葬祭事業者の探し方
~4つのステップとその役割について~
ひだまり手帳 合同会社 代表社員 増井康高
家族の死を経験し大手互助会に入社。葬儀部門のみならずWEB担当・システム担当などを経験。WEB受注を中心とした葬儀社を設立、DXで効率運営を行う。葬儀担当として25年で2500件以上。
2021年「デジタル終活グループ」を運営(登録者約2000人)。業界の展示会や仏教宗派の本山などでも講演、執筆活動も行う。現在相続終活ポータルサイト「ひだまり手帳」運営。事業者向けに有料オンラインサロン運営。
葬儀社選定における「実績」確認とは
過去の記事で、葬儀を行う理由と、そのために確認しておいた方がいいことについて書かせていただきました。今回は「葬儀の専門家・葬祭事業者の選び方」となります。
まず一般的に、葬祭事業者とコンタクトをとるのは、大切な方を亡くされた“その時”です。しかし、これまでご案内の通り、「生前」に選んでおくことをお勧めしますが、そこには注意点が多々あります。
特に企業・団体葬に関しては多くの人と関わる可能性が高いため、気を付けるべき点が増えます。
企業・団体葬の事業者探しの大切な注意点は一点しかありません。
ずばり「実績」です。
過去の経験値といってもいいかもしれません。
葬祭事業者はネット検索すれば数多存在します。しかし中身は千差万別です。
その確認が最も重要となります。経験のない事業者に依頼するとスムーズに運ばないことになってしまうのです。
葬祭事業者を探す上で一番重要な基準を先にご紹介しましたが、そこにたどり着くまでにいくつかプロセスを経るといいと思います。こちらは一般的な葬儀社選びと変わりません。
探し方は、以下の順番で行っていきましょう。
- ①信頼できる知人・友人の葬儀社に聞いてみる
- ②信頼できる知人・友人で最近葬儀を執り行った人に聞いてみる・もしくは信頼できる知人友人に知り合いに葬祭事業者がいないか聞いてみる
- ③近隣の葬祭事業者複数社に問い合わせてみる
- ④インターネットで情報収集する
①信頼できる知人・友人の葬儀社に聞いてみる
葬儀は家族や一族の内情を、企業団体葬は会社の内情をお話ししなくてはなりません。とは言え、パッと信頼できる相手を探すのは難しいと思います。
信頼できる知人・友人が葬祭事業者もしくは関連する事業者(宗教者や供養関係・相続関係事業者)がいれば、ひとまずは気軽にご相談してみましょう。
もちろん「信頼できる」というのは、もしマッチしなかった場合「お断りできること」も含まれます。当然ですが信頼できない知人・友人は①には含まれません。
②信頼できる知人・友人で最近葬儀を執り行った人に聞いてみる・もしくは信頼できる知人友人に、知り合いに信頼できる葬祭事業者がいないか聞いてみる
こちらを選ばれる方は恐らく、①に該当しない方が多いと思います。一般的に①に該当する方は多くありませんので、安心してください。
信頼できる知人・友人で、最近葬儀を執り行った人に聞いてみることをお勧めします。「こんなことで困った」・「こんな時不安だった」など問題・課題の共有もできますし、執り行ってくれた葬祭事業者をお勧めしてくれるかもしれません。
もちろん企業団体葬ではなく、一般的な葬儀をされた方でも構いません。
もしくは信頼できる知人・友人の知り合いに「信頼できる葬祭事業者」がいないか聞いてみるのも、手段としてはよろしいかと思います。
③近隣の葬祭事業者複数社に問い合わせてみる
実際には、上記①②に該当する方はとても少ないと思います。
知人・友人はいても、葬儀については「なかなか言いにくい」内容でもあり、完全なる信頼を寄せている方が「たまたま葬儀をされた」なんてことは稀かと思います。
③からは現実的な路線となります。
普段は意識していないと見過ごしているかもしれませんが、ご近所に葬儀社は複数存在します。電話帳を見たり、ネット検索をしてみたり、「そう言えば、あそこに葬儀社があった」とふと思い出すケースもあるかもしれません。
よくよく周辺の街の看板など思い出してみてください。あまり思い出せない方は、ぜひこれから意識し始めてみてください。近所にある葬儀会館や看板などが自然に目に入ってくると思います。
見つけたら、まずはメールもしくは電話をしてみてください。資料請求してみるなどもよろしいかと思います。
もし、その際のメールの返信スピードや対応、電話応対に不快と感じられたら、「またご連絡します」と一旦切って問題ありません。
葬祭事業は「人的サービス」ですので、実際の担当者が信頼できると安心感はぐっと増します。そこで「面談」することをおすすめします。(こちらは①②でも同様ですが、)会ってお話ししたり、難しければテレビ電話など、顔の見える状態でご相談してみましょう。
空気感・雰囲気なども信頼感に重要なファクターとなるため、先方に出向くことをお勧めします。葬祭事業者のスタッフの対応や、会場の清掃が行き届いているかなども確認できます。
