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2020年7月10日からスタート!
「自筆証書遺言書保管制度」のメリットと活用時の留意点

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  • 相続

この記事は5分で読めます

1 自筆証書遺言書保管制度とは

(1) 自筆証書遺言書保管制度がスタート

2020年7月10日から自筆証書遺言書保管制度がスタートしました。これは、法務局における遺言書の保管等に関する法律によって創設された制度で、自筆証書遺言書を作成した本人が法務局(本局・支局等)に遺言書の保管を申請することができる制度です。

 

(2) 自筆証書遺言書のこれまでの問題点

自筆証書の遺言書は自宅に保管されることが多いため、①遺言書が紛失するおそれがある、②相続人より遺言書の廃棄・隠匿・改ざんが行われるおそれがある、③これらの問題により相続をめぐる紛争が生じるおそれがある等の問題点が指摘されていました。

これらの問題点に対応するために、自筆証書遺言書保管制度が創設されました。

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2 自筆証書遺言書保管制度のメリット

(1) 遺言者のメリット

法務局に遺言書を預けることにより遺言書の紛失・亡失を防ぐことができます。また、他人に遺言書を見られたり、勝手に開封されたり、破棄・改ざん・隠匿されたりすることを防止できます。

 

(2) 相続人・受遺者等のメリット

自筆証書遺言書保管制度を活用する場合には、家庭裁判所での検認手続きは不要なため、速やかに相続手続きをすることが可能となります。

 

(3) 遺言者及び相続人・受遺者等双方のメリットとなる「通知」制度

 

ア 関係遺言書保管通知

遺言者の死亡後、遺言書情報証明書の交付を受け、または遺言書の閲覧請求をした場合には、その他の相続人等に対して法務局から遺言書が保管されている旨の通知をする制度です。これにより、その他の全ての関係相続人等に遺言書が保管されていることが伝わることになります。


イ 死亡時の通知

遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認した場合には、あらかじめ遺言者が指定した者に対して、遺言書が保管されている旨を通知する制度です。この死亡時の通知については、2021年度以降頃から本格的に運用を開始することとしています。

この通知は、希望する遺言者のみについて実施することとし、通知対象者は、遺言者の推定相続人並びに遺言書に記載された受遺者等及び遺言執行者等から1名を指定することとなります。まずは、その人に遺言書が保管されている事実が伝われば、その他の相続人等にも確実にそのことが伝わると思われるような立場の人や、確実に保管の事実を伝えたい人を選択することがよいでしょう。


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3 自筆証書遺言書保管制度を活用するときの手続き

(1) 遺言者の生前

遺言者本人が遺言書を作成して、管轄の法務局(遺言書保管所)に申請の予約をした上で、直接本人が出向きます。法務局の事務官(遺言書保管官)が、本人確認と遺言書の方式の適合性(署名・押印・日付の有無等)を外形的に確認し、当該遺言書原本を保管するとともに画像をデータ化して保存します。

 

(2) 遺言者の死亡後

相続人や受遺者等は、遺言者の死亡後、全国の遺言書保管所で、遺言書が保管されているか否かを調査する「遺言書保管事実証明書」の交付請求、遺言書の内容の証明書の交付を請求する「遺言書情報証明書」の交付請求、遺言書保管所において遺言書の内容を見て確認する遺言書の閲覧請求の各手続きを行うことができます。

4 活用する際の留意点

自筆証書遺言書保管制度は、必ず遺言者本人が法務局に足を運んで申請手続きをする必要があり、代理は認められません。

また、法務省令で定めた様式に従って作成する必要があります。申請時に、遺言書保管官が遺言書についてチェックするのは、あくまでも方式の適合性を外形的に行うだけです。内容の適正性まで確認するものではありません。内容が不適法・不明瞭だった場合には、遺言者の死亡後、遺言者が考えていた内容を実現することができないこともあり得ますから要注意です。

5 公正証書遺言との違い

公正証書遺言の場合には、資格を有する公証人が遺言内容の形式面のみならず、その内容面まで精査して作成してくれるので、遺言者が考えていた内容を実現できないようなリスクは少ないでしょう。

しかし、自筆証書遺言書保管制度の場合は遺言者が単独で申請できるのに対して、公正証書遺言の場合は、原則として2名以上の証人が必要となります。費用も公正証書の方が割高です。


また、自筆証書遺言書保管制度であれば遺言者死亡後50年間は遺言書原本が保管されるのに対して、公正証書遺言の場合は、原本保管期間が原則として20年に限られること、公正証書遺言の場合には、上述した通知制度はないので、遺言者が死亡しても公正証書が作成されていた事実が相続人等に認識されない等のリスクがあることには注意が必要でしょう。

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6 事業承継には遺言書が重要!

日本ではまだまだ遺言書を作成しないケースが多いのですが、経営者の場合には、死亡後の紛争を防止して安定した経営を実現するためにも、相続・事業承継において遺言書を残すことは極めて重要です。自筆証書遺言書保管制度のスタートにより選択肢がグンと広がりましたので、是非、弁護士とも相談しながら適切に遺言書を作成して、スムーズな事業承継を実現して頂けたらと願っております。

弁護士湊・顔写真  (1).jpg

【著者】

湊 信明(みなと のぶあき)

弁護士・税理士 湊総合法律事務所所長

千代田区有楽町にて弁護士12名で企業法務を中心に法律事務所を経営。顧問企業数約200社。

〔経歴〕

2003年10月 湊総合法律事務所開設

2015年4月 東京弁護士会副会長・関東弁護士会連合会常務理事

2017年4月 中小企業法律支援センター本部長代行

2020年4月 日本弁護士連合会業務妨害対策委員会委員長

〔著書〕

『事例で学ぶ 生前贈与の法務リスクと税務リスク』(大蔵財務協会)

『勝利する企業法務』(第一法規)

『伸びる中堅・中小企業のためのCSR実践法』(第一法規)など

この記事に記載されている法令や制度などは2020年8月作成時のものです。

法令・通達等の公表により、将来的には制度の内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。




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