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事業承継

「目指すはシェアエコノミー」
姫野病院 姫野亜紀裕院長 その1

  • 20-30代
  • 九州・沖縄
  • 後継者
  • 地方創生

この記事は4分で読めます

少子高齢化と人口減少。日本の医療は今深刻な環境変化に晒されている。そうした中、新たなビジネスモデルを模索し、挑戦し続けている経営者がいる。人口約2万人。福岡県八女郡広川町の姫野病院姫野亜紀裕院長がその人。5月上旬、私たちは九州に飛んだ。


(聞き手: 安倍宏行 ジャーナリスト ”Japan In-depth”編集長)

「目指すはシェアエコノミー」姫野亜紀裕院長

少子高齢化の影響

姫野さんに筆者が初めて会ったのは、博多で行われた「家業イノベーションCAFÉ in 福岡」でのこと。厳しい病院経営の実態を話されると同時に、多角化を進めていることに興味を持った。確かに人口減少社会で病院経営が将来的に厳しい状況になることは目に見えている。そうした中での、新たな医療ビジネスの在り方とはどのようなものなのか?姫野病院は既にいろいろな経営に乗り出している。


例えば、病児保育施設がそれだ。都市部では子供が熱を出すと、親は保育施設に子供を引き取りに行かなくてはならない。働く女性にとっては頭痛の種だ。地方にもニーズはある、と姫野氏は言う。


「都市部ほどではないですが地方でもあると思います。人手不足で働いている母親も多く、専業主婦は減っています。病児保育のニーズがあるのはやっぱり仕事を抜けられない人ですよね。管理職の人とか医者とか。」


そして保育園も作った。病院が地域のそうしたニーズを汲み取って実際にビジネスに落とし込んでいくのは誰のアイデアなのだろうか?


すべて私とか理事長の発想です病児保育はミッションとして作りました。保育園は職員の子育て支援としてやっていたら、出生率が法人内で上がったのです。もともと保育所があったのですが、それだと福利厚生で持ち出しになるので、それなら事業として成り立つ保育園を作った方がいいんじゃないかということになり、そのときにちょうど企業主導型保育事業のスキームが内閣府から出ていたのでそれを利用して作りました。」


3月にオープンしたばかりで定員100人のところ現在50人くらいの園児がいるという。子どもたちの歌声が聞こえてくる。これらの事業で町全体の出生率が増えたら・・・そんな期待が湧いてくる。

「目指すはシェアエコノミー」姫野病院

「それが目指すところなんです。町の人口は今後ちょっとずつ減っていきます。私たちの医療圏は、広川町だけではなく、八女市やみやま市、久留米市なども含まれているので、その周辺も含め人口を増やさなくてはいけません。」


人口減社会の中、姫野氏は病院事業をキープする為にはシェアを高めるしかない、と説く。タイムリミットは10年と見ているという。そうした認識のもと、姫野氏の目はその先のビジネスを見据えている。それが「農業」だ


「農業をやるのは、基本的には自給自足のためです。1つは、国の財政が破綻したら、私たちはもうやっていけません。その時に職員が食べていけるようにしなければいけないので、食料が自由に手に入るようになっていれば、少しは足しになるのではないか。2つ目は、職員もシルバーになっていくので、途中で農業に切り替えて収入を維持する、という目的もあります。」


姫野氏は、従業員がリタイアした先のことまで考えている。果たしてそこまでする必要があるのか?そんな疑問をぶつけてみた。


「それが大事なんじゃないですかね。リタイアしても仕事があるっていう環境になれば、それ目的に転入してくる人も増えてくるかもしれませんし。生涯にわたって、あまり体が元気じゃなくても、働いていける産業があるっていうのは、これからやっぱり大事なことかなと思います。農業で体を動かした方が病気になりにくいので、結果的には医療費もかからない。


単なる従業員のやりがいとか福利厚生という発想ではない。姫野氏は病院を核とした街づくりを考えているようだ。更に話は、経済システムや組織論にまで広がっていく。

キーワードは「シェアリング」と「フラット」

「あとは、シェアリング・エコノミーを地域内で作ることも大事だと思います。資源を融通し合えば、そんなにお金がなくても暮らしていけます。でもシェアリング・エコノミーは、田舎で作るのは結構難しいので、そこをどうしていくのかがテーマだと思っています。」


姫野病院は従業員が700人いるという。これからの時代を生き抜くために彼らのアイデア・提案をどう生かしていこうとしているのだろうか?姫野氏の考える理想の組織とは?


「基本的には私たちのところも含め、組織はポテンシャルの2、3割くらいしか出せてないところがほとんどだと思います。ポテンシャルを引き出すためには、組織の階層構造、ピラミッド構造が邪魔だと思っています。」


そう、姫野氏の目指すのはフラットな組織だ。


「フラットにする代わりに、スタッフ一人一人が自己責任で自由にお金を使って自由に物事を行えるようにしていく環境設定が必要ですね。グーグルもある程度そうなっていると思いますし、基本的にはイノベーティブな組織っていうのは、だんだんフラットな方に向いていくと思います。」


フラットな組織の実現を目指し、姫野氏は決済を早くすることや、管理職に権限を渡さないことなどを提唱した。病院経営にフラットな組織を、というアイデアはかなり衝撃的だった。実現にはハードルが高そうだが・・・姫野氏のアイデアはこれに止まらない。


その2に続く




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