父が築き守ってきたプロテック 「人のために」の理念を貫きたい プロテック株式会社 代表取締役 小松 麻衣氏
- 40-50代
- 北海道・東北
- 女性経営者
- 後継者
創業社長とそれを継ぐ二代目が事業承継について話し合う。それは、どこか照れもありなかなか難しいもの。
そこで、『ヒストリーブック』(※)を創業社長に書いていただき、創業からの出来事や、経営に大切なことなどを残していただきます。そこに書ききれなかったこと、さらに伝えたい大切な思いなどをインタビューしたうえで、『ヒストリーブック』とインタビューを後継者に読んでいただき、その後お二人で会社経営について語り合う時間を作ります。
『ヒストリーブック』を媒介として、経営者と後継者が互いの思いを伝えあうという新企画。初回は、広告会社・株式会社アイアンドエフの福島優 社長にご登場いただきました。
(※福島優社長への取材当時(2020年2月)、息子の直輝さんはPR会社に出向されていました。2020年8月より株式会社アイアンドエフ社に復帰。)
(※)The History Book(ヒストリーブック):社長の『考え方』『生き方』『あり方』を言語化し、財産とともに後継者が受け継いでいけるようお役立ていただけるツール。具体的には、会社の理念、歴史、直近の経営・財務状況、事業承継計画、重要な取引先等の連絡先、家族へのメッセージ、加入している保険の情報などを記入できます。事業承継予定の有無にかかわらず、経営者には必ずもっていただきたい1冊。エヌエヌ生命が制作。
株式会社アイアンドエフ
代表取締役 福島 優 氏(ふくしま・まさる)
1957年岡山県生まれ。大学卒業後、広告代理店で営業として活躍。1988年起業独立。販売促進ツールの企画制作や情報誌発刊、テレマ事業などを手掛け、2000年東京進出。2017年名古屋進出。現在の営業エリアは北九州から北関東まで広くカバーする。この10年で売り上げは倍増し、グループ全体で18期連続増益達成中。社是は、「3つの笑顔」。(「お客様の笑顔」「社員の笑顔」「家族の笑顔」)
大学卒業後、岡山の地元大手広告代理店の営業として仕事漬けの毎日を送りながら、倉敷支社の立て直しを命じられ、その使命を果たした後ひとつの思いが芽生えた。
「30歳までに独立をして、会社の枠にとらわれずに、お客さまのためになる広告戦略をもっと思い切りやってみたい。そう強く思ったんですね」
創業後3~4年は順調に推移していた業績だが、90年代初頭バブル崩壊の波が岡山にも押し寄せてきた。
「2期連続して赤字。当時サラリーマン上がりだった私は、赤字金額の大きさにおののいてしまったんです」
今になって振り返れば1000万円の赤字というのはそんなに大きくはないかもしれないが、当時の福島社長は資金繰りに悩み、眠れない夜が続いた。
「とある地銀と創業以来ずっと取引をしていたのですが、ある時『今月末までに融資しているお金をいったん返してください。リセットしたら来月末までには戻します』と言われたんです。直接、支店長と話をしていたので、信用していたらその後音沙汰がない。月末に支払いがあるのに、電話をしても出てくれなくて、そこから5日間くらい、資金繰りにかなり焦りましたね」
いわゆる貸しはがしである。最終的には信用金庫が助けてくれ、事なきを得た。
「週末も、夜も、資金繰りのことばかり考えて金策に走り回っていました。田舎の家の権利書まで引っ張り出してきたり、親戚にも相談に行ったりして、親にも心配をかけてしまった。けっこう、その時はへこみましたね」
その後、新しい媒体や企画を開発し、アイアンドエフならではの独自性の高いサービスを展開することで徐々に業績を回復させていった。
会社として取り組んできてよかったことは、人材の積極採用だという。
「わが社の最大の強みは、やっぱり人なんです。根は真面目で素朴で一生懸命という資質の人が多い。そして、それぞれが自分で成長していってくれている」
だから経営で重視し、気を付けなければいけないポイントも、やはり「人」なのだという。
人を大事にする部分に手を抜くと組織にひずみがでて、メンバーの価値観が違ってきてしまうと強調する。
「会社は自分の目標を達成して、利益だけ出せばよい。プライベートは全く関係ないという会社もあるじゃないですか、僕はそういう考え方は、あまり好まない」
それをどう次の社長に承継しようと考えているのか?
