インボイス制度導入でどうなる? 税務調査の方針と留意すべきポイント
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中小企業の悩みの種は後継者不足だけではない。国内市場の縮小で稼働率が落ち、海外市場に活路を求めようにもノウハウがない。そんな企業は多いのではないだろうか。そうした国内企業と海外の企業をマッチングする公的なサービスがあるのをご存知でしょうか。それが”J-GoodTech (ジェグテック)”と呼ばれるサービスだ。どのようなものなのか?中小機構販路支援部 J-GoodTech 担当者に話を聞いた。
(聞き手: 安倍宏行 ジャーナリスト ”Japan In-depth”編集長)
出典)中小機構
”ジェグテック”とは、中小企業と大手企業・海外企業をつなぐビジネスマッチングサイト。経済産業省所管の独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)が運営している。国内外の企業へ情報を提供し、最適なビジネスパートナーを見つけ、製品開発や新規取引に結びつけられるように支援するものだ。
自社製品や技術情報のプロモーションや、企業情報の検索がサイト上で出来る。また、登録企業同士が直接情報交換したり、技術提案が出来たりする。中小機構のコーディネーターによるマッチングサポートもあるという。
このサービスが始まったのは2014年10月。当初は特に優れた技術を持った中小企業と、大手製造業とのマッチングで始まった。現在は、国内の中小企業約1万社、海外約5000社、大手企業約400社が使っているという。
中小機構販路支援部 J-GoodTech 担当の矢口雅哉課長代理と北口大地主任に話を聞いた。
写真)中小機構販路支援部 J-GoodTech 担当矢口雅哉課長代理(右)と北口大地主任(左)
©Japan In-depth編集部
安倍:海外企業とのマッチングに注力し始めたのはいつ頃からでしょうか?
北口: 2016年の半ば頃です。国内市場が縮小している中で、国内中小企業がベトナムなどアセアンの中小企業とビジネスマッチングをできるための土壌を作っています。
安倍:海外の企業はどのような基準で選んでいるのですか?
北口:当機構が業務提携している各国の官公庁などから推薦を受けた会社です。海外の企業がオープンに誰でも登録できるというわけではありません。登録企業の信頼性確保のため、日本の場合も審査を通過するか、公的機関等から推薦を受けた企業しか登録できません。
安倍:マッチングはどのように行われているのですか?
北口:代表的なケースとして、大手企業さんから「こんな技術をもった企業を探しています」というご相談が私たちに届きます。例えばスマホのケースを作ってくれる企業を探しているのですが、といった内容です。このような問合せを受けた後、私たちから中小企業さんに対して公募し、その後に「私これやります」とサイト上で中小企業さんが提案すれば、大手企業さんにお繋ぎするという流れです。また、こうした通常の流れのほか、中小機構では大手と中小の直接面談をアレンジしたり、工場見学をセットしたり、マッチングに向けてきめ細かいサポートも行っています。
安倍:これまでの実績にはどのようなものがあるのでしょうか?
矢口:大手さんと中小さんの企業が秘密保持契約を結んだ後は、私たちは介入できませんので、マッチングした案件がその後どう発展したかは、なかなか最後まで追いかけることはできません。いくつかの成功事例はジェグテックのサイト上で紹介しています。また成約まで行ったかどうかのアンケートは取っていますが、全部拾えるわけではありませんので、実績数字はありません。
中小機構によると、傾向として大手企業から中小企業に製品の試作や研究開発を依頼することが多いという。ただ研究開発の案件などは、時間が数年かかるものもあり、実際に研究の成果が出たり、開発が済んだりした後でないと一切の情報は公に出来ない。こうした案件をすべて把握するのは困難なようだ。
安倍:海外企業とのマッチングも行っているようですね?
矢口:海外と日本の企業のジェグテック上のコミュニケーションについては、中小機構のコーディネーターがサポートしています。また、海外展開の相談であれば別セクションの海外相談窓口を紹介したり、実際に企業と会うときには海外CEO商談会等の事業を行うチームに、海外実地調査を行う場合はF/S(フィージビリティ・スタディ)調査を行うチームに取次ぎを行います。しかし、私どもに海外の拠点がないのでもう少し現地に行って活動したいと言うことであれば、私たちの方からジェトロ(独立行政法人日本貿易振興機構)を紹介することもあります。
安倍:後は海外展開で重要になってくるのは金融ですよね。どういう風に資金を調達したらいいのか分からないから教えて欲しい、といった問合せも多いのではないでしょうか。
矢口:基本的に日本の中小企業が海外展開をする場合、海外の現地金融機関から資金調達するケースはほとんどないと思います。海外展開を決断する時点で国内の取引銀行や政府系金融機関に相談することが多いのではないでしょうか。他方、経済産業省では日本企業の進出が多い地域にジェトロが事務局となって「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム」を設置しており、現地の投資環境、取引先紹介やお金の話などを相談すると、そのネットワークで必要な機関を紹介するサービスもあります。 このプラットフォームは、中小企業の関心が高い国・地域(16の国・地域で22カ所)に設置されています。
安倍:ジェグテックのサービスは事業承継に悩んでいる企業のためと言うよりは、むしろ事業展開を広げていきたいと言う人に向けたサービスとの印象を受けました。事業承継に間接的に役に立ったと言う話はありますか?
北口:実際のところ現在まではありません。しかし、例えば3つ事業をやっていて1つの事業は事業ごと引き取ってくださいと言うニーズが今後ありえますね。技術の海外流出など、日本として良いことなのかは判断できませんが、最近事業承継に悩んでいるご高齢の経営者の方で、親族に承継できないというような企業も、他の国の企業が買収していくというケースはあると感じます。
矢口:事業承継の情報はプライベートなことなので、なかなか表に出てきません。金融機関も、事業承継しなくてはいけない会社の経営者を説得する立場でもないですし、「あなたの企業を絶対売るべきですよ」と言う立場でもありません。何といっても意思決定するのはその人ですから。
筆者が取材したことのある中小企業の社長は、自分の代で廃業だと話した。後継者がいないからだという。海外からの注文も多く、海外展開したらいいのでは、と思うが、借金してまで海外に工場を建てることなど、考えられないらしい。ならば、技術供与という道もあろう。必要なら海外で作ってそこから第三国に輸出してもよい。日本で当たり前の技術が、新興国では垂涎の的、ということも多いのではないか。
そうした中考えうるのは、後継者が全く新しい視点でビジネスを再構築する可能性だ。中小機構には、中小企業大学校という教育機関が全国に9カ所あり、中小企業の持続的な成長の為の人材育成プログラムを提供している。次代の経営者を目指す後継者に対する経営後継者研修では、課題解決力を習得する事例研究や、海外展開関係の講義もあるという。そうした機会を大いに利用したらいいと思う。後継者候補が海外に目を向け、市場の開拓や、パートナーの発掘、もしくは新たな業態への転換などを考え、実践していくことは、日本の中小企業の活性化に大いなるヒントがあるのかもしれない。
図)全国の中小企業大学校
出典)中小機構
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