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事業承継

「後継者は選び、育てるもの」中小企業の生き残り策
G&Sグローバルアドバイザーズ
代表取締役社長 橘・フクシマ・咲江 氏

  • 女性経営者
  • 人事

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G&Sグローバルアドバイザーズ社長、元コーン・フェリー・インターナショナル社米国本社取締役であり、これまで10社以上の日本企業の社外取締役を歴任、長年にわたり経営人材を見てきた橘・フクシマ・咲江氏。中小企業における後継者の育成、事業承継、女性活躍について聞いた。


(聞き手: 安倍宏行 ジャーナリスト ”Japan In-depth”編集長)


橘・フクシマ・咲江氏は、米国通商代表部やエアバス・ジャパンのCEOなどを勤めた実業家グレン・S・フクシマ氏夫人だ。夫婦そろって長年、様々なビジネスに関わってきた。多くの企業に人材を紹介してきたパイオニアである橘氏。日本の中小企業がすべきことは、『後継者をどう選び、育てるか』という事だ、と明快だ。

橘・フクシマ・咲江氏

「中小企業だからこそ(後継者選びを考えることが)必要だと思います。中小企業の場合でも、どこかの時点で公開会社になった場合には当然のことながら外の株主に対する責任が出てくる。承継プランも自分の家族内だけでは収まらなくなってきます。」


だからこそ、まだ創業者に余力がある時期に後継者を育てることが重要だという。子どもがまだ小さくて継ぐには早い場合は、中継ぎとしてプロの経営者を入れることも考えなくてはならない。


経営者にありがちなのは、事業承継について子どもとなかなか話さないことだ。橘氏はそこについても警鐘を鳴らす。

橘・フクシマ・咲江氏

「将来ご家族に継がせたいと思っているのなら、早いうちから子どもと話した方が良いと思います。本人も覚悟するし、もし継ぐのは嫌だというのであれば他の方法を考える必要があります。」


そうした中で、橘氏は、娘に継がせる選択肢も考えるべきという。


「経営者としての資質を持った優秀な女性はたくさんいます。特に中小企業でお父さまの仕事ぶりを見ながら育った方の中には、自分で経営したいと思っている人は少なくないんです。」


こんなエピソードも話してくれた。

橘・フクシマ・咲江氏

「お父さまから継いだ女性の経営者と話をすると、『父は継いでくれ、とは言わなかったけれど、自分しかいないからやらなきゃだめだと思ってそれなりに努力しました』とおっしゃる方がいるんですね。会社の業績も良い。最初から娘には継がせない、というのはもったいないと思います。」


また、娘以前に奥さまの存在も大きい。いざという時頼りになるのは何と言っても伴侶だろう。しかし、社長の奥さまが経営を学ぶ場はそう多くはない。以前取材した女性経営塾(「“社長夫人の戦力化”で活路見出せ!」 株式会社アローフィールド代表取締役社長 矢野千寿氏)のようなものがどの都市にあるわけでもない。橘氏は、MBA(経営学修士)コース等で経営全体を体系的に学ぶことが重要だと説く。


「MBAのコースというのは、基本的に”会社の経営とは何たるぞ”ということを教えるものです。財務や人事や、会社全体を統制している骨の部分のツールをどう使うかを教えてくれます。独学でも可能です。そのツールでご主人の会社のバリュー・チェーン、すなわち製造業であれば、原料の調達から始まって、製造してそれをどうやってマーケティングして販売していくかの流れを頭の中に入れ、経営全体を見られるようになることが、重要です。」

橘・フクシマ・咲江氏

多くの中小企業では社長夫人が帳簿をつけていることが多いだろう。しかし、それだけではだめだと橘氏はいう。


「帳簿付けの知識だけじゃ不十分なんですよ。会社全体の業務の中で帳簿付けというのはほんの一部ですから。例えば資金が足りなくなった時、どうするのか判断を迫られますよね。銀行から借りるのか、他から調達するのか、全体の流れの中で色々なオプションを頭の中に入れておけば経営というものに対する見方が変わってくると思うんです。」


社長夫人にビジネススキルを向上してもらって、強力な右腕として成長してもらうことは、経営者にとって、究極のリスクヘッジではないだろうか。


「ただし、ご主人が奥さまに甘えていてはだめだと思います。妻に子育てから何から全部任せて俺は経営だけをやって、みたいなのはだめです。やはり一緒に会社を作っていく共同経営者という気持ちがお互いにないといけません。」

橘・フクシマ・咲江氏

そして、話は従業員の採用にまで及んだ。ミレニアル世代の男性社員は、子育てにも積極的に関与したいと強く望んでいるという。中小企業にこそ家族的な環境があるはずで、そうした企業には優秀な人材が集まる可能性が高い、と橘氏はいう。


「中小企業のほうが人手がないため女性を活用する機会もあれば、能力を持っている方たちもたくさんいる。ポテンシャルのある人に関してはやはり機会を与えて励ましてやらせてみることが大事だと思いますね。」


仕事に男も女もない。そう言い切る橘氏。中小企業の社長が気づきにくい視点をずばり提供してくれた。後継者がいないのではない。後継者は選び、育てるものだ。その決意が今、まさしく経営者に問われているのではないだろうか。




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