インボイス制度導入でどうなる? 税務調査の方針と留意すべきポイント
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累計販売本数1200万本(2019年4月時点)を突破したクレンジングゲル。250万人が愛用する大ヒット製品を開発した、化粧品会社ランクアップの創業社長岩崎裕美子氏。前職、なんと広告代理店営業の彼女が起業を決意したそのわけとは。
その名も「ホットクレンジングゲル」。温感クレンジング市場で5割超という圧倒的なシェアを誇っている。クレンジングといわれても男性諸氏は??だろうが、要は「メイク落とし」である。
何故この製品がかくもヒットしたのか?そのわけを知るには、岩崎氏の体験を聞かねばならない。
写真)MANARA「ホットクレンジングゲル」
出典)ランクアップ
当時、広告代理店の取締役営業本部長だった岩崎氏、連日深夜まで仕事漬けだった。朝昼晩と外食続き、連日深夜まで残業につぐ残業。気づけば肌はボロボロになっていた。ショックだった。
「自分の力でこの肌を改善できる化粧品を作りたい、と思ったんです。それで、よし、化粧品会社として独立するぞ、と」
一念発起して化粧品会社を立ち上げた岩崎氏だったが、スタートから苦難続きだった。まず、通販で売ることだけは決めた。次は製品開発だが、肌に優しい、無添加の化粧品を作ってくれる会社を探さねばならない。
「化粧品を作ったことがないのでどうやって作るか知らなかったんですよ。いろんな会社の化粧品を買ってきて裏に書いてある製造会社に片っ端から電話かけまくりました」
何百件も電話して、30社ほど会った時、たまたまアトピー用の石鹸を作ってる会社に出会った。
「無添加で肌に効果のある製品を作りたいんですという話をしたら、じゃあ、一緒にやりましょう、と言ってくれたんです」
岩崎氏がこだわったのはコラーゲンだ。そして出来上がったが、6種類のコラーゲン強化成分を入れた、「MANARA(マナラ)」と言うブランドの化粧品だ。石鹸と化粧水、クリーム、クレンジング、と4つの基礎化粧品を作り上げた。
「MANARA」は、最初から7つの無添加を謳った。それが、着色料、合成香料、鉱物油、石油系界面活性剤、エタノール、防腐剤のパラベン、紫外線吸収剤、だ。
全く無名の化粧品、まずは宣伝だ。
「フリーペーパーに私たちの化粧品の愛用者に『この製品ですごく肌が変わりました!』という体験談付の1回20万円くらいの広告を出したんです」
最初のお客さまは20人ぐらいだったが、製品の良さを実感してリピーターになった人が多かった。そして少しずつ販売数を増やしていった。その後の伸びはまさに驚異的だった。
図)MANARA売上高
提供)ランクアップ
数字だけみれば、経営はまさに順風満帆。業績は右肩上がりで、特に悩みなどなかったはずなのに、それがそうではなかった。
問題は、組織にあった。
「会社を起こしてから1番苦労したのは、社員に信頼をもらうこと。私、社員からめちゃくちゃ嫌われてたんです。私ともう一人今の副社長、創業者2人と、後から入ってきた社員との熱量が違い過ぎたのです」
元々いた広告代理店は、深夜残業当たり前の超ブラック企業。私が決めたことを部下が全部やるのは当たり前、という仕事の仕方を貫いていたという。完全なるトップダウン、やる気を全く認めないその社風の中で、社員はやりがいを失っていった。
「朝礼はまるでお通夜。社員を、いきいきわくわく働かせる事は全くへたくそでした。社員と会社の未来を語ることなんてできてなかったです」
さぞかし社員は辞めていったのでは?と思って聞いてみたらこんな自虐的な話が返ってきた。
「それが、会社は銀座にあるし残業もそれほどない。給料だって悪くないので、誰も辞めないんです。社長は大して好きじゃないし会社も好きじゃないけど、『別れたくても別れられない彼氏状態』って社員に言われました」
そんな暗い社風を変えるきっかけが訪れる。
