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突然の事業承継に悩む女性の不安や孤独に寄り添う

女性社長のココトモひろば

   2020年1月にリリースされた『女性社長のココトモひろば』は、先代経営者の逝去により、突然、事業を継ぐことになった女性経営者を対象としたコミュニティサイトです。これまで多くの事業承継者を支援してきたエヌエヌ生命保険株式会社と、国内最大級の女性経営者データベースサイト『女性社長.net』を運営する株式会社コラボラボが共同で行うサービスとして誕生しました。

   新たな取り組みとして注目を集める『女性社長のココトモひろば』について、立ち上げから携わるエヌエヌ生命保険株式会社の小橋、株式会社コラボラボの代表である横田さんに話をうかがいました。

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株式会社コラボラボ 代表取締役
お茶の水女子大学 客員准教授
1976年生まれ。お茶の水女子大学卒業後、1999年株式会社リクルート入社。営業・新規事業および事業企画を経験後、2006年㈱コラボラボ設立(現職)。女性社長.net(会員約3000名※2020年8月現在)、「J300」など女性社長を応援する企画に注力。Forbes Japan「未来を創る日本の女性!フォーブスが選ぶ10人」等選出。
男女共同参画重点方針専門調査会、総務省自治体戦略2040構想研究会、第32次地方制度調査会、財務省財政制度等審議会など男女共同参画、行財政改革から地方自治分野まで多数委員を歴任。著「女性社長が日本を救う!」(マガジンハウス発行)

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横田 響子 氏

エヌエヌ生命保険株式会社 カスタマーエクスペリエンス部長
2004年アイエヌジー生命(現エヌエヌ生命)に入社。営業やIT、プロジェクトマネジメント等の業務領域を経て、2018年に“顧客体験(CX)”特化のチームを立ち上げる。その後、2020年にカスタマーエクスペリエンス部を設立。お客さまへのインタビューやテストを繰り返すデザイン思考の手法を取り入れ、真にお客さまにとって必要とされる顧客体験の開発・強化を手がける。多くのインタビューを通じ、生命保険会社として保険金だけに留まらないサポートを提供する必要性を痛感、特に先代の他界により「突然社長になった」後継者(特に先代配偶者)のサポートに強い想いを持つ。

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小橋 秀司

同じような境遇の女性経営者たちの経験が「共感」を生む
「共感」こそが『女性社長のココトモひろば』の最も重要なテーマ

   『女性社長のココトモひろば』は、先代経営者の逝去等に伴い、突然、経営のバトンを委ねられて戸惑う女性後継者たちが、同じような経験を持つ先輩女性経営者や事業承継経験者たちからの知見を得るとともに、「同じ目線」の「共感できる」アドバイスをオンラインで受けられるコミュニティサイトです。

   『女性社長のココトモひろば』では登録の有無に関わらず、誰でも投稿された話題やその話題に対するコメントが閲覧できます。投稿された話題には「わかる」「びっくり」「うふふ」「かなしみ」「ファイト」と描かれたアイコンが設けられているので、読み手は投稿したユーザーに対して「共感」の気持ちを伝えることができます。この「共感」こそが『女性社長のココトモひろば』の最も重要なテーマとなります。 そして、実際に事業承継した女性経営者のみを対象とするユーザー登録を行うと、過去に同じ経験をしたユーザーからアドバイスをもらえたり、他のユーザーの投稿に対してコメントを書き込むことが可能となります。自らの体験談を綴る先輩たちの言葉の一つひとつが、事業承継した女性経営者たちの知識にも勝る価値となって心に沁みてくるのです。

小橋:「今回の『女性社長のココトモひろば』を立ち上げたきっかけは、生命保険会社として保険金だけに留まらないサポートの提供を目指したものです。私たちは、保険金を迅速に支払うことを務めとしていますが、それに加えて、さらなる価値提供をしていくべきだと考えています。そこで、私たちは先代社長から経営を引き継いだ後継者の方たちにお時間をいただき、先代が亡くなった瞬間から1年くらいの間に起きたことを細かくヒアリングさせていただきました。その中で、先代社長(夫)から経営を引き継いだ配偶者(妻)や、父親から経営を引き継いだ子ども(娘)のみなさまの多くが悩みや不安を抱えていることがわかりました」

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   国内の女性経営者が占める割合は約8%。しかし、92%を占める男性経営者が亡くなったとき、その後の経営のバトンを女性が引き継ぐ割合は約4割(※)にも上ります。彼女たちの多くは経営やマネージメントの経験もないまま、大切なパートナーや父を亡くしたその瞬間から重要な判断を強いられることになります。しかも周囲に同じような境遇の人はほとんどおらず、相談する相手もいません。

※大手調査会社の資料に基づくエヌエヌ生命保険株式会社の試算


   現在、このような女性経営者を対象としたサービスは見当たりません。エヌエヌ生命保険株式会社は、中小企業のゴーイングコンサーンの観点においても、多くの女性の事業承継者が抱える悩みや不安、孤独を解消することは重要な課題であると判断し、新たなサービスの提供に向けて『女性社長.net』を運営している株式会社コラボラボの横田社長に協力を仰ぎました。

『女性社長.net』は、20代~40代を中心とした現役の女性経営者を対象としたオンラインサイトで、女性経営者に役立つ情報発信やイベント・セミナー開催などを通じて、女性経営者の悩み相談やサポートを行い、事業継続のための支援を行っています。

