中小企業経営者の資産運用① 余剰資金を資産運用に活用する理由
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現在、中小企業では経営者年齢のピークは66歳と、高齢化が急速に進行しています(2015年中小企業庁調査による)。また、後継者不在が原因の廃業数は、企業倒産と比して2~3倍もあります。そうしたなか、親族が事業承継せず、役員・従業員もしくは第三者に承継(事業引継ぎ)させる割合が増加しています。事業引継ぎ支援センターは、この後継者不在による「望まない廃業」を減少させることを目的としてお手伝いする公的機関です。
中小企業は、2009年から14年の5年間で9.3%(約39万社)純減しています。これらの企業にはやむを得ない倒産や廃業も含まれていますが、廃業した小規模事業者の54.6%が後継者難を理由に挙げています(2013年中小企業白書)。実際、廃業事業者の44%は廃業時に黒字でありながら、後継者不在のため廃業せざるを得ない状況です。
もっとも、廃業は簡単にできるものではありません。従業員解雇や取引先に多大な負担を強いること、技術の喪失、経営者本人への債務保証の顕在化等、課題は山積です。しかし、第三者に引き継いでもらえれば、これらのデメリットはほぼクリアされます。
事業承継は、経営者にとって必ず発生する経営課題です。事業承継の目的は文字通り「事業」を承継し、その後の円滑な経営を行うことですので、「誰が」「何を」「いつ」「どのように」という4つの視点で考えることが重要です。
(1) センターへの相談件数は月500件超
センターは、産業競争力強化法に基づき2011年より全国に順次設置された公的機関です。相談者には「公平・中立・秘密厳守・相談無料」で利用いただけます。「事業引継ぎ」という言葉自体は事業承継(広義)の中で第三者承継(M&A)と定義しています。ちなみに、事業承継(狭義)は親族内承継と役員・従業員承継を指します。またセンターは、第三者承継のみを支援をするわけではなく、事業承継(広義)について広くご相談を承っています。譲渡側相談者には一般的には状況をヒアリングし、まずは親族内、そして役員・従業員承継、第三者承継の順番で可能性を模索します。後継者のいない経営者の悩みは深く、親族にさえ相談していないケースは少なくありません。そのため、相談者と共に課題を整理して方針を定めます。第三者承継を選択された場合には、登録機関(センターに登録されたM&A業者)やセンターが事業引継ぎをコーディネートしていくのが一般的なプロセスです。センターへの相談件数、成約(引継ぎ)件数はともに右肩上がりに増えてきています。2016年度の相談件数は約6,300件(月平均500件超)、成約件数も前年の2倍以上の430件となっています。成約件数のうち、従業員20名以下の事業者が85%、従業員5名以下の事業者はその半分の43%もあります(図2参照)。
(2) 相談件数のうち「譲受希望」が36%
センターへの相談で注目したいのは、譲受希望者の割合が36%を占めていることです(図3参照)。譲受希望者は、上場会社から譲渡企業と同規模の会社や個人まで、様々いらっしゃいます。新規事業を既存企業から引き継ぐことで敷居を低くするケースや、ドミナント戦略、個人創業する手段としても活用され始めています。後継者難に悩む経営者の方々や事業を引き継いでみたいという経営者の方々は、一度お近くのセンターに相談してみてください。課題解決の糸口が見つかるかもしれません。また今年度より、「気づき」のツールとして「事業承継診断」を実施いたします。事業承継にお役立てください。
著 者
宇野 俊英(うの としひで)
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 中小企業事業引継ぎ支援全国本部
事業引継ぎ支援プロジェクトマネージャー
明治大学政治経済学部卒。都市銀行で融資業務に従事後、事業会社、ベンチャーキャピタル等でM&A、事業承継ファンドを多数経験。2015年7月より現職。 2016年3月に株式会社UNO&パートナーズを設立し、代表取締役就任。
この記事は、エヌエヌ生命プレミアレポート2017年8月号からの転載です。 この記事に記載されている法令や制度などは2017年8月作成時のものです。
法令・通達等の公表により、将来的には制度の内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。
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