「もしも」をちゃんと話し合おう
株式会社島田商店 代表取締役社長 嶋田淳氏 /妻 奈生子 氏
東京・墨田区にある株式会社島田商店の3代目にあたる嶋田社長は、会社の事業拡大や社員教育などを精力的に進める一方、育児休暇を取得し家庭を大切にする父親の顔も。経営者、夫、父親として、もしものことがあったら…。
仕事や子育てで忙しい日々を過ごす嶋田社長とその妻である奈生子さんに、普段は少し聞きづらい「もしも」について胸の内を語ってもらいました。
奈生子さん:赤ちゃんも生まれたばかりだし、夫婦二人の時とは、先行きの不安も違うよね。もしあなたに何かあったら、私はどうすればいいんだろう。会社はどうすればいいんだろう。
嶋田社長:僕の子どもの頃は、社員が5人くらいの家族経営みたいな雰囲気の中で育ったけど、今では50人くらいの社員がいて、仕事ができる社員もいる。今僕が死んだら、家族のことはもちろんだけど、働いている従業員とその家族まで養っているわけで、その責任について不安に思うところはある。
奈生子さん:そうだよね。
嶋田社長:そもそも僕は自分の息子や娘だからといって、仕事を継いでもらおうという気は全くなくて。仕事ができる人、社員や家族を養える人が代表になるべきだと思うし。でも会社には島田のDNAが残っているから、それはしっかり残したい。そのために、今は社長がいなくても動く会社を作りたいと思っている。昔って番頭さんがいて、その人が言ったことをやっていればいいっていう会社がいっぱいあったと思うんだけど。
奈生子さん:番頭さんって、ナンバー2みたいな?
嶋田社長:そう。でも会社が大きくなったり、世の中の人に必要だと思われたりするようになると、中で働く人の役目をはっきりさせてあげないと、言われたことだけをやる会社になるし、そういう会社は面白くないと思うんだよね。だから、目標を持って自ら会社に貢献して欲しいと思って、人材育成をするようになったかな。その結果として、部長や課長という役職ができて、それに伴って責任感も出て、会社の規模も大きくなったということにつながったんだと思う。
奈生子さん:でも、もし人材育成が終わる前に、あなたにもしものことがあったら私はどうすればいいのかな?
嶋田社長:ね…。
奈生子さん:ね!?(笑)
嶋田社長:僕の周りには保険や証券の方とか、いろんなアドバイスくれる方がいっぱいいる。その人たちには、何かあった時に備えて、いろんなことを伝えてある。遺言書も作ったし。また1人生まれたから書き換えなきゃね(笑)。そういう風に、しばらくの間は“お金”という意味で不安なく生きられるように準備はしている。
奈生子さん:でも、それだけじゃないと思うんだよね。父親という存在も必要だと思う。
嶋田社長:とはいっても、死は待ったなしだからいろいろ考えておかないとね。
それというのも3年位前から葬儀関連のビジネスを始めて、多くのご遺体にお会いしているけど、中には若い人もいて。そういう方たちを見ると「ああ、死は突然来るんだな」ってすごく感じた。その頃から、保険を増額しよう、現金をちゃんと持とうとか考えるようになった。結局死んだら何にもできないから、まず、お金の心配がないというのが大事だと思って。どんな良いことを言っていても、優先順位は生活に困らないお金を準備すること、と僕としては考えちゃうな。
奈生子さん:そうね、お金があれば助かるけど。夫婦間でもお金の話っていうのはタブーな気がして…。
嶋田社長:特に死んだ後の話だとね(笑)。
奈生子さん:前は、仕事の話も夜飲みながら毎日していたよね。助成金の話とか、区や都から声がかかったイベントの話とか。
嶋田社長:奈生子のお父さんが経営者だったからそんな話に慣れていたかもしれないけど、家業やっている家じゃなかったら、不安でたまらなかったと思うよ。僕がやってることも、区や都から声がかかった大きなプロジェクトも、それ何のためになんだろう、とかね。今は会社を伸ばさないといけない時期に来てるから、そういうイベントも減らしてなるべく外に出ないで会社にいるけどね。
奈生子さん:私は、仕事や会社の将来の話をしたりするのも楽しかったよ。
嶋田社長:子どもが生まれてからは、どうしても子どもの話が多くなっちゃうよね。
奈生子さん:反省だね、そこは。何年も一緒にいると日常になっちゃうから、いなくなって初めて気付くんだと思う。いてくれたこと、普段やってくれていること、元気で働いてくれていること。感謝の気持ちを。いなくなって初めて、ありがたかったなあと思ったり。でも、いなくなった時に伝えようと思っても、その時にはもう遅いよね。
嶋田社長:うん、そうね。
奈生子さん:普段からちゃんと言わなきゃいけないんだけど。
いつもありがと。
嶋田社長:(笑)
奈生子さん:いつも言えないけど。
嶋田社長:育児休暇を取って主夫になって分かったけど、今まで気付いてなかったことがたくさんあって。家にホコリが落ちてないとか、こんなに指って荒れるんだ、とか。そ。そういうことも含め、文句も言わずにやってくれてありがたいなと思う。僕の過去まで含めてお世話になっているから、そういうのも全部受け入れてくれている奈生子には、あらためて感謝したいと思っています。ありがとうございます、いつも。
奈生子さん:こちらこそ。ちゃんと健康に気を付けて長生きしてください(笑)
- お二人が出演する動画はこちらでご覧いただけます
- 2019年に“新規ビジネス”をテーマに島田商店 嶋田淳 氏・奈生子 氏へ実施した取材記事 「時代を先取り、人が目を付けないところに参入する」(2019/3/8) もぜひご覧ください。