横田さん:「初めて小橋さんとお会いした時に、事業を継いだ女性経営者たちのサポートが必要であること、その意義を熱心に語っていただきました。私たちは女性社長支援や女性社長たちの事業継続支援のプロだと思っていましたが、その私たちでさえも見落としていた部分を小橋さんに指摘されたように感じました。これは興味深い取り組みだなと思いました」

  『女性社長.net』に登録されている女性経営者の多くは、ご自分の可能性を信じて起業された方たちですが、小橋が想定したペルソナは、突然の出来事に戸惑い、事業承継者としての覚悟もないまま、経営者となってしまった女性たちでした。

横田さん:「私たちにとっても初めてのことです。非常に責任の重い取り組みではありますが、その一方で、私たちの知見をきちんとお伝えすればお役に立てると思いました。そして、小橋さんの『一人でもいいから、困っている人の心を軽くしたい。そのヒントが見つかるコミュニティサイトにしたい』とおっしゃった言葉がとても印象的で、今回、ご一緒させていただく決め手にもなっています」

小橋:「ユーザー数を増やすのは簡単です。もっと広い範囲の人たちが使えるプラットフォームを作ることもできますが、それでは本当に届けたいと思う女性経営者の方に届きません。同じような境遇の方たちが集まれる場を作り、一人でも多くの方の心に刺さる価値を提供できるサービスにしていきたいと思いました」

同じ境遇の方たちの『私のときはこうだった』という経験を取り入れることが何よりの価値に
『女性社長のココトモひろば』にはリアルな声がたくさん詰まっている

   横田さんと小橋が『女性社長のココトモひろば』の立ち上げで心掛けたことは3つ。1つは、本当に困っている人たちが何を求めているのかをチームでとことん協議すること。2つめは当事者目線で寄り添うこと。そのために過去突然の事業承継を経験した女性経営者たちをアドバイザーとして迎え、立ち上げ時から積極的に意見を交わしています。今後、地方でも事業承継する女性経営者の数は増えることが想定されるので、地方都市で活躍するアドバイザーたちの意見を聞きながら、決して東京目線にならないように配慮もしています。最後は進化し続けること。1つの事象においても、女性経営者たちが抱える悩みや不安はそれぞれ異なります。女性経営者たちが求めていることを把握しながら、変化していくことも常に意識しています。

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横田さん:「事業を経営するということは、株主や金融機関がいたり、取引先、従業員、その家族たちの人生を背負うということです。そこで生じる悩みの深さたるや、ひと言でアドバイスできることではありません。でも、同じ境遇の方たちの『私のときはこうだった』という経験を取り入れることが何よりの価値になります。

ときに先輩方が自身の困っていることを書き込んでいる場合があります。悩みを口にするのは難しいこともありますが、書くことで自分が何に一番苦しんだのかに気づいたり、モヤモヤしていることがわかったりします。

   『女性社長のココトモひろば』は困った時に活用できる1つの手段です。 事業を継いだ方たちが愚痴や不安を書き込んだり、ちょっと疲れたなと思ったときにホッとできる写真を見るために訪れてもいい。『女性社長のココトモひろば』は“茶飲み場”のようなもの。時間があるときに気軽に立ち寄っていただけたら嬉しいです」

小橋:「経営者に万が一のことが起きたとき、非常に難しい舵取りのボールが、妻、もしくは子どものみなさまへ飛んでいくことは多くあります。しかし、多くの方はその可能性をあまり認識しておりません。それは現役の男性経営者の方にとっても同じです。仮に会社をたたむ、売却するとしても、誰かが一度は引き継がなくてはなりません。この可能性が最も高いのが妻であり、子どもたちです。保険等を通じ万が一への備えをいただく際には、是非このことも頭の片隅に入れておいていただければと思います」

   今後、『女性社長のココトモひろば』では、オンライン上でアドバイザーの話を直接聞ける機会などを積極的に展開し、将来的にはオンラインコミュニティでのつながりを元に、セミナーやお茶会などリアルなイベントの開催も検討しています。
   そして、この取り組みを進めていくなかで、事業承継した女性経営者たちをサポートする団体が少ないことに危機感を覚えた横田さんは、新たなチャレンジにも着手しました。

横田さん:「エヌエヌ生命保険にもサポートしていただいているのですが、新たに『女性のための事業承継ステーション』という場を作りました。これは、公的機関を含め、女性の事業承継を支援していく団体の横のつながりを育む場として活用していきます。また、積極的にアドボカシー活動にも取り組んでいきます。女性の事業承継が増えているにも関わらず、その存在はまだまだ見過ごされています。その現状を政府や自治体に知ってもらうために、私たちはさまざまな調査を行い、提言をあげていきます。そして、いろいろな団体と組みながら、女性の事業承継者たちが活躍できて、次にバトンタッチしやすい環境を作ることに真摯に取り組んでいきたいと思います」

小橋:「皆さんのまわりに事業承継で経営者になられた女性がいらっしゃいましたら、『こんなサービスがあるよ』とご案内していただけると嬉しいです。そして、女性だけではなく、現役の男性経営者の方たちにもぜひご覧いただきたい。『女性社長のココトモひろば』にはリアルな声がたくさん詰まっていますので、今後の事業承継に役立てていただけると思います」

「女性社長のココトモひろば」のサイトはこちらからご覧ください。

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