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私たちの事業承継#特別編
パネルディスカッション開催!


パネルディスカッション写真①

株式会社クリエイトエンジニアリング 代表取締役 宅野 宏さん プロフィール写真

株式会社クリエイトエンジニアリング 代表取締役 宅野 宏さん


1960年山口県出身。関西学院大学卒業後、大手食品商社を経て、1991年にクリエイトエンジニアリングに入社。1998年に同社の取締役に就任し、2014年1月に先代の逝去により事業を第三者承継した。
システム設計・構築のほかシステム導入支援や運用支援および保守など手掛けており、システム関連の全般的なコンサルティング行うなど業務の幅を広げている。

株式会社イーグルメンテナンス 代表取締役 佐藤 健一さん プロフィール写真

株式会社イーグルメンテナンス 代表取締役 佐藤 健一さん


1970年北九州市出身。早稲田大学を中退後、学生時代からアルバイトをしていたビルメンテナンス会社エヌ・イー・エヌ(現イーグルメンテナンス)に就職。2010年に営業全般の責任者として同社の取締役に就任し、2016年4月に先代の入院を機に事業を第三者承継(従業員承継)した。 現在はオフィスビル、ショッピングセンター、商業店舗、病院、分譲マンションなどの事業系施設において、建物清掃業務全般を受託している。

有限会社古田商会 代表取締役 古田 千賀子さん プロフィール写真

有限会社古田商会 代表取締役 古田 千賀子さん

1957年岐阜県出身。先代である旦那さまが1980年に事務用品の販売会社、古田商会を開業し、経理などを務める。2016年5月に創業者である先代が逝去すると事業を承継した。
先代の「お客さま第一主義」の意思を引継ぎ、先代が作り上げた取引先やお客さまを守り続けている。

株式会社吉澤相続事務所 代表取締役 吉澤 諭さん プロフィール写真

株式会社吉澤相続事務所 代表取締役 吉澤 諭さん

大学卒業後、信託銀行、独立系財産コンサルティング会社、銀行で個人富裕層・中小企業オーナーを対象とした相続対策・事業承継・遺言・不動産に従事。
2014年4月、株式会社吉澤相続事務所を設立。豊富な実務経験を活かし、「答えを出す」をモットーに『相続・事業承継』に特化したコンサルティングをおこなっている。


突然の事業承継にまつわるエピソードをお聞きする「私たちの事業承継」。
今回は特別編として、これまでに「私たちの事業承継」にて自らの体験談をお聞かせいただいた方々にご参加いただき、パネルディスカッションを開催いたしました。進行には「相続・事業承継」に特化した コンサルティング会社を経営されている吉澤 諭先生をお迎えし、専門家の立場から皆さんのお話を聴いていただきました。

―先代が急死。"私たち"は、予期せぬ承継へ

吉澤: こちらの御三方は突然先代がお亡くなりになり、予期せぬ承継をされた方々です。 実際にその時の苦労やどんなことに気をつければよかったのかなど、生の声を聞く機会がありませんので、伺っていきたいと思います。 宅野社長は5年前、先代が急に亡くなられたのですか?

宅野: そうですね。先代は余命宣告されていました。半年から1年は猶予があるのでその間に引継ぎをしようと話をしていました。 まさにその矢先でしたね。

吉澤: 会社での立場はどうだったのですか?後継者として「会社を継ぐんだ」という意識はありましたか?

宅野: 会社では取締役という立場でした。先代にご子息はいたのですが会社におらず、私がナンバー2として営業と兼務していましたので、 私しかいないとは思っていました。

吉澤: 古田社長もご主人が突然亡くなられたのですか?

古田: そうですね。普通に配達の仕事をして、夕方に倒れそのまま翌日亡くなってしまいました。

吉澤: 持病などがあるとか、承継に備えているようなことはあったのですか?

古田:  亡くなる10年以上前に病気をしていましたが、うまく付き合っていましたので突然亡くなるとは全く思っていませんでした。 何かを備えるようなことは全くしていませんでした。

吉澤: 佐藤社長も突然先代が亡くなられたのですか?

佐藤: そうですね。先代から肝臓の数値が悪く検査入院してくるという話があり、そのまま退院することなく2カ月で亡くなってしまいましたね。

吉澤: 検査入院のつもりで入院して2カ月ですか。当然引継ぎも何もないですよね。会社を継ぐという意識はありましたか?

佐藤: 先代とは20年以上一緒にやっており、私が取締役兼営業責任者でしたので、継ぐのだろうなというイメージはありました。 ただ、具体的な話をする機会はがないままに始まった状態でしたね。

株式会社イーグルメンテナンス 代表取締役 佐藤 健一さん 写真

―決算書や申告書は見ていたのか

吉澤: 続いての質問ですが、中小企業でオーナー以外の方が取締役の場合、会社の決算書や申告書などを実際に見ていたかを伺いたいと思います。 佐藤社長はいかがでしたか?

