インボイス制度導入でどうなる? 税務調査の方針と留意すべきポイント
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3年ぶりに開催された今回の「オランダスタディツアー」では、環境問題を当たり前として取り組む企業の考え方や姿勢に触れ、学びや気づきの多い機会になりました。海外での商品販売に動き始めた人。欧州とのコラボ作品の発表が決まった人など、新規事業がどんどん動き始めているようです。2022年11月のツアーに参加した5人の次世代経営者に話を伺いました。
山家漆器店 営業部長 山家 優一さん
1950年から和歌山県で漆器製造を手掛ける老舗。EC販売は20年に及び、店長を務める。海外への販売や新プロダクト担当。環境に配慮した新製品やアップサイクルする回収事業を計画中。
中尾 きっかけは、家業イノベーション・ラボの海外進出プログラムセッションでオランダでのビジネスをテーマにプレゼンをしたことです。そこで健康食として、こんにゃくを海外展開できるのでは?と可能性を意識しました。
細谷 私も同じセッションに出て、オランダを欧州の玄関口として、海外向けに「おこし」の商品開発をし、輸出するための方法が知りたくて応募しました。
清水 私は、気候変動対策が進んでいるオランダで事業に対する向き合い方の価値観が学べたらいいなと考え、参加しました。
前田 僕は家業イノベーション・ラボの欧州進出支援プログラムで、既にオランダ人デザイナーのキャロルさんと協業する権利を得ていました。彼女と会って、木彫り作品の打ち合わせをするのがいちばんの目的でした。
山家 アトツギファーストでツアー参加者を募集しているのを知り、漆器のオランダでの市場の可能性を知りたいと応募しました。サーキュラーエコノミー(循環型経済)を学びたいという気持ちもありました。
茶のつたや 清水 真由さん
東京・早稲田で93年続く老舗日本茶店に生まれる。大学時代にSDGsをテーマとする学生団体で活動したことから、環境問題をライフワークとしている。店舗ビルの電源を再生エネルギーにするなど身近な改革を推進中。
清水 両親にツアーの写真を見せながら、気候問題とお茶の販売方法について話し合うことができました。プラスチック包装をお茶缶やガラス瓶での量り売りに徐々に切り替えたいと思っています。
細谷 現地で「おこし」を試食してもらったら、「これはスイーツではなく、ヘルシースナック」だと言われたり、飛び込みで入ったヴィーガンスイーツショップの人に食べてもらったら、「グルテンフリーですごくいい」と褒められて自信が付きました。改めて考えたら、「おこし」をヴィーガンだと意識したことがなかったなと気がつきました。
山家 環境に配慮した取り組みを偽善とかではなく、当たり前にやる文化が定着しているんだなと驚きました。環境を意識したものを買うとか、そういうのを選ぶことがかっこいいという空気感があることが、日本との大きな違いで、それをきちんとビジネスに落とし込むのが非常にうまい。そのテクニックや企業姿勢は学ばなければと思いました。
中尾 うちは昔から廃業した会社の機械を引き取って、それを直して使ってきました。それってなんだか、かっこ悪いと感じ隠してきていたのにオランダでは、逆にそうやって資源を引き継いで使うことが一番かっこいいんだと。衝撃的でしたね。これはもともと、うちがやってきたことじゃないかと。今、会社では、まずそれがサステナブルなのかどうかを意識しながら仕事をするようになりました。
前田 オランダで実物を見た手仕事の高いレベルとパワーに圧倒されて、行く前と後では人生が変わるくらい刺激を受けました。それに訪問する先々が、戦略的に環境問題に取り組み、行動している企業ばかりだったので、日本も自分も意識が遅れてると、ものすごく考えさせられました。国内だけの感覚でビジネスすると生き残れないんだと危機感を覚えましたね。
中尾食品工業株式会社 代表取締役 中尾 友彦さん
1975年大阪府堺市に設立。こんにゃくを作り続けて90年の老舗四代目。2013年に承継し、まっとうなこんにゃくを作りながら、ヘルシー食品として欧州進出や自社のサステナビリティへの取り組みを推進中。
細谷 今回サーキュラーエコノミーを学び、フードロスに注目するようになりました。そこで地元のクラフトビール工場から出るビールかすをアップサイクルして作るグラノーラを商品開発中です。またオランダで会った方にパリで和菓子を卸している方をご紹介いただき、商談が進んでいます。現地の方のヨーロッパでの横のつながりは本当にありがたかったです。おかげさまでパリの展示会出展も決まり、欧州での足場ができ、「おこし」の輸出が実現できそうです。
中尾 こんにゃくで作るパスタ代わりの麺を欧州やアメリカで売っていくプロジェクトを本格的に始めます。今回のレストラン視察で、健康志向の価値観が当たり前という世界の風潮があると知ったことが、後押ししてくれました。英語の自社サイトでは、うちの環境に配慮できている、かっこいいクラフトマンショップを発信したいと準備しています。
