内容へスキップ
top > 経営ペディア > 経営のヒント > なぜ、年金に関する「相談」が多いのか(プレミアレポート2017年11月号)
経営のヒント

エヌエヌ生命プレミアレポート

経営者からの年金相談が急増!

なぜ、年金に関する「相談」が多いのか

  • 税制・財務
  • 公的支援

この記事は6分で読めます

最近、経営者の方からの年金相談が急増しています。現在、多くの経営者が年金受給世代に該当しており、また経営者の年金については一般ビジネスマンとは異なる注意点があるにもかかわらず、経営者向けの「正しい年金情報」があまりないのが実状です。そのため、年金に対する誤解により、受給できないという事実をご存知ない経営者の方が多数いらっしゃいます。そこで、経営者の年金に関する「よくある誤解」を解いていきましょう。

1 年金に関する経営者(60歳台前半)の「誤解」

60歳台前半の方は、「特別支給の老齢厚生年金」を受給することができますが、この年金については以下の点に注意が必要です。
・段階的に廃止されることになっている
・生年月日によって、あるいは男性か女性かによって支給開始年齢が異なる
たとえば男性の場合、現在は62歳からの受給となりますし、昭和36年4月2日以降に生まれた方は受給できません。このように、特別支給の老齢厚生年金は60歳から65歳の期間だけ、対象者を限定して、文字どおり「特別に支給する年金」なのです。


この 特別支給の老齢厚生年金に関して多いのは、年金の「繰上げ」や「繰下げ」ができるのではないか、という誤解です。たとえば、本来であれば62歳からしか年金を受給できない方が、60歳に前倒しにして(繰り上げて)受給できるのではないか(受給額は減額)、あるいは65歳に後ろ倒しにして(繰り下げて)受給できるのではないか(受給額は増額)、という誤解です。


たしかに、65歳から支給される老齢基礎年金や老齢厚生年金には「繰上げ」や「繰下げ」という仕組みがあるのですが、「特別支給の老齢厚生年金」にはこの仕組みは適用されないことにご注意ください。

年金に関する経営者(60歳台前半)の「誤解」

2 年金に関する経営者(65~69歳)の「誤解」

65歳になると、老齢基礎年金と老齢厚生年金が受給できるようになります。老齢基礎年金は、20歳から60歳までに納めた保険料に応じて対象者全員に支給されます。


注意すべきは「老齢厚生年金」の方です。老齢厚生年金には「在職老齢年金」という仕組みがあり(図1参照)、受給資格を有していても、その人が厚生年金の被保険者として報酬の支払いを受けている場合は、年金額の支給調整が行われることになっています。経営者の場合は高額の報酬を得ていることが多いので、ほとんどの方が「全額支給停止」という状態になってしまっています(図2参照)。つまり、老齢厚生年金(報酬比例部分)がまったく支給されていないのです。


この支給停止されている年金について、多くの方が「一時的に支給されていないだけ」、「後から、まとめて貰える」、「繰下げをしているのだから増額してもらえる」といった誤解をしています。


「支給停止」という言葉が誤解を招いているようですが、実際には「不支給」ということであり、この年金を将来受け取れることはありません。


前述のとおり、老齢厚生年金には「繰下げ」という仕組みがありますが、全額支給停止されている年金については、そもそもの受給額が0円なのですから、繰下げをしても増額されることはありません。このことを69歳になってから知ったある経営者は、『もっと前にきちんと年金のことを確認しておくべきだった』と大変後悔をしておられました。


なお、この在職老齢年金による支給調整の仕組みは、60歳台前半の「特別支給の老齢厚生年金」にも適用があります。

年金に関する経営者(65~69歳)の「誤解」

3 年金に関する経営者(70歳以上)の「誤解」

70歳になると厚生年金の被保険者資格を喪失します。資格を喪失すると、厚生年金保険料を支払う必要がなくなります。しかし、70歳以降も厚生年金の適用事業所から報酬を得ている場合には、「70歳以上被用者該当届」をしなければなりません。


「70歳からは支給停止されない」と誤解されている方が多いのですが、実は70歳になると被保険者資格は喪失しても(保険料の支払いがなくなっても)、引き続き在職老齢年金の仕組みによる年金の調整が行われるのです。上記の届出は、70歳時点での報酬を登録するためのものです。


つまり、70歳以上でも厚生年金の適用事業所から報酬を得ている場合には、老齢厚生年金(報酬比例部分)に関しては支給調整が行われ、経営者の場合は報酬が高額な方が多いために全額支給停止になってしまうケースがほとんどなのです。このように考えると、経営者の方は経営者を続けて高額な報酬を得ている限り、ずっと老齢厚生年金が受給できないことになってしまうのです。このことをご存知ない経営者もたくさんいらっしゃいます。


また、この「70歳以上被用者該当届」を提出していない方が非常に多く、そのため70歳から年金を受給してしまっているケースも見受けられます。ご本人が意図していなかったとしても、年金を不正に受給してしまっていることになります。年金事務所の調査などで発覚すると、受給した年金を返還させられることになりますのでご注意ください。

年金に関する経営者(70歳以上)の「誤解」

「ねんきん定期便」は60歳で退職することを前提に計算されているので、60歳を過ぎても働いていることの多い経営者の方には参考となる情報が少ないかもしれません。ご自身の年金について不安を感じる方は、まずは年金事務所に直接確認をしてみましょう。さらに、適切なアドバイスを望まれる方は、年金に詳しい社会保険労務士等の専門家に相談されることをお勧めいたします。

なぜ、年金に関する「相談」が多いのか図1

なぜ、年金に関する「相談」が多いのか図2

萩原 京二

著 者
萩原 京二(はぎわら きょうじ)
一般社団法人社長の年金コンサルタント協会 事務局長
株式会社 全就連 代表
社会保険労務士法人 全就連 代表

早稲田大学法学部卒。東洋大学大学院博士前期課程修了。社労士、税理士、FP向けに中小企業の経営支援をするためのコンテンツを提供するサービスを展開中。2017年5月に一般社団法人社長の年金コンサルタント協会を設立し、事務局長に就任。

この記事は、エヌエヌ生命プレミアレポート2017年11月号からの転載です。 この記事に記載されている法令や制度などは2017年11月作成時のものです。
法令・通達等の公表により、将来的には制度の内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。

プレミアレポートは、「中小企業サポーター」として、お役に立つ情報をエヌエヌ生命代理店を通じて提供するオリジナルレポートです。生命保険に関連するテーマにこだわらず、経営者の皆さまが気になっている最新トピックや経営のヒントになる情報を提供しています。




NN_Picto_D_sympathy_rgb.svgお客さまの声をお聞かせください。

  •   

この記事は・・・

  • エヌエヌ生命が提案する法人の財務リスクマネジメント~役員退職金/弔慰金~はこちらから