岩崎氏が打った手が、社員研修だ。2泊3日、社員の一体感を醸成すると銘打った研修に、社長以下全員が、2グループに分かれて参加した。すると一般職で構成されたグループで衝撃的な事件が起きた。
各自が「会社にこんな貢献をします!」と宣言する3日目。講師から岩崎氏に「今すぐ来てください!」と、電話がかかってきた。
曰く。「こちらに来て社員に謝ってください」、と。
何事かとタクシーをすっ飛ばすと、15人の一般社員が泣いて抗議しているではないか。
「私は会社に全然認められてないから、会社に貢献するようなことなんて言えない」
その時岩崎氏はようやく気付いたのだという。
「この子達は、すごいやる気があるのに全然認めてあげられなかった。やりがいを引き出せなかったのは会社の責任だった」
そして社員の前で頭を下げた。しかし、それで何かが大きく変わったわけではなかった。
研修は失敗だった、と意気消沈した岩崎氏。そんな時、ある人に、「あなたたちが本当に大切してる価値観を社員に発表したほうがいい」とアドバイスを受けた。今さら?半信半疑だったが、副社長と数カ月頭をひねった。
そして出てきたのが「挑戦」という価値観だった。創業者2人、挑戦したくてこの会社を始めたのだった。でもそれを社員に全然説明してこなかった。それに気づいた。
しかし、社員の反応は芳しくなかった。
「社員はみんなびっくりして『急に挑戦って何?』と。社員からは『また社長誰かに入れ知恵されたんでしょ、どうせまた変わるわよ』そんな反応でしたね」
でも岩崎氏は諦めなかった。社員に、挑戦目標を作ってもらったり、しつこく挑戦という価値観を浸透させるよう努力した。するとどうだろう。少しずつではあるが、挑戦する社員が出始めた。
「会社が本当に挑戦をやるんだったら、挑戦が嫌いでも好きなふりをしなければこの会社にはいられないんだな、というのは伝わったと思いますね」
それからようやく、社内に一体感が出てきた。先の研修から実に2年、経っていた。
2015年に10周年を祝ったランクアップ社。新卒採用も始めた。社内に「挑戦」の価値観が浸透し始め、社員から新製品の提案が出始めた。海外事業や、卸販売も始まった。
ランクアップのミッションは「たった1人の悩みを解決することで世界中の人たちの幸せに貢献する」だ。
足を細くするタイツ「着圧美脚タイツ デオプラス」やまつげがちゃんと伸びる「アイラッシュセラム」とか、どの製品も社員個人の悩みから生まれ、そして多くの人に支持されている。
その「たった1人の悩みを解決する」事業を今後どんどん増やしていく、と岩崎氏は宣言している。まずは今年7月に立ち上げたのが「就活スクール「JobraNch」(ジョブランチ)」だ。化粧品会社が就活スクール?と疑問に思ったが、実はこの事業も新入社員一人の悩みから誕生している。
この新規事業の責任者、小松三季人氏は、なんと入社1年目だ。自分に自信がなかった学生時代、一向に上手くいかない就活を諦めかけた時、とある人のアドバイスから考え方を180度変えた。そして挑戦し続けた結果、ランクアップを含む50社から内定を取ったというつわものだ。
写真)JobraNch代表小松三季人氏
Ⓒエヌエヌ生命
今彼は、自己肯定感の低い大学生に、どん底から這い上がった自分の経験を元に、スクール事業を運営している。のぞいてみると、10人ほどの学生たちがワークショップで生き生きと意見を戦わせていた。
「彼らが社会人になってからもフォローしていきたいと思っています。いつでも彼らが戻って来れる場所になればいいなと」
小松氏はそう目を輝かせた。5年後の売り上げ目標は5億円だそうだ。
一人の悩みが多くの学生の悩みを解決する。まさしく、ランクアップのミッション、そのものだ。
もう一つの夢は、海外で知られるグローバルブランドになることだ。
既に台湾に子会社を設立し、アジアを中心に展開を始めた。ランクアップの「挑戦」は止まることはない。
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