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経営者の妻のための情報サイト つぐのわ

来るべき「突然」備えて-「経営者の妻」として今、もしものときのために確認しておいた方がよいものとは?

ひだまり手帳 合同会社 代表社員
増井康高

家族の死を経験し大手互助会に入社。葬儀部門のみならずWEB担当・システム担当などを経験。WEB受注を中心とした葬儀社を設立、DXで効率運営を行う。葬儀担当として25年で2500件以上。
2021年「デジタル終活グループ」を運営(登録者約2000人)。業界の展示会や仏教宗派の本山などでも講演、執筆活動も行う。現在相続終活ポータルサイト「ひだまり手帳」運営。事業者向けに有料オンラインサロン運営。

画像:PIXTA

ポケットの中の世界

人類はインターネットの普及から、ポケットの中に入れられる電話とパソコンを掛け合わせたような「スマートフォン」というデジタルデバイスを得ました。スマートフォンの出現により、パーソナルなコミュニティへの参加がスムーズになりました。

また「メタバース」など、よりネットの世界と実社会の障壁や差異が少なくなり、コミュニティへの参加はおろか、コミュニティ=世界を気軽に誰でも毎日でも構築できる社会が目の前に広がりつつあります。

家族であってもパートナーであっても、その関係性はもっとその方にとっての「世界の一部」になっていくことでしょう。これはテクノロジーの進歩によって「より早く」・「より正確に」、とてつもない量の世界が誕生するだけで、根本の人間社会では変わってないように思います。

家族内での立場でも職場における立場でも、みな「役割」を演じます。ひとりの人間でも「親」もかつては「子」であり、「姉」であり「妹」である人もいるでしょう。「いとこ」という役割を演じることもあります。職場では役職、所属コミュニティごとの役割や立ち位置を微妙に演じ分けながら、うまく立ち回り生活しています。

更に今現在でも、SNS上に無数に存在する一人の人間の「役割」を演じています。その差分を明示するのならば身近と言われている人が想像できないケースが増えています。あくまでもスマホの中の世界で目視が難しいためです。

画像:PIXTA

「世界」とのお別れ

30歳で、病気で他界した友人がいました。葬儀は私が担当しました。仲の良かった私にとって参列者の同年代は殆ど知人であるはずなのに、3人全く顔を見たこともない方が存在していました。私は担当者である立場を利用して彼らに近づき関係性を問うたところ、いわゆる”ソーシャルゲーム”仲間、オンライン上のゲームの友人でした。

亡くなった友人と私はリアルな社内での友人ですから、そう頻繁にやりとりするわけではありません。しかし彼らはリアルで会ったこともないのに、毎日やり取りがあったのです。

友人の病気が進行するのを目の当たりにしていた私よりも、毎日やり取りしていた「自分の世界」の友人がその「突然の死」に、とても深い悲しみにくれていたことを記憶しています。もしかしたら私の知らなかった彼らの「世界」では、今でも私の友人は存在し続けているかもしれません。

前回「葬儀はコミュニティとのお別れです」とお伝えしました。そのお別れはたくさんのその方の人生を彩った人間関係ごとに存在します。もしかしたら喪主という役割はその空間......"場"の提供が主たるところなのかもしれません。

お別れの場の提供を行うことこそ遺族の役割である、そこで遺族は故人の社会的な情報を得て、大切な方の生涯はどんなものであったかということを再定義するということを獲得するのでしょう。これからの時代、メタバースなどが存在し始めると、もっと現実社会との格差がなくなり、ネット空間もお別れの場の一つになるかもしれません。

あなたの大切なあの方も、きっとそんなコミュニティで世界を築き、ずっとそのコミュニティが記憶している限り存在し続けるのかもしれません。

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企業での葬儀について

通常、社葬など団体で取り仕切る「お葬式」はその色が強めです。個人の人間関係に含まれる会社の代表としての役割が色濃く表現されるお葬式になります。どうしても会社と会社のつながりから参列される方が増えるためです。

