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「地方再生のカギは地方にある!」

株式会社日本総合研究所 高橋進チェアマン・エメリタスに聞く その3

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中小企業が直面しているリスクに「景気の腰折れ」があります。緩やかな景気回復が続く日本経済ですが、来年2019年10月の消費増税、2020年にはオリンピックが控えます。エコノミスト高橋進氏に話を聞きました。(その1はこちら)(その2はこちら)

(聞き手: 安倍宏行 ジャーナリスト ”Japan In-depth”編集長)

地方活性化の新しい処方箋

安倍:民営化自体が古いんですね。

高橋:民営化という言葉自体が古い。一般論だが、日本の地域は、ヒト・モノ・カネが流出してしまって何も残ってないように言われるが、世界で観ると、実は日本が非常に成熟した国家なだけに、いろんなノウハウだとか文化だとかが残っているのが地域、田舎ではないでしょうか。

実は今、田舎に外国人が非常に魅力を感じています。例えば、地方の食文化。これだけ豊かな食文化が残っているのは、実は世界でもそんなにあるわけではありません。例えば中国なんかはもう親の世代はどんどん働きに出てしまって、村とかの機能すらなくなっています。日本も祭りだとかそういうものを残そうという動きがだんだん地域ぐるみで出てきています。そこをしっかりすると今度は外国人なんかにとって非常に魅力になってくるということだと思います。

ただ単に外国人が旅館に泊まっただけでは、そういう魅力は感じません。しかし、この地域がどんなものかということを地域の人が外国人に解説すると、非常に喜んでお金を落としていきます。観光客相手に自転車を1台貸してもせいぜい1日1500円から2000円しかとれません。ところがそこに通訳をつけて、地域の文化を説明してあげると、1日2万円はとれます。

付加価値のつけ方をまだ日本の地域の人たちは分かっていません。上手く付加価値をつける工夫をすれば、実はまだ相当稼げるということが最近ちょっと分かってきたのではないでしょうか。

安倍:言葉の壁も自動翻訳とかどんどん進化していますからなくなりそうですよね。

高橋:そうですね。その時に担い手になるのは、子どもたち、学生です。例えば、函館だったか、インバウンドの人たちが沢山来るということで、学生がボランティアで観光の通訳をかって出てきました。ところがいざ通訳をやってみると自分たちがいかに言葉はできても、その地域のことを知らないかということを認識します。そこで、今度は子どもたちが自分の地域のことを一生懸命勉強します。すると愛着が湧いてきて、その地域のために色々活動してみようとか、地域おこしに携わってみようと言う人たちが増えてきます。結局インバウンドを一つのきっかけにして子どもたちが地域を見直すことに繋がってきます。

それから、日本は地域の活性化のために、大学を誘致してきましたが、これも結構苦しい状況になっています。ところが福井県の鯖江市は、市内に大学はありません。しかし沢山の学生が来きます。なぜかというと、「市の行政を改革するために提案してください」ということを言っているのです。それで全国から学生が集まってくるんです。

そうしたことの一環で、鯖江市はJK(女子高生)課を作りました。色んな提案を生かしていくということでそういう課を作った。そしたら、その地域にいる今度はもう少し年上の人たちが、「OC(おばちゃん)課を作れ、私たちも行政に貢献したい」と。そうやって地域づくりに子どもたち、学生も参加するようになりました。

そういう流れができると、大人になると地域に戻ってこなくて流出してしまう、という循環を変えることができるのではないでしょうか。単に大学を誘致すればいいという話でもなく、地域の人をどうやって地域の運営に巻き込んでいくか、というところができると変わってくる感じはします。

安倍:地方が地方の魅力を実は一番気づいていないというのはあるかもしれませんね。ところで、外国人が落とすお金が少し減り始めた、という話がありますね。特に中国人観光客の。

高橋:そうです。ところが一方で、サービスやコトについてはお金が落ちています。欧米の観光客が増えてきて、彼らの落とすお金が結構大きいです。サービス、コトに着目すれば実はインバウンドはまだまだ増えていきます。逆にモノに執着している限りは、限界が来ると思います。

安倍:エヌエヌ生命が主催して若い中小企業の後継者らを集めてディスカッション(「継ぐをつなぐ ~家業イノベーションラボ」)をしているのですが、彼らが、地域との関わりを考えなくてはいけない、という話をしていて、なるほどなと思いました。

高橋:やはり地域性というのは、その地域にしか作れません。しかし、行政としてどういう手伝いができるかという時に、最近ひとつウエイトを置いていることがあります。町があって、人口が増え、経済が発展している時代は町は外に発展して、住宅地がどんどん農地を食いつぶして外に広がっていきました。ところが人口減少時代になってくると、そういう町はものすごく効率が悪く、これからのことを考えると持続できません。

そうであればむしろ、広がってしまった町をもう一度真ん中に呼び戻す「コンパクト化」、これを政策の中心に据えています。コンパクト化すると、例えば、町の真ん中に高齢者が住んでいれば非常に利便性も高いし、人口集積度が上がれば、それがビジネスにもつながり、地価も上がってきます。MECE度(注1)が高くなれば。

従来中央省庁は、道路を作る、橋を作る、工場を誘致する、全部縦割りでバラバラに考えていました。そうではなくて、地域でどうやって集積したら良い運営ができるのか、あるいは産業が起きるのか、価値が上がるのかということを、皆で考えるように政策の仕組みを変えていかなければいけないと思います。

でもやはりそういう政策を中央で打とうとしても、地方に受け皿がないといけない。そういう意味で言うと、地域に様々な分野の人が参加するプラットフォームができると、そこに色々な課題をネタとして挙げることができるようになって、地域全体でどうすればいいのかという解決が色々生み出せます。

例えば、バス路線を一つ作る、あるいは変えるのであっても、どういうルートで回せばいいかということ。従来であれば民間のバス会社が勝手に決めていました。そうではなくて、地域のためにはどうすればいいか、あるいは、利便性を高めるために病院の配置やバスの経路を変えてみようとか、地域問題の解決と活性化の試みをプラットフォームを通じてやるようになると、色々なことが解決できるようになります。そのプラットフォームに、行政、金融機関、それから若い経営者達が参加していくことによって地域づくりの核が出来ていくのではないかという気がします。

安倍:やはりIoTが色々そういう動きを加速させ、簡便にしていくということなのでしょうね。

地方に日本再生のカギがあった。地方再生はもう無理だとあきらめるのではなくて、知恵を絞らねばならないのだと感じた。コト、すなわち豊かな資源は地方にこそ、ある。地方にインバウンドを呼び込んで、人口流出が止めるどころか、若い人が集まってきた例が実際にあるとは。これは夢ではない。現実なのだ。諦めずに夢を現実のものにしなくてはならない。高橋氏の話は中小企業の経営者にとっても、行政の人にとっても、そして私たち生活者にいとっても示唆に富むものであると感じた。

注1)MECE Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive「重複なく・漏れなく」という意味

 

ー株式会社日本総合研究所 高橋進チェアマン・エメリタスに聞く 全3回完ー