カフェ「つぐのわ」
~夫に隠された過去が…!?前妻との間の子がいるときの生前対策~
監修:一般社団法人 緊急事業承継監査協会
代表理事 伊勢田篤史
ここは、中小企業経営者の妻が集う、カフェ「つぐのわ」。今日も悩みをもつ妻たちが、カフェを切り盛りしている陽子にアドバイスを求めてやってきましたよ。
登場人物のご紹介
陽子
カフェ「つぐのわ」のミストレス(女主人)を務める。
おしゃべり大好きで世話好きでおせっかい。一度お店に来たお客さんの顔や話をすべて記憶している接客のプロフェッショナル。
カフェ「つぐのわ」は、コーヒーも美味しく、陽子が親身に相談に乗ってくれると評判で、経営者の妻を中心に常連客が多い。
真由美
不動産会社経営者の妻(50歳)
つぐのわの古くからの常連客。子どもたちが、やっと独立してほっと一息...という矢先に、妹のことで頭を悩ませることに。
見知らぬ相続人がいたら...
陽子
いらっしゃいませ、あら~どうしたの、暗い顔しちゃって...
あ、もしかして、例の件、隠し子がいたの~?
真由美
あああ~陽子さん、私はどうしたらよいの...
陽子
あらあら...とりあえず落ち着いて。ひとまずコーヒーでいいかしら。
真由美
はい...ありがとうございます。ちょっと落ち着きます。
陽子
ちょっと待っててね...
真由美
はぁ...にしても、私はどうしたらよいのでしょう。
なんか、不安で不安で夜も眠れないんです。
陽子
で、ところで、結局どうだったのよ?戸籍調べたの?
真由美
はい、そしたら、従前戸籍の戸籍筆頭者が夫の名前になっていまして...
で、何気なしに、夫に聞いてみたんです。そしたら...
陽子
そしたら...?
真由美
「あ~きみとは再婚だよ。伝える機会をずっと逃してしまってね」ってあっけなく。
「子どもが2人いたけど、ちゃんと養育費支払ってるし、もうここのところ音信不通状態だよ」だって...
陽子
前妻の子がいたパターンなのね。
まぁ、隠し子で認知してたっていうパターンじゃなくて、ある意味ではよかったわね。
真由美
いや...よくはないですよ。
陽子
死後に、隠し子を認知していたことが発覚したパターンを聞いたことがあるからつい...ごめんなさいね。
真由美
死後に、隠し子発覚なんて…なんかもう修羅場でしかない...
で、陽子さん、私はどうすればよいですか?
ある意味、夫が死ぬまで知らなかった方がよかったのかしら…余計なことをしてしまったのかも...
陽子
そんなことないと思うわ。
事前に知れたからこそ、取りうる対策もあるのだから。
真由美
え、だって前妻のお子さんも相続人になっちゃうんですよね?
夫に死なれたら、ただでさえ会社のことだって分からないのに、妹の時みたいに、「あれよこせ」「これよこせ」って権利主張されたら、もうパニックになっちゃいます...はぁ...
陽子
確かに、事前に何も対策を打っていなければ...そうなっちゃうわよね
真由美
え?本当に、何か手があるんですか!?教えてください!
その前に、チョコレートケーキください。
陽子
事前対策の前に、対策しないとどうなるのかを押さえることが肝心ね。
そもそも、何故相続が揉めちゃうか分かる?
真由美
え、みんなが感情的になって権利主張するからですか?
陽子
そうね。それもあるけど、ポイントは相続のルールなの。
真由美
相続のルール?
陽子
故人の遺産を相続する際は、相続人全員で「故人の遺産をどう分けるのか」を話し合って、全員一致で取り分を決めないといけないルールなのよ。
真由美
「全員一致で取り分を決める」というのが、ポイントですか?
陽子
ご名答!
相続の場合、この「全員一致」ルールが問題をややこしくしてしまうのよ。多数派が納得している「分け方」であっても、たった1人でも納得しない人がいれば、まとまらなくなってしまうの。
真由美
はぁ...そりゃあ、こちらに有利な「分け方」であれば、前妻のお子さんも納得しないでしょうけど...
陽子
例えば、銀行預金については、相続人が全員一致して「分け方」に納得していますよ、という書類を出さないと、引き出せなくなってしまうのよ。
真由美
えええ!いつも普段の生活費は夫の口座からも使ってるのに...ダメなんですか!?
陽子
ご主人が亡くなってしまった後も、銀行が死亡の連絡等を受けて口座を凍結しない限りATMから引き出すことは事実上できてしまうけど、あとで余計なトラブルを生むことになってしまうからできる限り避けた方がよいわね。
まぁ、葬儀代云々で必要だからって勝手に引き出しちゃうケースもあるけど...本来は、銀行に死亡の連絡をして、所定の手続きをして払戻しをしてもらう必要があるわ。
真由美
そりゃあ、前妻のお子さんからすれば、勝手に預金から引き出したって文句言いたくはなりますよね…はぁ、どうすればよいのよ...
陽子
もし今できることがあったら、やっておきたいでしょ?
実はさっきの相続のルールに対して事前にできる対策があってね...
真由美
そんなことがあるんですね!!!教えてください!
その前に、コーヒーもう一杯いただけないかしら。
陽子
はいはい...
真由美
で、どんな対策ができるんですか?!
陽子
...この「全員一致」で「取り分」を決める必要がなくなる方法があるの。...知りたい?
真由美
知りたいです!!!
だって、「全員一致」で「取り分」を決めないといけないから「揉める」のであって、「全員一致」で決める必要がないのであれば、「揉める」必要がないってことですよね?
陽子
そうね...正確には別の要素で「揉める」可能性はあるのだけど...まぁ、それは措いておいて...遺言って聞いたことある?
真由美
あー遺言書ですね。よくドラマで、金持ちのおじいちゃんが亡くなって、弁護士が来て...ってありますよね。あ~ゆ~ドロドロしたのが、わたし大好きで...
そうか!遺言書に、「妻にすべて相続させる」って書いてよいのか!
陽子
他人事だと、ドロドロも楽しいわよね...
ご主人に遺言書を書いてもらい、遺産の「取り分」を決めてもらえば、わざわざ相続人が「全員一致」で「取り分」を決める必要はなくなるわね!
真由美
じゃあ、早速夫に遺言書を書かせてきます!
陽子
遺言書って、なかなかハードルが高いけど書いてくれるかしら?
真由美
とりあえず、「対策しないと大変なことになる」って陽子さんから聞いたから、対策してよ!って強く言ってみたいと思いますが...
確かに、強気に出るとへそ曲げるかも...また新しい悩みの種か...
※本記事に記載の情報は2022年6月15日現在のものとなり、将来変更となる可能性があります。