイト「Makuake」で累計3000万円以上の資金を集め、テレビに紹介されたことからだ。

「とにかく反響が大きかったです。次に経産省とJETRO主催のシリコンバレーメンバーに選ばれ、500人の前でプレゼンする機会に恵まれました。持続可能な社会を目指したブランドコンセプトや、原産地に入り込んでいたことなどが評価されたようです」

 

こうして外から評価されることで「KAPOK KNOT」の「Farm to Fashion ~農園からこころよい暮らしを~」というブランドコンセプトが広く知られるようになり、応援してくれる人が増えていった。

家業に戻ってみたら
営業全員の退職タイミングだった

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10歳の時からNPO「CISV JAPAN」に家族ぐるみで参加していた。これはアメリカで生まれて世界に広まった「子どもたちが共に暮らすことにより人種、宗教、政治などさまざまな背景に関係なく同じ人間だ」ということを学ぶプログラムだそうだ。

「このNPOは、既に20年以上前から、サスティナブル・ディベロップメント(持続可能な開発)をテーマに活動していました。だから、家族は僕の手掛けている事業のコンセプトをよく理解してくれ、進んで協力をしてくれます」

 

『「サスティナブル」なんてウソくさい、時流に乗っているだけ』のような言われ方には、違和感があるという。

「小さいころからサスティナブルについて考えてきて、大学でもソーシャルビジネスを学びました。逆にようやく世の中がそうなってきたという感じがします」

 

大学卒業後、「不可能を可能にする、稼働していないものを稼働していこう」という方針の不動産ベンチャーを経て、繊維素材の勉強のために旭化成に転職した。

「ここでカポックという、サスティナブルで暖かい新素材に出会ったのです。カポックは生命力が強く、ダウン並みに暖かく、ダウンよりは安価で仕入れられますが、繊維が短くて切れやすいという弱点がありました」

この時は製品化できると思わなかったが、「何かに使えるといいな」という思いだけは残った。

 

25歳の時に双葉商事の社長である父から「今がベストタイミングだ」と声がかかり、家業に戻ることにした。

「祖父や祖母と一緒に働ける機会を延ばしてもよくないし、そこまで言うんだったらという気持ちで入社しました」

 

しかし、この時期会社は大きな転換期を迎えていて、それぞれのキャリアプランの都合もあり、営業は1人を残して、全員離職という状況でした。

大きな資産と大きなしがらみを
引き受けるのが後継ぎの役目

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家業に入ってみて、わかったことがある。

「事業承継をするということは、大きな資産と大きなしがらみを受け取るということなんです。今いる社員や会社の信頼、これは大きな資産。自分でベンチャー企業を起こしてもすぐに手に入るものではないですからね」

 

一方で感じるのは、歴史ある会社で今までと違うことをやるには、非常に思い切りが必要だということ。心理的なハードルが高いという。

「今までの慣習やしがらみから、一歩踏み出し、少しずつ変えるのは非常に大変です」

 

3年ほどかけて、営業が外出先でも仕事ができるようにノートパソコンを揃えることから始め、新しい体制の営業部隊を固めていった。

「ある程度の基盤はできたので、その後、カポックの製品化を目指し、ベンチャー企業のKAPOK JAPANを立ち上げました」

旭化成時代の先輩を頼って進めたこの研究開発には苦労をしたという。

 

「父は、新しい取り組みを応援してくれています。だから双葉商事の事業でないものを手掛けるなとは言わない」

 

それより複雑なのは、既存の社員たちにカポック商品の製造にシナジー効果を感じてもらうことだ。

「双葉商事で製造して、KAPOK JAPANで販売しているのですが、まだまだ新規事業なのでオーダー数が少ない。こんなのやっている時間はないという思いがあるのは仕方ない」

 

そのバランスが難しい。

「後継ぎだからって絶対にみんなが言うことを聞いてくれるような時代じゃないですからね。そしてアパレル業界は地球に優しくないなんて、家業を否定するのか!みたいな気持ちになるのもわかる。でも僕がやりたいのは、そこじゃないんです。今までの75年も大事ですが、これからの75年先を考えた時に、社会に求められる産業であり、企業でありたい」

ベンチャー気質は祖父譲り
いとこや姉妹も巻き込むカポックの底力

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いつ事業承継をするのかといった話は、今のところまったくないという。

「88歳で会長の祖父がまだまだ元気なので、早めに承継することはあり得ません。僕は祖父を経営者としてとても尊敬しているんですよ。あらゆる業態に挑戦し、激しく設備投資をしたおかげで、今会社が存続している。これはもう、祖父の才覚のおかげです。それに比べたら、自分のはなんておとなしい挑戦なのだろうと思います」

 

カリスマ経営者の祖父と同じく、その基盤となる事業を広げてきた父もまだまだ頑張っている。 「僕は、KAPOK JAPANの代表をやっているので、代表者としての意思決定や財務などは学べていると思います。本当に貴重な経験を積んでいます。だから後継ぎは、家業とシナジーのある事業を出島にして、もっと積極的にやったほうがいい」

 

起業をして責任をもつと、言い訳も後戻りもできないという。

「5歳年上のいとこである藤井篤彦は、3Dカスタムメイドマスクをどこよりも早く発売した才覚があるビジネスの先輩で、よき理解者です」

 

このパレ・フタバ副社長の藤井氏を相手に壁打ちをしながら、この1年半で描いてきたブランドイメージがより明確になってきた。そこで、初めて欠けている部分が何であったのかがわかり、姉と妹にも声をかけた。

「彼女たちは広告代理店にいたので、販促のことがわかっている。そのスキルを発揮してもらっています」

 

一族郎党、手を携えながら、そして明日の暮らしをちょっとよくするための新しい事業を楽しく手掛けている。

「僕は早くKAPOK JAPANを自立させたい。そして双葉商事への発注が一番多いクライアントになるのが目標です。グローバルのマーケットは大きいし、今一緒にやっているメンバーと熱量とプロダクトの3つがそろうのはもう一生ないだろうと思えるくらい恵まれているから実現できると思います」

 

この6月、銀座の高級インポートショップの後を居抜きで借りて新たな拠点「The Crafted」としてオープンさせた。

「期間限定なので信じられないほど安く、初期費用もかけずに、いとこの藤井や知り合いと一緒に、ショールームやコワーキングスぺースとして運営しています」

 

後世の人から「あの時代の人たちダメだったよね」と言われないように、社会貢献とビジネスを両立させていきたい。

「“KAPOK KNOT”を通じて、サスティナブルへの参加コストをゼロにすることで、気が付かないうちにサスティナブルな行動をしていたんだとなるくらいKAPOK JAPANの製品を浸透させるのが大きな目標です」



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