「言葉遊びになりますが、『強い会社』とか『できる会社』っていうのは、なんだか疲れる。それより好かれるというか『愛される会社』にしたいんです。今より、もっとそこを目指していけたらなと。クライアントからも、大事にされたい。社是の3つの笑顔じゃないけど、そこに“愛”はあってほしい。それを次の世代へも引継ぎたいのです」
社長自身の社員とのコミュニケーションは、いっしょにワイワイ言いながらの飲みニケーションでとっているという。期ごとのキックオフ、達成会、社員旅行、忘年会、部活動、ランチ会、勉強会などを奨励し、活動費を補助している。
「できる限りは続けていきたいと思います。楽しそうな社員の顔を見るのが、うれしいんですよ」
社長に求められる資質とはどんなものだろうか?
「アイアンドエフの社長には、人間力とコミュニケーション力が一番大事でしょうね。社長って役割が違うんです。チームで仕事をしていくときの監督、コーチの役割。彼は今、現場しかやっていないから、きっとわからないと思いますが、早く学んでほしいなと思います」
創業社長は、自ら望まなくても苦労が向こうから押し寄せる。そのことで人間的な幅も広がり、強くなる。後継者は同じ苦労をしたいと願ってもそうそうできないのが現実だ。
「去年ラグビーでワンチームっていう言葉がはやったじゃないですか。組織っていうと堅苦しく聞こえますが、チームっていいですよね、わかりやすい。どうやってメンバーと力を合わせて仕事を遂行するのか。それをやってくれたらいい」
事業承継をこんなかたちでこんな時期にしたいというイメージはあるのだろうか
「今後3~5年の時間をかけてつないでいけたらと思っています。まずはメンバーとして仕事をやりながらね。私はなんでも自分でやってきたので財務と経理のプロでは全然ないけど、資金繰り表は、今でもしっかり作れるし、以前は自分で売掛金の回収計画表を作ったりしていました」
だから経営者としての勉強をしていなくても、経営のコツはつかめていたという。
「ある程度基本的なことは身に付けてほしいから、経営学をプロから学んでもよいと思います。でもそれより大事なのは、何かあったときに相談できる経営者仲間をいかにつくるか」
大学の友達とは違う、同じ業界やそれ以外の場での知己を広めて、自分がもっているような頼もしい人脈をもってほしいと思っている。紹介することもできるが、自分のネットワークを作っていってほしいそうだ。
危機が人を育てる場合もある。それは承継できるものなのか。
「いくらしゃべったって、頭で分かったつもりになったって、経験してみないとどれだけ苦しいかはわからないですよね。あんまり死ぬか生きるかの経験はさせたくはないですが、社長になれば、似たようなことがないわけはないし、そんな時でも乗り切れるように、相談ができる人を作っておく。どんなこともそうですが、一人ではろくなことは思いつかない」
承継の課題は何だろうか。
「私も事業承継をしたことも、させたこともないので、正直ピンと来ないところがあるんです。けれども大事なのは、今いるメンバーと力を合わせて、いかに彼らの力を引き出せるような環境を作れるかじゃないでしょうか。そこを見極めながら、さまざまな事柄に気が付くってことが大事だと思う」
今、一番伝えたいことは?
「会社で起きることは、全部自分の責任になるということ。相談できる人材がいても、最終的にはあなたが全責任をとるのですよ、と。よく言われることですが、雪が降ってもあなたの責任やと(笑)」
当たり前のことばかりおきるわけではない。そのときに経験がない分、勇気を振り絞って、向かっていく、あと一歩が難しいのではないだろうか?
「難しい難しい、創業社長じゃないからね。たぶん短時間にはできないでしょうね。全体を見渡して、事業の方向性にしても人間関係にしても、そうとう理解できていないと。自分が判断するときのモノサシもね。難しいと思う。逆に私は二代目を経験してないからわからないけどね(笑)やっぱり最後はメンバーとのコミュニケーションが効いてくる。だから彼らを徹底的に理解しようという気持ちをもって、あらゆる手段でやったらいい」
最後にかけたい言葉は何でしょうか?
「チームでのあなたの置かれたポジションと責任を理解しながら、社員さんとブレーンさんと経営者を中心とした友達の協力のもと、総力戦でビジネスをやってほしい。最初はサポートしてもらうっていうスタンスでね。みんなが助けたくなる存在になってほしい。そう、これが一番伝えるべき重要なところかもしれません」
次回は、承継される息子の福島直輝さんが、『ヒストリーブック』とこのインタビューを読んだうえで、社長との対談に臨みます。引き継ぐ側の考えや疑問など、正直な気持ちをお聞きします。
後編:福島直輝 氏 へのインタビュー記事「「3つの笑顔」の社是を最優先として会社を守り、新しい事業の柱を増やす挑戦もしてみたい」はこちらから
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