これは、家に来ていただいてお断りすることを苦痛に感じる方にもお勧めです。
また、とても大変なことですが、可能な限り複数社訪ねてみてください。その際のチェックポイントは「質問しやすい相手」・「話しかけやすい相手」であるということ。
そもそも葬祭事業者というのは、従事者と消費者に遭遇する機会の隔たりが広い業界です。「説明がうまい」のは専門家として当然ですし、会社によっては担当者ベースで話した内容に齟齬が発生してしまうかもしれません。
本当にその日「対応してくれた方」が、当日も執り行ってくれるのかなども質問しておくことも重要です。
複数社訪問し、信頼できる人に何人か出会えたら、「実績」・「提案内容」・「価格」などの比較を行い、決定する流れになります。
④インターネットで情報収集する
①~③のプロセスを経ると、恐らく葬儀について少し詳しくなっていませんか?そのうえで、インターネットで情報収集をしてみてください。
もし最初にインターネットで検索をしていても、何もわからず数字やホームページのデザインに惑わされてしまいがちです。
①~③で探すのが難しい方は、インターネットで価格比較し、候補を数社見つけて、資料請求や対面相談をしてみてください。
専門家である葬祭事業者が「ワンストップ」ですべて行ってくれるかどうかも、重要な選定ポイントです。葬儀の後の挨拶回り、各種役所などの手続き、相続などの手続き、お墓やご納骨の準備、法事、お香典返し…などご家族は大忙しになります。
関わる人が多い社葬はなおさらです。それらのサポートをしっかりしてくださる事業者であるかの確認も必要です。
葬祭事業者の役割とは
例えば社長である夫が他界されたとします。多くの方は、夫と結婚されてからずっと、同じ時間・空間を過ごしているかと思います。
つまり、妻の皆さんにとって夫の他界というのは、夫がこの世に存在しない世界にはじめて触れる日ではないでしょうか。言い換えれば、お葬式の当日は夫のいない家族がスタートした瞬間です。
社長である夫が支えてきたであろう家族・会社のカタチが新たに歩み始めた日…そしてその最初の取り組みがお葬式の日です。
家族や親族、一族、社員が新しく歩み始める最初の日がお葬式ですから、そこに立ち会い「家族の新しいカタチ」を見定め、各々が人生を歩んでいく礎となる、と私は思っています。
「あなた」と「わたし」にしかわからない世界。
直接的であろうと間接的であろうと、その場にいる方々には大切な方との思い出があります。例えば、大切な方がご自分のおばあ様であれば直接的な思い出であり、友人のおばあ様であれば友人を経由しての思い出があるかもしれません。
互いの思い出は本当の出来事のこともあれば、話し方や符牒的なこと、空気感など、その「二人」しか共有していなかったこともあります。
「それが永遠にわたしだけのものになってしまった。」
そうなった事実を受け止め、受け継いでいく。
お葬式に行ってお顔を見て、お別れを告げる時はじめて、その事実とともに受け取る。
きっとその承継は残された方の人生にとってかけがえのないものに違いないでしょう。明日からまた歩んでいくための「なにか」になるのだろうと、私は思っています。
「社葬」など企業団体葬だと、更にわかりやすいでしょう。お葬式は企業の創業者の方から様々承継する場としても、執り行われます。
そしてその基盤や人脈なども引き継ぐため、先代がいなくなっても企業としての「安泰」を示す場でもあります。
「空間と時間を共有する」
前述のとおり、承継の場であるお葬式。その多くは宗教儀礼であることが多いです。
代々の送り方に習うことで、一族の心の安寧を得ることができると考えます。きっと形式があるということは安心感につながるのでしょう。
あくまで機能的なことであり、意義などには触れません。私は宗教者ではないのであいにく具体的なことはわかりませんが、ただわたしたちは今日(こんにち)まで様々な工夫をして、若干の強制感の中で「空間と時間を共有する」ことで弔いを成立させてきました。
また今日(こんにち)まで、残された皆様と、大切な方と空間や時間を共有することでお葬式を営み、承継を行ってきました。それが今日(こんにち)、パンデミックなどの影響で、空間と時間を共有することが少々難しい時代を迎えております。
「わたしたちの承継はこれからどのように行っていくか?」
そこを考えることが、現代における私たち「葬祭事業者の役割」なのだと私は思っています。
この記事のポイント
- 葬儀社選定には「実績」の確認が重要
- 知り合いからの紹介や、インターネットで見つけた葬儀社でも、顔の見える状態で相談してみて、空気感や雰囲気も感じ取る
- 「お葬式」という装置は家族の承継、会社の承継に適している
※本記事に記載の情報は2023年12月26日現在のものとなり、将来変更となる可能性があります。