妻の一句に大盛り上がり! 経営者たちが夫の目線で語る、「妻への本音」座談会
経営者の心強いパートナーとして日々共に奮闘する“妻たちの心の中のつぶやき”を川柳として募るコンテスト『「夫が社長」妻のつぶやき川柳』を通して、経営者であり夫である3人に“妻への率直な思い”を語ってもらいました。
※この記事は「クロワッサンオンライン」から転載しています。(c)マガジンハウス2025
- 左・佐々木政充さん 株式会社コイシカワ 代表取締役社長
- ささき・まさみつ●父が創業した総合印刷会社を、2014年に引き継ぐ。事業をさらに拡げて印刷とともにデザインやウェブ制作などを行うクリエイティブ&マーケティング事業、アパレル事業を展開。妻、保育園に通う息子との3人家族。
- 中央・鷹木 創さん 株式会社テクノコア 代表取締役
- たかき・そう●2022年に起業し、テック系オンラインメディア「テクノエッジ」を運営。国内外の企業の情報発信、オウンドメディアの立ち上げから運営支援などのサポートを行う。妻、小学生の娘と息子、保育園に通う息子との5人家族。
- 右・木村友亮さん BISTRO M05 オーナーシェフ
- きむら・ともあき●2023年、新中野に本格的なフランス家庭料理を気軽に楽しめるフレンチビストロ「BISTRO M05(ビストロ エムゼロファイブ)」をオープン。会社員の妻と2人家族。
今年の受賞作品から紐解く“妻の気持ち”。夫たちの心に一番響いた川柳とは?
好評の『「夫が社長」妻のつぶやき川柳2025』の受賞作品が決定!第3回を迎えた今年は、経営者の妻はもちろん、その子どもたちからの応援川柳も含め2,000件近い応募が。くすっと笑えたり、ほっこりするようなエピソードから、普段面と向かってはあまり口にできないような言葉まで、さまざまな思いの込もった30点が入賞作品として選出されました。
そんな川柳を切り口に、自身も経営者で家庭を持つ3人が集まり、それぞれの心に響いた受賞作品について話し合ってもらいました。
- 鷹木 創さんベスト川柳
- 「訓示より 妻のひと言 よく響く」
- 選出理由:我が家でも妻が最高権力者です。よ〜く響いております。
まず、鷹木さんが選んだ川柳が、「訓示より 妻のひと言 よく響く」。
鷹木 創さん(以下、鷹木) どうしてこの川柳が心に一番響いたのかなと考えると、うちでは妻が最高権力者なので(笑)。うちは子どもが3人。送り迎えなども妻が全面的にしてくれていて、子どもたちも妻の言うことはよく聞く。それだけに家庭内での多数派工作がすごいんです(笑)。
木村友亮さん(以下、木村) 僕も、この作品は響きました。うちはお互いに思ったことはストレートに言うので、常日頃、妻の言葉に気づかされたり、新たな視点をもらったりしていて。妻には厳しいことも言われますが、ありがたく意見を頂戴しています。
鷹木 ちょっと本題から外れてしまいますが、木村さんはフレンチのオーナーシェフですよね。家に帰ってからも料理を? というのも、休日だけでなく、平日も家のことを手伝いたい気持ちはあるんですが、まだ起業して3年目でそこまでなかなか手が回らなくて。それに僕が細かいことにあまりこだわらない性格のせいか、たとえば、僕が皿洗いをして「このくらいでいいのかな」と思っても、チェックが入ってしまうんです。なので、うちは食洗機を導入しました(笑)。
木村 休日に趣味で料理を作るならいいんですけど、うちの店はランチもやっていて仕込みで朝は早いし、夜も営業が終わって家に帰るとだいたい深夜になってしまうので、疲れてしまい、もうまったく作れていない状態です……。家では妻が作ってくれていたものを温めて食べています。妻は会社員で職場にお弁当を持っていくので、僕にも昼食用のサンドイッチを持たせてくれていて、それもとてもありがたいです。
佐々木政充さん(以下、佐々木) 僕はこの川柳のような経験はないのですが、おふたりの話を聞いていて、夫婦の強い信頼関係があってこその作品なんだろうなと感じました。
木村 ただ、その「ひと言」、お手柔らかにお願いします、とは思います。もっともなことだと思いつつ、ぐうの音も出なくなることがあるので(笑)。
「妻といつかは一緒にゆっくり旅行をしたい」も本音です
- 佐々木政充さんベスト川柳
- 「社長の座 バトン渡して 夫婦旅」
- 選出理由:父は亡くなる年、僕に社長の座を託して友人たちと旅行を楽しむために、鉄道会社の旅行サービスに入会していました。父は一度も利用することができませんでしたが、僕もいつかは入会して、妻とふたりで旅行を楽しみたいものです。
佐々木さんが選んだのが、この「社長の座 バトン渡して 夫婦旅」。
佐々木 この川柳を読んだとき、父のことを思い出しました。
鷹木 この作品は僕も印象的で、No.2に選んでいます。
佐々木 この作品が心に響いたのは、僕は27歳で父の会社を継ぐことが決まっていたんですが、そのバトンを渡される2ヶ月前に父が急に亡くなって。父は社長を退任したら友人たちと旅行を楽しもうと思って、鉄道会社の旅行サービスに入会していたらしいんです。でも、結局一度も利用できなかった。なんだかそれがすごく心に残っていて。父と同じくらいの年齢になったら、妻とゆっくり夫婦旅に出かける時間を過ごしたいなと思って。
鷹木 うちの場合はまだ将来的に誰かにバトンを渡すのかどうかもわからないですが、たとえば今、妻と旅行に出かけたとしても、心のどこかで仕事のことを考えてしまう自分がいる。妻もそれを察して「旅行中だよ」「あ、ごめんごめん」みたいなやり取りになるのが目に見えるので、僕もいつかは妻と一緒に心ゆくまでのんびりと旅行を楽しみたいな、と。
木村 僕の場合はこれからもお店は自分ひとりでやっていくつもりなので、誰かにバトンを渡すことはないと思いますが、妻とふたりで長期休みをとって「いつかフランス旅行ができたらいいね」と話しています。なので、この川柳の“夫婦旅”に込められた気持ちはよくわかります。
鷹木 妻とゆっくり旅行に行きたい、は3人とも共通する本音ですね。
木村 妻は勤めている会社の有給休暇をとって、すでにひとりで近場の温泉に旅行に出かけていますけどね。そのときは「どうぞどうぞ」って、気持ちよく送り出しています(笑)。
「初黒字」に込めた妻の気持ちは、経営者である夫だったらわかるはず!
