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中小企業経営者にとって、避けて通れないのが、「事業承継」の問題です。しかし、エヌエヌ生命の調査では、「事業承継の準備は特にしていない」という回答が約4割に上る(※1)など、多忙な経営者にとって、気になっているもののなかなか着手しにくい課題となっているようです。今何が問題になっているのか、気をつけるべき課題はどこなのか、どんな備えが必要なのか-そうした経営者の問題意識に応える形で、見識ある経済ジャーナリストが最新の事情も交えながら、「事業承継」についてシリーズで解説していきます。

※1 エヌエヌ生命「中小企業の経営者が考える経営状況予測・意識調査」(2016年実施)より

 

経営者の“突然のリスク”に備える新しい保険の誕生

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土肥正弘(ライター)

写真)商品担当の近藤徳宏執行役員
(c)Japan In-depth編集部
 

2017年11月2日、エヌエヌ生命保険株式会社(以下、エヌエヌ生命)は、業界でも例を見ない新しいコンセプトの生命保険商品「エマージェンシー プラス」についてプレスリリースした。それは「中小企業経営者の突然の死亡リスク」にフォーカスし、最大保険金額1億円、健康状態告知項目はわずか3項目のみ、解約返戻金のない掛け捨て型という、目的に特化したわかりやすい保険商品だった。

中小企業からは申し込みが相次ぎ、これまでエヌエヌ生命の商品販売があまりなかった代理店からの問い合わせも急増しているという。人気の理由は何なのだろうか。同商品の開発にあたった近藤徳宏商品担当執行役員に聞いた。

中小企業の事業継続をサポートするのが目的

「『エマージェンシー プラス』は日本の中小企業の事業の継続をサポートするために設計された保険商品です」と近藤は言う。エヌエヌ生命はオランダにルーツを持ち、170年以上にわたる伝統を誇るNNグループの一員だ。日本では1986年から営業を開始している。中小企業とその経営者を対象に、法人向け保険の商品の開発やサービスの提供に早期から取り組み、一層その専門性を高めながら、保険を通じた「中小企業サポーター」として、顧客ニーズへの対応を進めてきた。特にこの数年において、中小企業の事業承継に注力しているのも大きな特徴だ。

「本国のスタッフに商品コンセプトを理解させるのに苦労しました。日本企業が直面する特殊な事情の説明から始めなければならなかったからです」と近藤が漏らすほど、「エマージェンシー プラス」は日本の中小企業の抱える経営課題に特化したユニークな商品である。

日本の会社の99.7%が中小企業。そして雇用人口の約7割が中小企業で働いています。その中小企業の経営者は高齢化が進み、健康などのリスクが高まっている状況です。にも関わらず後継者の育成や事業承継計画が整っていないケースが多い。しかも中小企業は事業運営が経営者個人に強く依存しているため、経営者が万が一急死すると、その家族はもちろん、従業員にも取引先にも重大な影響が及ぶ可能性があります」。

図)中小企業の従業員数割合と企業数割合(日本政策金融公庫HPより)

出典)日本政策金融公庫(経産省「平成26年経済センサスー基礎調査」を中小企業庁が再編加工したもの)

 

中小企業の経営者は会社の事業を支える大黒柱。それが突然失われると、時には会社の存立が危うくなる。実際に中小企業対象に行った調査(※2)では、計画的に事業承継したケースに比べ、突然事業承継せざるを得なくなったケースでは承継時に資金を必要とする割合が高くなっていた第2回記事参照)。

「この突然の事業承継リスクの大きさが盲点でした。当社は他の個人保険中心の会社とは異なり、この30年間ずっと日本の中小企業に寄り添った法人向け保険にこだわってきました。だからこそ、中小企業がずっと潜在的に抱えてきたこの大きなリスクに気づくことができたのです」。

※2 エヌエヌ生命中小企業経営者調査より(2017年実施、インターネット調査。対象は全国の中小企業経営者 2000名<男女40代から70代>、従業員数5人以上300人未満の企業経営者<会長職、社長職対象>)。

経営者の突然のリスクをカバーするための3つのポイント

経営者の突然の万が一の事態により継続できなくなる会社を救うというコンセプトの商品開発を思い立った近藤は、中小企業経営者のニーズがどこにあるのかを詳細に検討した。ポイントは3点ある。

まず1つは、経営者が「万が一の事態」につながると懸念している要因の特定である。調査すると主な懸念は「災害(交通事故など)」、「ガン」、「心筋梗塞」、「脳卒中」であることがわかった。このうちガンは発見から死亡までの期間が長く、闘病生活は続くが急死のケースにはあたらないと判断した。他の3要因での死亡に対して、十分な保険金が入るように設計しなければならない。

図)特に心配している急死の原因
出典)エヌエヌ生命保険株式会社調査)

(従業員数 5 名以上 300 名未満の中小企業経営者 1,000 名を対象に 2017 年実施)

 