そしてそれを引き継ぐ体制が先代を引き継ぐに値するかという、企業の再定義が評価される場とも言えます。ここは一枚岩となって乗り切らねばなりません。

この場合における会社の中枢は、総務的な業務をつかさどる方がなると考えます。喪主になる可能性のある方が事前に準備する際は、総務的な立場の方とコミュニケーションをとるということは必要不可欠です。

総務的な立場の方の意識の高さが、「お葬式」という大きなプロジェクトに影響を及ぼします。総務的な立場の方が事前にどれだけ調べることができるか、常日頃から意識して情報収集できるかが重要です。具体的には法的な顧問の先生がいらっしゃると思いますから、予め業務分担をお聞きすることになります。

総務的な立場の方が、どこまでが会社がやることで、どこまでを先生に依頼できるのか、家族の負担をどのように減らせるか、などを確認しておきましょう。それだけで随分準備は進んだことになります。

企業に限らず団体で執り行う葬儀はその団体が決済します。しかし最終決裁者が他界した状態になってどのようなフローで社葬という高額の決済を行うのかということを確認しましょう。臨時株主総会を開催して、議事録を作成して......などが、もしものとき突然やってきます。

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実際に「今」行っておいた方がよいこと

続いて招待客の選定です。
「誰を呼ぶのか」ではなく「誰を呼ばなくてはならないのか」が重要です。特に来賓はどうするか...順序はどうするか...どのようにお知らせをするか...様々です。

これからの会社にとって優れた判断をしなくてはならないのに、「もしもの時」でいいでしょうか?よく考える時間が必要ではないでしょうか?「順序なんて...」と仰る方もいますが、その順序を間違えて一家離散にまでなってしまった例も、残念ながらあるのが実態です。
同じ距離感にいらっしゃる来賓の順序をどうするか...とても重要な問題です。

さて葬儀の儀式についてです。
葬儀のスケジュールはすべて通常、「宗教者」・「葬儀開催場所」・「火葬場」の都合の調整により執り行われます。その三項目すべてが「もしもの時」しか決定することができません。
しかしながらスケジュールの決定はできませんが、準備したり、下見することはできるはずです。

私はまず宗教者(僧侶など)にご相談することをお勧めします。
日本では、お葬式は文化として、またご先祖様代々をお送りしてきた方法に従って執り行われてきましたので、たくさんの方が納得できるカタチで進める社葬などは、それに則る方が間違いが少ないと考えます。

日本のお葬式は仏式で行う方が多いので、仏式のお話を例として用います。仏式の儀礼を取り仕切るのは「僧侶」で、代々決まったお寺がある場合(檀家)は、そのお寺の僧侶に相談します。つまり、「代々決まったお寺」というのはそのお寺にお墓があるかどうかという意味です(厳密には違うようなのですが、だいたいそのケースが多いです)。

そのお寺にお墓があると、そちらにご納骨されると思います。するとお寺の宗教的なルールに則った運用を余儀なくされますが、お寺は宗教施設ですから、ご利用される方はその宗教のある種「信者」であるということなるわけです。その為、その教えに従った運用を求められるのも自然であり、経験の少ない無知な私たち(もちろん私は宗教者ではないので、私も含まれます)は、宗教者の方の教えに従い、葬儀は進行されるのです。

少し大袈裟かもしれませんが、もちろんこちらの「すべて」の要望を遮断されるわけではありません。適宜相談もできますので、予めコミュニケーションをとり、関係性を構築しておくと、その「突然」に備えられると考えます。

次の事前準備のおすすめは「開催場所」です。火葬場は開催場所の近隣という理由で確定されるもので、専門家に頼りたいところです。宗教者のご指示がない限り、自ら選定することになります。

参列者数にもよりますし、前回述べた密葬からお別れ会の場合は「二回行う」などもありますが、あまりカタチにとらわれず、まずはいくつか葬祭事業者をピックアップして、相談してみましょう。

筆者の経験から、最も「確認しておいた方がいいもの」は自分にとって最適な専門家との出会いであると考えます。
次回はその葬儀の専門家、葬祭業者の選び方です。

※本記事に記載の情報は2022年12月31日現在のものとなり、将来変更となる可能性があります。

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