インボイス制度導入でどうなる? 税務調査の方針と留意すべきポイント
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商工会議所は、商工会議所法に基づいて全国に設置されており、公的な側面を持ち合わせる民間組織というのが特徴である。現在、全国に515の商工会議所があり、「中小企業の活力強化」と「地域活性化」に向けて様々な事業を実施している。
そのうちの多くの商工会議所に、女性経営者等で構成される「女性会」という組織があるのをご存じだろうか。その全国組織である「全国商工会議所女性会連合会(以下、全商女性連)」は、1969年に設立され半世紀以上の歴史を持つ。全商女性連会長であり、東京商工会議所女性会の会長でもある市瀬優子氏に、女性活躍の現状や今後の展望について話を聞いた。
まず、全商女性連のビジョンについて聞いた。
「全商女性連は、日本商工会議所の定款に位置付けられた内部組織で、各地の女性会と連携しながら、女性による地域活性化と女性活躍を目指して活動を展開しています」
背景にあるのは、なかなか実現しない男女格差マインドの是正、特に女性経営者の少なさだ。
「日本はまだまだ男性社会で、ジェンダーギャップ指数も19年度は121位でした。内閣府も男女共同参画の実現に向けて様々な施策に取り組んでいただいていますが、20年度も120位と大きな改善は見られず、(ジェンダーギャップに関しては)後進国と言わざるを得ない状況です」
商工会議所では、幅広い分野で経営者のサポートを行っているが、商工会議所に対して、特に若い女性経営者たちからは「敷居が高くて…」という声も聞かれるのだという。しかし、その活動とコミュニティーの大きさには自信がある。
「全商女性連の会員は約2万1000人、女性会は全国に417あり、国内最大級の女性経営者ネットワークを有する組織です。コロナ禍によって活動を縮小せざるを得ない面もありましたが、例えば私が所属する東京商工会議所女性会では、「交流・観光」「社会貢献・少子化」「イノベーション推進」「国際ビジネス」の4つの委員会を設置しており、コロナ禍でもオンラインを活用して活発に活動しています」
東京商工会議所女性会は年間1万円の会費で、約300会員とのネットワークを活用できるという。コロナ禍の影響によって会員数減少を懸念していたが、ほとんど変わっていない。それだけ商工会議所女性会には、女性経営者等にとっての魅力があるからだろう。
女性経営者からは、経営に関する悩みの相談相手を見つけにくい、という声が多く聞かれるという。さらに、経営者でありながら、母親として子育てもしなければならず、仕事と家庭の両立に苦労する経営者も少なくない。
「経営者は、悩みを従業員には相談できません。同じ経営者として、女性会に入会すると、女子高の友達みたいな感じで、細かいことまで相談できる相手がいるというメリットがあることを、若い方にも知っていただきたいです。私も女性会に入って25年あまりになりますが、先輩方にとても親切にいろいろなことを教えていただきました。私自身、人に育てられたので、良きメンターになれるような形を作りたいと思っています」
孤立しがちな女性経営者同士を繋ぐ役割も、女性会は担っている。
会長として様々な企業と関わりを持つ市瀬氏だが、女性でも働きやすい職場づくりは着々に進んでいると実感している。
「全商女性連では、女性の経済社会への積極的な参画と活躍推進を目的として、女性ならではの視点で革新的・創造的な創業や経営を行っている女性起業家を顕彰する『女性起業家大賞』を2002年から実施しています。私も審査員としての応募書類を拝見していますが、応募者はとても熱心に書いてきてくださるので、相当な時間をかけて丁寧に読ませていただいています。各社とも、これは絶対女性じゃなければ思いつかないだろうという女性目線の事業や仕組みが多くあって、私も勉強させて頂いています」
また、今までは自分の事業を男性の親族に引き継ぎたいと考える男性経営者が大半だったが、最近では娘や姪など女性の親族に事業承継を行う経営者の話も耳にすることが増えたという。そうした経営者は圧倒的に戦後生まれが多いと市瀬氏は指摘する。
「一番重要なのは、環境と教育だと思っています。一概には言えませんが、戦後の教育を受けた男性は考え方が全然違うように思います。そういう方たちがトップに就く時代になっていますので、女性活躍に関してはむしろ後押しされているように感じます」
しかし、経営者に占める女性の割合は1割程度とまだまだ少数派だ。女性経営者の少なさはどこに原因があるのだろうか。
「同じキャリアで入社してから、経営幹部に育てるための教育がありますよね。女性は、女性ということだけでそれを受けられていない場合もあります」
「男性の経営者に話を聞くと、『周りを見渡しているんだけど(社長候補になるような)女性がいないんだよ』とおっしゃる方もいます。それは私から言わせると、『女性を教育してこなかったからだ』と」
男女の差なく、経営者としての教育を行う重要性を市瀬氏は強調した。
市瀬氏は当時としては珍しい女性経営者を母に持ち、自身も銀座の中華料理店「味の中華羽衣」を経営する美和商事代表取締役として会社の経営を長年引っ張ってきた。
「私を支えてきてくれたのは従業員の存在です。家族の形も様々ですが、仮に4人家族と考えれば、100人従業員がいたら400人分の生活が私の肩にかかっているわけです。そう考えたら泣き言なんて言っていられません」
女性経営者には商工会議所や商工会議所女性会を活用しながら、どんどんチャレンジをして欲しいと市瀬氏は呼びかける。
「大胆な発想ができるのは女性経営者の特色だと思います。『ピンチはチャンス』と良く言いますけれど、考えて考えて考え抜けば、なんらかの光は見えてきます。だから、壁があっても、そこを突き破るような気持ちでやっていけば必ず道は開けると思います」
壁にぶち当たっては切り抜けてきた先輩経営者の経験を生で聞けるというのは得がたいチャンスではなかろうか。
「私は『あなたの趣味は人の世話なの?』って言われるくらいです(笑)。もし身近に相談できる先輩がいないのであれば、いつでも商工会議所女性会へ、という気持ちでいます」
最近の若い女性起業家の人達は、同じ業種でグループを作る傾向もあるようだが、確かに同業でしかも同じ世代なら話もしやすいかもしれない。商工会議所女性会には同業・同世代はもちろん、世代も違う、業種も違うメンバーもいる。それらの多種多様な女性経営者の話を聞く事が出来る女性会はとても貴重な存在だと感じた。
市瀬氏の話を聞いて「商工会議所女性会」のイメージはガラリと変わった。経験豊富なメンター達が全国の女性経営者と起業を目指す次代の若い力を待っている。コロナ禍の閉塞状況を打破する活動がきっとここから生まれるはずだ。
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