もう1つは、経営者に万が一のことがあってもスムーズに事業が承継されて会社が継続できるようにすることだ。こうしたケースで特に心配されるのが借入金返済と運転資金不足である。また給与支払いも事業継続には不可欠だ。これらは一時的に金額が膨らむこともあるため、手厚い保障が必要になる。

残る1つは、多忙な経営者が加入しやすいように、手続きを簡素化することだ。生命保険では健康状態の告知義務を設けており、最大3000万円程度の保険でも8項目から10項目の告知をしなければならないのが普通である。これには医師の診断が必要になることもあり、その時間と手間を嫌う経営者が多いのだ。

開発された「エマージェンシー プラス」の特徴

近藤は社内の専門スタッフや医師と相談し、テストマーケティングをしながら、約1年をかけて保険設計を行った。その内容は次のとおりである。
・急死要因として不安を感じる3つのケースを重点的に保障
交通事故などの災害死亡や、急性心筋梗塞、脳卒中による死亡の場合、その他の死亡の場合の保険金の倍額が支払われるよう、不安要因上位のリスクを重点的にカバーした。

・最大保険金額を1億円に設定
経営者死亡後の事業継続のための資金として活用してもらえるよう、他の一般的な定期生命保険よりも高額な最大保険金額(基準保険金額)を設定した。これから手持ち資金の不足を十分カバーできる場合が多そうだ。

図)無解約返戻金型災害・重度疾病定期保険「エマージェンシー プラス」のしくみ・イメージ

*1 災害死亡保険金または重度疾病死亡保険金が支払われる場合は死亡保険金はお支払いしません。
*2 この保険には支払削減期間があります。ご契約日からその日を含めて1年以内に重度疾病死亡保険金または死亡保険金のお支払事由に該当した場合、お支払いする金額が削減されます。

引用)エマージェンシープラス パンフレット

 

・健康状態告知は3項目のみ
保険加入手続きのために必要な告知義務項目を最低限度まで絞りこみ、3項目のみとした。これにより多忙な経営者でも手続きの負担が大きく減り、加入しやすくなる。ただし告知項目を少なくすると保険会社側のリスクは高くなる。それを補うのは保険料だが、これを高額にしては加入しにくい。そこで同社はメディカル・データ・ビジョン株式会社が保有する 病院における実際の診療内容を匿名加工して蓄積した医療ビックデータを購入、社内の商品企画開発部のデータサイエンティスト(7名)による分析を行ってリスクを独自に計量したうえ、同社ならではの中小企業向け保険ノウハウ・知見を加味してバランスのよい保険料を設定した。

図)告知項目について

*1 検査入院を含みます。検査入院の結果、治療・投薬(薬の処方を含みます。)の必要がなかった場合は除きます。また、正常分娩による入院は除きます。
*2 健康診断・人間ドック・がん検診等を受けた結果、診断確定のために勧められた再検査・精密検査を含みます。
*3 検査の結果、治療・投薬(薬の処方を含みます。)の必要がなかった場合は除きます。

引用)エマージェンシープラス パンフレット

 

保険料支払いと保険金受け取りのモデルケース

保険料は気になるところだが、基準保険金額の設定(1000万円〜1億円まで100万円刻み)や、契約年齢、保険期間によって異なるので、一概に言えないが、例えば50歳男性の方が90歳までの保険期間、基準保険金額1億円で契約した場合、月々の保険料は7万1500円になる(☆1)。年間では85万8000円、仮に90歳まで払い続けても合計3432万円である。保険金額1億円(災害死亡と重度疾病死亡以外なら半額)と比べていかがだろうか。

(☆1) この保険には支払削減期間があります。ご契約日からその日を含めて1年以内に重度疾病死亡保険金または死亡保険金のお支払事由に該当した場合、お支払いする金額が削減されます。

なお、同商品は「解約返戻金のない定期保険」というジャンルになり、支払う保険料は全額損金として算入できる。費用についてはこれも含めて考えてみるとよいだろう。

ニーズに合わせた提案を行う代理店

「エマージェンシー プラス」が人気を呼んでいるのには、商品コンセプトのインパクトとともに、販売を支える代理店の貢献がある。同社は代理店を通して生命保険を販売しているが、その代理店となるのは、税理士・公認会計士、保険プロ代理店、銀行・証券会社などである。

これらの代理店は多くの中小企業に日常的に接し、経営について意見を交わし提案ができる、いわば“プロ揃い”。事業承継についても有効な提案ができる知識と経験を備えている。いわば保険の販売をすると同時に、ソリューションの提案も行っているわけだ。その代理店の経営者自らが「エマージェンシー プラス」に魅力を感じ、加入するケースも少なくないという。

「万が一のことがあった時には事業承継のための資金が要る。しかし資金を貯めるのには時間がかかる。だから、その時間を買うつもりで保険を使ってくださいとお願いしています。これからも中小企業の皆さんのニーズとハートに寄り添って、当社の保険に加入してよかったと言ってもらえるように努力していきます」と近藤は力を込めた。

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