山家 ものを作らないことが一番環境にいいことなのかと現地でモヤモヤしました。でもこれからサステナブルなものを作っていけばいいと教わったので、サーキュラーエコノミーを実現する企業姿勢が見せられる新プロダクトブランドを作っていこうと思っています。こういうことって、もしも自分一人だったら怠けてしまうかもしれないじゃなですか。正直、漆器の世界ではやってもやらなくても業績にまだ影響しない。でも今回は、一緒に行ったメンバーを意識してしまいますね。これから取り組むことを共有できる仲間ができたことは、非常に大きい収穫でしたね。
前田 この秋、アムステルダムでの展示即売会に出店が決まりました。またキャロルさんとの協業作品を、2024年のミラノサローネで発表し、一般発売をします。日本に帰ってきてから、一緒に行ったメンバーと夜な夜な話し合った環境への取り組み課題が頭に残っていて、自分も何かしたいとすごく考えてしまいました。まずは自分にできることからと、木くずをいかにアップサイクルするかを考えています。
株式会社木彫前田工房 代表取締役 前田 暁彦さん
大阪市でだんじり彫刻や木工品を製造する彫師として2008年工房設立。だんじり、やぐらや太鼓台などだけでなく、ホテルや商業施設向けの装飾品制作を行う。木くずを使ったアップサイクルに取り組み中。
山家 オランダは、環境への課題からビジネスを生み出すことに長けていて、なぜ企業が取り組むのかなど、とても多くのことを学べます。自社にどう生かせるかを現地で感じて、考えたらいいと思います。通訳もしてもらえますが、自分の英語でしゃべったほうが面白いかもしれないですね。
中尾 生半可な気持ちでは行ってほしくないですね。ネットで見れば、なんでも分かった気になるかもしれませんが、実際に現地に行って、歩いて、その空気感の中で味わわないとわからないことが多いなと実感しましたから。自分が得ようと望めば、見えてくるものがぐっと広がります。ずっとサステナブル軸で話が進むので、違和感があるかもしれません。でも最終的に自分の言葉でサステナブルを説明できるようになるから大丈夫。大きな気づきを得られますよ。
清水 オランダとのギャップに打ちのめされないように、サーキュラーエコノミーやサステナブルについて、あらかじめ勉強していくことをお勧めします。
細谷 ツアーに参加して何を持ち帰りたいのかを自分で良く考えてから、参加したらいいと思います。滞在時間が限られる中、自分は海外進出の足掛かりを必ず作りたい
と思って自由時間などを利用して行動したので、今後のビジネスに生かすことができました。
前田 どうせ行くのなら、どん欲に質問しましょう。僕はあとになってから、あれもこれも聞きたかったと後悔しましたから。今回のメンバーで、自分が一番の年長者でしたが、みなから学ぶことばかりでした。そんなツアーメンバーとの出会いは一生の財産になります。仲間意識も生まれて、今一緒に「OKOSHIYA TOKYO」の開店ノベルティを協業して作ってるんですよ。レベルの高いメンバーからのよい刺激は、ほかでは得難いものです。
有限会社丸文製菓 代表 細谷 誠さん
1963年東京都荒川区で創業した手づくりの米菓・おこし店の三代目。2021年、味やパッケージを一新し、東京・丸ビルに「OKOSHIYA TOKYO」を出店。欧州向けの商品展開やエコな商品開発を手掛けている。
エヌエヌ生命では、2018年からオランダにあるNNグループの協力の下、「オランダスタディツアー」を開催してきました。これは、イノベーション先進国オランダの最先端企業や施設の取り組みに触れ、新規事業のヒントを得る好機になっています。
感染症の影響で中断していたこのツアーですが、2022年11月に若手経営者5人をお招きし再開しました。海外に向け、商品展開したり、協業をしたいという方ばかりでしたので、訪問した企業や施設、美術館などでの気づきや学びは大きかったようです。また、オランダをゲートウエイとしたヨーロッパや諸外国への進出などの可能性を探っていただけたのではないかと思っています。
今後も海外での新たな事業チャンスにどん欲にチャレンジしたい、行動していきたいという方々の参加をお待ちしております。
エヌエヌ生命は「中小企業サポーター」として、今後も海外進出や新規事業のきっかけの後押しをしていきたいと考えています。
エヌエヌ生命保険株式会社 事業開発部 CSV推進チーム
保谷 友美子
2021年入社。社会貢献活動を担当。家業イノベーション・ラボ実行委員として家業後継者のイノベーション支援を行う。2021年、伝統産業を担う後継者に向けた欧州進出支援プログラムを立ち上げる。後継者と海外デザイナーが協業しながら現地生活者のニーズに合わせた商品開発および海外販路開拓を支援している。
このインタビューは、動画でもご覧いただけます。
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