佐藤: 年に1回はみていました。先代は月次の締めを全くやらない方でしたので中身はあてにならないのですが、数字が真っ赤でしたのでこれはまずいなとは思っていました。

吉澤: まずいとは思っていたのですね?

佐藤: 思っていました。ただ、先代に改善のお願いをしても手を打ってはくれませんでしたね。決算の度にお願いはしていたのですが、最後は怒られちゃいましたね。

吉澤: 親族でもないですし、ある意味で部外者的なところがありますからね。宅野社長はいかがでしたか?

宅野: 売上と利益を口頭で聞かされるくらいで、借入額など詳細についてはわかりませんでした。私自身が経営する立場であるものの実際のオーナーではありませんので、興味がなく自分に与えられた仕事のみ無事に遂行できることしか考えていなかったということもありますけど。

吉澤: 古田社長は先代の妻でありながら会社のパートナーでしたけどもいかがでしたか?

古田: 月次でやっており夫婦で話し合っていましたので会社の経営が苦しいという状況は把握していましたね。

―株式の相続はどのようにしたのか

吉澤: 会社は誰のものかというと、株主のものですよね。古田社長はご主人が株をもっていたので相続権があります。一方で、宅野社長と佐藤社長は親族外ですので遺言がない限り株は相続できません。宅野社長は先代から遺言などがあったのでしょうか?

宅野: それはありませんでしたね。ただ、遺言ではなくメモ書きのようなものはありましたね。本人が書いているものではなく奥さんが書いたものでしたけど。

吉澤: 気持ちは伝わるが法的には無効、となってしまうものですね。佐藤社長はいかがですか?

佐藤: ありませんでしたね。ただ私の場合、先代とは入院中に会話をするチャンスがあり、「会社を引継ぎますからあとは任せてください」とお伝えし、債務超過でしたので株式を1株1円で生前に譲渡して頂きました。

吉澤: 佐藤社長は先代がお亡くなりになる前に買い取られた。宅野社長は生前に買い取られたわけではないのですよね?

宅野: そうですね。遺族の方と話し合いをしながら買い取りました。遺族からは「会社経営に関しては全く興味がないので株を買い取って欲しい」ということと、「会社設立して30年やっていましたので退職慰労金が欲しい」と言われましたね。

吉澤: 長年されてきた功労の対価ということはあるのでしょうけど、会社としては無い袖はふれないわけじゃないですか?

宅野: そうですね。決算書をみても累積でマイナスでしたので、「お支払はあまりできません」と説明をして。最後は遺族の方と一緒にこられた弁護士と税理士の方が専門家として支払いは無理だと判断され、無茶なことは言ってこなかったのは助かりましたね。

株式会社クリエイトエンジニアリング 代表取締役 宅野 宏さん 写真

―なぜ、最終的に継いだのか

吉澤: 宅野社長も佐藤社長もどちらも会社が債務超過の状態であった。そうするとなぜ継いだのかが疑問になってきます。いったん会社をたたみ、新しい会社を作るという手もあったかと思いますが、どうして継がれたのでしょうか?

宅野: 会社を新しく作るのも手なのですが、当社は今36期目です。中小企業のIT会社で36期続いているということは信用に繋がります。新しい取引先からは信用調査がありますので、実績を買ったというところが正直なところですね。

吉澤: 天秤にかけて継いだということですね。佐藤社長はいかがでしょう?

佐藤: 宅野社長と同じなのですが、当社も31期目に入ります。法人の取引がありまして、与信を考えたらゼロからはじめると正直継げるかどうかわからないというのがありました。 あと学生時代からアルバイトとしてずっと一緒にいまして、奥さんを含めて家族みたいなところもありましたので、借金もあるしバイバイとは、人間としてできないところがありましたね。 一方で会社の営業責任者として売上と利益を把握していましたので、管理さえできればできるとも思っていました。とてもひどい経費の管理をされていましたので。

吉澤: どんな経費の使い方をしていたのですか?

佐藤: 細かい話ですけど携帯電話の回線ですね。辞めた社員の回線が何十本も残っていました。請求書と明細書を洗ったら、携帯代だけで年に50万~100万円くらい余計にかかっていました。

吉澤: 宅野社長はいかがですか?無駄な経費のようなものはありましたか?

宅野: ありましたね。知らない社員が2人いて給与を支払っていました。

吉澤: 幽霊社員がいたということですか?

宅野: そうです。辞めてもらう話をするのが大変でした。

株式会社吉澤相続事務所 代表取締役 吉澤 諭さん の写真

吉澤: それは大変だったでしょうね。古田社長は相続財産として株や不動産があったかと思いますけど、他に財産などはありましたか?

