インボイス制度導入でどうなる? 税務調査の方針と留意すべきポイント
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大企業の女性登用は思うように進んでいない。そうした中、政府は「女性活躍推進法」の対象を中小企業にも広げることに意欲を示し始めた。しかし、一部の中小企業では既に女性の柔軟な働き方が実現されている。人材不足が女性の活躍を後押ししているのだ。そうした企業は組織の活性化による業績向上も実感しているという。その具体例を探ってみた。
(聞き手: 安倍宏行 ジャーナリスト ”Japan In-depth”編集長)
どこの中小企業も人手不足に悩んでいる。後継者不足はいうにおよばず、現時点で人材の確保がままならない、との声は多い。
そうした中、中小企業にも女性の登用を義務付ける動きがあるという。女性活躍推進法の改正により、従業員数101人以上300人以下の企業に女性登用の数値目標を盛り込んだ行動計画を作ることを義務付けるというのだ。
この法律は2016年に既に施行されており、国・地方公共団体、そして301人以上の企業は以下を行う必要がある。
図)従業者規模別に見た、雇用者の男女別割合
出典)経済産業省
図)正社員に占める女性の割合
出典)HR総研
実際に女性が活躍している中小企業の例を見ると(経済産業省「中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集」)、想像以上に柔軟な制度を取っていることが分かる。
例えば、長野県上田市のあけぼの通商(住宅用窓ガラス販売施工:従業員44名)は、子育て中の女性を積極採用し、柔軟な勤務体制を敷いている。 短時間勤務を可能にし、家庭と仕事の両立を図っている。有給休暇を1時間単位で取得でき、子どもの病気や学校行事があるときは仕事中に数時間休みをとってまた職場に戻るような「中抜け」も可能にした。その結果、出産・育児休業を取得した女性従業員のほとんどが職場復帰しているという。子育てが落ち着いた女性は、希望により正社員へ登用するなど、従業員のモチベーションアップにも積極的に取り組んでいる。
また、北海道札幌市の有吉農園(青果卸売業:従業員15人)はシニアに注目。午前・午後、それぞれ4時間勤務の「短時間シフト勤務」で、また子育て中の女性従業員向けに9時~15時の時短勤務も設定し募集したところ、主婦・シニア(最高68歳)10名の採用に成功したという。
他の中小企業の例を見ても、柔軟な働き方が女性・シニアの採用に結びついていることが分かる。人材不足が解消されるだけでなく、個々のモチベーションアップによる組織の活性化は業績の向上ももたらす。政府が旗を振っている「働き方改革」は中小企業で既に実現されている。
もっともそうした改革に二の足を踏む中小企業も多いのも事実だ。人手不足は、硬直的な働き方を変えることで改善できることを中小企業の取り組みから学ぶべきだろう。働き方改革を単なる「時短」で終わらせてはならない。
また、女性やシニアの雇用促進、働きやすい環境の実現は人手不足の観点だけでなく、職場の活性化の視点からも検討されるべきだろう。女性やシニアが働きやすい企業の中には、職場のモチベーションアップや業績向上を実感しているところがたくさんある。
女性の管理職比率を高めようとの国を挙げての取り組みは良いことだと思うが、まずは経営者のマインドを変えることから始まるのではないか。そこが変わらない限り、女性活躍の推進はない。
同時に、高校・大学などで雇用問題を取り上げ、全ての人が平等に働くことのできる社会の大切さを学ぶ機会を増やしたらいいのではないだろうか。希望をもって社会にはばたき、より働きやすい社会を作る意欲を持つ若者を育てることは、社会の先輩である私たちの務めだと思うのだ。
当「経営ペディア」を通じ、取材班は家業を継いだ、もしくはこれから継ぐ人に積極的に話を聞いている。代が変わると家業にイノベーションが起きる。その姿を多くの読者に紹介したいと思い取材を重ねているが、その中で筆者が目を奪われるのは、女性後継者が実に生き生きと、そして自由に仕事をしている姿だ。彼女たちは職場で女性が働きやすいように様々な取り組みをしている。そうした環境は男性にとっても働きやすいはずだ。これからも女性の活躍する姿を紹介していく。
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