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中小企業にも大きなメリット!
クラウドファンディングのしくみと活用法

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この記事は7分で読めます

近年、日本においてもクラウドファンディングが新たな資金調達手段として注目されています。クラウドファンディングのメリットは「手軽に・すぐに」挑戦できることですが、テストマーケティングとして活用できるという点も挙げられます。大手企業に比べて資金力が脆弱な中小企業にとっては大きな魅力といえるでしょう。そこで、クラウドファンディングのしくみと種類、メリットや活用法などをまとめてみました。

1.クラウドファンディングのしくみと種類

 ◆クラウドファンディングのしくみ

クラウドファンディング(CF)とは、「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」というしくみのことを指しています。CFは従来の資金調達方法よりも「手軽に・すぐに」挑戦できる点や、「テストマーケティングにも使える有用性」といった点で新たな資金調達のしくみとして近年注目されています。

実際、CF事例の多くは、「製品開発をしたい」「製品のプロトタイプは既にあるが、ユーザーの反響を見て量産を決めたい」「世の中の問題を解決したい」といった、“未来の実現”を名目とした取組み(プロジェクト)が主な目的となっています。

また、震災・災害復興を名目に寄付という形で資金を募ったり、2020年はコロナ禍の“今を乗り越える”ため、多くの事業者や自治体が資金を募っている姿を目にした方も少なくないでしょう。このように開発資金不足に悩んでいる企業やコロナウイルスの影響を受けた企業など、中小企業のCF利用はますます増えています。

◆クラウドファンディングの種類

一口にCFといってもいくつかの類型が存在します。大枠のしくみは全て同じですが、細部においては事業者に資金を出資または支援をされた方に対して、お返しする「リターン」が各類型によって異なることと、利用条件や審査基準なども異なります(図表1)。

CFと聞いて一般的に想起される類型は、「購入型」や「寄付型」が多いのではないでしょうか。特に購入型CFは「EC(インターネット通販)」との垣根が良い意味で曖昧であり、最も手軽かつ法人・個人を問わず、実質誰もが資金調達に挑戦できる類型です。

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2.クラウドファンディングのメリットと留意点

◆購入型CFのメリット

「購入型CF」のメリットは、大きく分けて6つと考えています(図表2)。ECとの明確な違いは、短期間でまとまったお金を集めることができ、先に製品の需要を把握できることです。また、多くのCFプロジェクトはお金が集まってから納品に移行するため、納品サイクルがECよりも長いことも特徴です。何より「元手が無くても製品開発に挑戦できる」ということは大きなメリットであるといえます。支援者にとってプロジェクト内容に賛同できるものであるかなど、ある種の「共感」をベースにお金を出すか否かを判断している方が多いことも、CFならではの特徴として挙げられます。

プロジェクト開始には審査がありますが、コロナ禍など一時的に利用者が増えた時期を除けば平時は3日~1週間目安で完了しますし、スムーズなときは最短で1日程度で完了する場合もあります。また、審査内容もCAMPFIREに限っていえば「公序良俗に反しないこと」や「各種法律に抵触しないこと」などその項目は必要最低限ですので、手軽に資金調達を開始することができます。

また、下表⑤の「PR効果」については、CFのプロジェクトを立ち上げて周囲に発信することで、それをマスメディアが後追いで報道するようなケースも少なくありません。CFプロジェクト自体がニュースメディアやプレスリリースの代替となっている側面があり、その結果、新たな顧客を呼び込むことにもつながります。

支援者にとっては、購入型CFであれば新製品やユニークな商品・サービス、また融資型CFや株式型CFでは金利や配当をリターンとして手に入れることができる点がメリットといえます。また、プロジェクトごとに製品が出来上がる過程や活動の進捗状況などの報告をプロジェクトオーナーから受け取ることができるため、支援したプロジェクトに擬似的に参画しているような感覚を持たれる方も少なくありません。

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◆クラウドファンディングの留意点

一方、留意点としては、以下の4つが挙げられます。

(a) 金額が思ったように集まらない可能性があること

(b) リターンを実行するにあたり一定の負担がかかること

(c) 集まった金額次第ではブランド毀(き)損(そん)につながると考える方もいること

(d) 資金を出してくれた方に配慮が必要なこと

 

これらについては、以下のような考え方や対応により解消することができます。

(a)は、現状の実力や評価を可視化できる機会であるともいえます。リターン内容の創意工夫などで一定の回避ができますし、思ったように集まらなかったとしても何回もCFに挑戦することができます。

(b)は、「お礼の手紙」など工夫次第で負担を下げることができますが、リターン内容の質で集まる資金の大小などが決まる側面は強いので、ここは一つひとつ丁寧に行うことをお勧めします。

(c)は、各自の捉え方次第ですが、目標金額を調整したり、あえて大きな金額を目標として「壮大なストーリー」と化すこともできます。

(d)は、CFは取組み自体への共感や善意をベースに取引が行われるため、こまめなコミュニケーションが求められる場合もあるものの、支援者へのお礼や進捗報告などを丁寧に行うだけですので、特別に難しく考える必要はないでしょう。

3.中小企業の活用事例

最近では大企業と括られる群や、自治体の利用数も増えてきましたが、CFで資金調達に挑戦される方のほとんどは中小企業や個人です。ここでは、中小企業の具体的な事例を紹介します(次頁図表3)。

これらの事例は、従来の資金調達方法ではかなえられなかったかもしれませんが、CFなら応援者が多数集まることで実現できる可能性が高まるものばかりです。

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4.クラウドファンディングを成功させるコツとは

◆情報発信は普段接している顧客をイメージ!

これまでCAMPFIREでは数多くのプロジェクトを扱ってきましたが、資金集めに成功した事業者は共通して、情報を丁寧に発信することを意識しています。『広くマスに向けて届くメッセージを』と考えてしまうと、発信内容が薄味になってしまい、思うような成果を上げられないケースが多い印象です。普段接しているお客さまをイメージして、その人に向けて伝えたいことから考えていくのがよいでしょう。CFだからと変にトレンドを意識して、作り込んだ言葉を使うのではなく、平時から顧客向けに話しているセールストークも良いと思います。

一定の金額を集めている方はSNSやブログなどの発信をはじめ、身近な顧客や知人に発信し、場合によっては対面で説明までされている方もいらっしゃいます。これまで積み上げた顧客数、顧客との関係性などが集まる金額の大小に比例しやすいものです。CFサイトに掲載さえすれば「金額が集まる」ということではなく、「一人でも多く知ってもらう」という努力が何よりも重要です。

◆目標金額設定は極端に高くしない

また、目標金額設定は極端に高くしないこともお勧めします。とある企業が製品開発で複数回CFに挑戦された際、一度目は見積もりを取った工場の製造コストの関係で目標金額を非現実的な数値に設定せざるを得なくなり、結果的に数値上は「失敗」に終わりました。

一度目の挑戦後、そのプロジェクトを見た別の工場から「うちならもっと安くできる」という話がプロジェクトオーナーに舞い込み、生産コストを下げることができました。その結果、二度目は実現可能性が高い目標金額を設定でき、「成功」へとつながった上、一度目に支援してくれた方の多くが二度目も支援してくれたため、一度目を大きく超える金額を集めることができました。

金額だけではない、副次的な効果を可視化できるのもCFの良いところです。挑戦する際に元手は必要ないので、まずは気軽に挑戦されてみてはいかがでしょうか。

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この記事に記載されている法令や制度などは2020年7月作成時のものです。
法令・通達等の公表により、将来的には制度の内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。




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