- 木村友亮さんベスト川柳
- 「初黒字 少しは私の 手柄かな」
- 選出理由:内装やメニュー、集客に関する戦略など料理以外のところで、妻の視点からアイデアをもらい今のお店ができました。妻は、店の黒字に大きく貢献してくれたと思うので、こちらを選びました。
木村さんが選んだ作品は、「初黒字 少しは私の 手柄かな」。
木村 僕が一番に選んだのはこの川柳です。
鷹木 この川柳を詠んだ妻の気持ちは、経営者である夫だったらよくわかりますよ。黒字達成、おめでとうございます!
木村 うちは結婚して10年経つんですが、妻と出会って付き合い始めたのは実は20年前。当時、まだ僕は料理の世界に入ったばかり。そこから長い修行時代を経て、2年前に独立。妻は、この店を開くまでの道のりをすべて知っているし、この川柳は率直に心に響きました。
友人には、「彼女と出会って結婚していなかったら、お店を持っていなかったんじゃない?」と言われるくらい、妻は大きな存在です。
鷹木 その木村さんの気持ちと言葉、奥さんにぜひ伝えないと。
木村 本当にそうですね。今はお店が軌道に乗ってきたので、少し安心してくれていたらいいんだけど。
佐々木 うちは、妻にイラストやグラフィックデザインを手伝ってもらうことはありますが、経営に関してはノータッチ。お互いに得意なことを任せ合っている感じですね。ただ、いつも精神面で支えてもらっているので、僕もこの川柳には共感しました。僕が父の会社を継いだときはまだ独身で、すべてをひとりで抱えるしかなくて。
夜眠れないこともありましたけど、妻と結婚して子どもが生まれてからは、いい意味で仕事じゃないことを考えられる時間が増えましたね。肩の力が抜けましたし、気持ちもほどけていきました。
鷹木 佐々木さんはお父さんの会社の2代目ですが、いつから自分でも継ごうと思ったのですか?
佐々木 小学校のときの卒業文集に、すでに「父の会社を継いで大きくする」と書いていましたね。
鷹木 すごい! 自分の子どもに会社を継いでもらうには、どう育てたらいいんでしょうか?(笑)
佐々木 父は、僕が3、4歳の頃から自分の友人たちに「うちの2代目だ」と触れ回っていました。周りから固めていくのがいいと思いますよ(笑)。
鷹木 うちは、夫婦でよく「自分たちは子どもに何を残してあげられるのか」みたいな話をすることがあります。本当に継がせるかどうかは別にして、「何かあったときの、子どもたちの人生の選択肢のひとつ」になるなら、将来的に会社を残すことは意味があるかなと思っています。
佐々木 自分の子どもを持った今考えてみると、父は「僕にとって会社を継ぐのが最善の幸せにつながる」と思ったからこそ、継がせたいと思ったんじゃないかな。自分の子どもの将来については、「サッカー選手を目指してスペインに留学してくれたらいいなあ」と思っていたり……っていうのは冗談で(笑)。
「感謝の言葉」は、日頃からもっと口に出すべきですね
今回の川柳を通して、それぞれのパートナーへの思いを語り合った3人。
木村 自分のお店を持つことは、妻もずっと応援してくれていましたが、今日みたいに改めて振り返る機会があると「よく付いてきてくれたな」と思います。妻には足を向けて寝られないです(笑)。
鷹木 うちは、僕と妻は得意なものがまったく違うので、完全に棲み分けができていて。僕は書類仕事が苦手だけど、妻は効率を追い求めるのが得意なので、会社の事務をお願いしています。が……改めて振り返ると、今までしっかりと感謝の言葉をかけたことがなかった気が。「気持ちをしっかり伝えたほうがいいな」と思いましたね。
それに世の中の経営者の妻は「こんな風に思っているんだ」ということを川柳を通して今回初めて知って、「意外とうちの妻もこういうことを考えていたりするのかな」と気づくきっかけになりましたね。
佐々木 僕も今回の川柳作品から、「世の中にはいろいろな夫婦の形があるんだな」と感じました。夫婦間だと忙しさにまぎれてタイミングを逸してしまうこともあるかもしれないけれど、「感謝しかない」という気持ちは、もっと声に出して妻に伝える必要があると思いました。
家族同様に頼れる場所、「つぐのわ」
NN