古田: 私も両社長と同じように経営が苦しく相続財産がマイナスでした。マイナスなのはわかっていましたから、息子たちにもすぐ相続放棄させましたね。

吉澤: 宅野社長と佐藤社長は親族外ですので継ぐか継がないかという選択肢が一応ありますけど、古田社長はないですよね?相続を放棄するという手もあったと思いますけど、やめるという選択肢はなかなかできないのではないでしょうか。

古田: そうですね。当社も業歴38年でお客さまから「続けなさい」という言葉をいただいたのでやろうと思いました。

吉澤: すばらしい話ですよね。そういうのは言わされているものではなく積み上げてきたものですからね。息子さんのどちらかが勤め先の会社をやめて家業を継ぐという話はありましたか?

古田: 突然すぎたので、そういうことを考える時間もありませんでしたし、無理やりこの業界に入れるのもどうかと思っていましたので。息子が自分から「やりたい」っていったら受け入れようと思っていますが。

吉澤: たしか今継いで3年ですよね。まだ息子さんからそのような発言はでていないですか?

古田: まだでていないですね。

吉澤: 母の気持ちとしてはどうですか?

古田: 微妙ですね。やはり38年の業歴がありますので続けたいとは思いますが、事務用品・文具用品の業界はすごく利益が取れない大変な業界ですので、ここをやらせるっていうのは…私で終わりでもよいかなと思っています。けど、継ぎたいというなら継いで欲しいです。

吉澤: 難しいですね。何かのきっかけがないと…、これが正解というのがありませんからね。

宅野さん、古田さんの写真

―もし、先代が健在だとしたら…

吉澤: それでは次の質問です。時計の針を巻き戻します。先代が健在だとして自分が5年後なり10年後に継ぐということを知っていたとすると、先代になにをしておいて欲しいですか。宅野社長いかがですか?

宅野: やはり引継ぐ時に実感したのが現金のなさです、それが不安材料の一つになりますので、まずは預金をすることを勧めます。でもコツコツ貯めることはできないと思うので、せめて亡くなった時のためにもっと保険に入ることを勧めます。借入分だけでも0になれば大分違ったかなという思いがありますので。

吉澤: 古田社長はいかがですか?

古田: エヌエヌ生命で保険に2つ入っていました。亡くなる3ヶ月前に1つ解約してしまったのです。経費とかいろんなことを考えて納得して解約をしましたが、そこに戻って「解約やめよう」と伝えたいですね。そうすると今がもう少し違ったかなと思います。

吉澤: 解約すると言ったのは、募集人や代理店からではなくて?

古田: 会計事務所の担当と私と主人の三人で相談しました。だから会計事務所の担当者は今でも言います。「あの時に僕がそれをいったからこうなっちゃったから申し訳なかった」と。けど「それは主人が決断して決めたことですからあなたのせいじゃないよ」とは言いましたけどね。

佐藤さん、吉澤さんが会話している写真

吉澤: わからないですもんね。先に亡くなるとわかっていたらと言う話ですね。 佐藤社長はいかがですか?元気な先代がいたらして欲しいことはなんですか?

佐藤: 自由にできるお金、会社を存続させるためのお金と情報の整理ですね。お金は借入を相殺するものではなくて、給料を払ったり、仕入れに払ったりしますのでキャッシュがなかったら何にも始まりません。情報の整理は融資の本数や金利とか、生保も損保もそうですけども整理していないと後に残された人は全然わかりませんので。私の場合は分析をするのに三ヶ月かかりました。 会社は自分のものだけじゃなく、残された人のためにというのを思っていないと残された人が怖くて継げないなと思いますね。

吉澤: とても大事な話ですね。宅野社長と佐藤社長は役員で中のことをある程度わかっていて、古田社長も妻であり会社をマネージメントする立場でもあった。それでもわからないことがあった。これがもっとワンマンな社長から子供が突然継いだとするとどこになにがあるかわからないことも多く、ログインパスワードさえわからず重要な情報にアクセスできない後継者とか結構多いのです。

佐藤: 私もロックされました。ここでお話ししている内容を含めて、後を継ぐ人の苦労は本当に生半可じゃありません。私は忙しすぎて半年間の記憶が本当にありません。中小の社長さんは会社=自分という人が多いかと思いますが、もし自分が急に亡くなり継ぐ人に苦労をさせてしまうと晩節を汚しまいますので、継ぐ人のことを考えて色々と残して欲しいですね。

吉澤: 取引先のキーマンや会社の歴史など見えない情報資産は多くありますよね。そういった情報を含めて整理して伝えること。それが本当の意味での引継ぎだと思います。 皆さま、お忙しい中、貴重なご意見ありがとうございました。

左から、宅野さん、古田さん、佐藤さん、吉澤さん の写真

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