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中小企業経営者にとって、避けて通れないのが、「事業承継」の問題です。しかし、エヌエヌ生命の調査では、「事業承継の準備は特にしていない」という回答が約4割に上る※など、多忙な経営者にとって、気になっているもののなかなか着手しにくい課題となっているようです。今何が問題になっているのか、気をつけるべき課題はどこなのか、どんな備えが必要なのか-そうした経営者の問題意識に応える形で、見識ある経済ジャーナリストが最新の事情も交えながら、「事業承継」についてシリーズで解説していきます。

※エヌエヌ生命「中小企業の経営者が考える経営状況予測・意識調査」(2016年実施)より

22兆円が消える!事業承継放置のリスク

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(安倍宏行 ジャーナリスト ”Japan In-depth”編集長)

出典)Pixabay
 

【まとめ】
・中小企業経営者の高齢化は深刻、そうした中「事業承継」問題が急浮上。
・現状を放置すると、2025年頃までに約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる恐れがある。
・中小企業庁は「事業承継5ヶ年計画」を策定し、中小企業支援を加速させる。

日本の中小企業が多いことはなんとなく知っていても、全企業数の99.7%を占めていると聞いたら驚く人もいるのではないだろうか。

中小企業は雇用の7割、付加価値の過半数を担うとともに、イノベーション の担い手でもあり、日本経済の根幹でもある。大企業に比べて小回りが効くため、環境変化に柔軟に対応できるという面もある。

とはいえ、中小企業数の減少、生産性の伸び悩みや経営者の高齢化などの構造問題が生じており、対応が迫られている。(図1)特に経営者の高齢化は深刻な問題だ。年齢のピークが66歳になろうとしている今、事業をどう次世代に引き継いていくのか、いわゆる「事業承継」問題が急浮上している(図2)。

図1)中小企業の数の動向(万社)
図2)中小企業の経営者年齢の分布(年代別)

(出典)中小企業庁

特に地方における休廃業リスクが高まっている。経済産業省中小企業庁の試算によれば、今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人で、そのうち約半数の127万人が後継者未定であるという。これは日本企業全体の3分の1に相当する。

中小企業庁は2025年までに経営者が70歳を超える法人の31%、個人事業者の65%が廃業すると仮定。2009~2014年に廃業した中小企業が雇用していた従業員数の平均値(5.13人)と、2011年度の法人・個人事業主1者当たりの付加価値をそれぞれ利用し、試算した。(法人:6,065万円、個人:526万円)

現状を放置すると廃業が急増することが予想され、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる恐れがあるという。

深刻な地方の危機

特に地方において中小企業経営者の高齢化は深刻な問題となっている。(図3)60歳以上の経営者の割合が60%を超えている県を見ると、66.7%の秋田県を筆頭に、島根県(62.8%)、佐賀県(60.9%)、北海道(60.3%)と続く。経済産業省の調べによると、特に地方の市町村における休廃業のリスクが高まっている。

図3)60歳以上の経営者割合(法人)

出典)経済産業省「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」2017年10月
 

また、西陣織や益子焼、川口鋳物などといったいわゆる産地における倒産や廃業の理由を見ると、後継者不在が業況の悪化の次に挙げられている。(図4)事業承継問題の解決なくして、地方経済の再生・持続的発展は望めない状況だ。

図4)産地における倒産・廃業の理由(複数回答)

出典)経済産業省「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」2017年10月
 

中小企業の中には高い技術力を持つところが少なくない。そうした企業が廃業するのは日本経済にとって大きな損失だ。

写真)上島熱処理工業所

(C)Japan In-depth編集部

国の対策

中小企業庁も手をこまねいているわけではない。企業庁は、地域の事業を次世代にしっかりと引き継ぐために、事業承継を契機に後継者が「ベンチャー型事業承継」などの経営革新等に積極的にチャレンジすることが必要だ、としている。

「ベンチャー型事業承継」とは、家業を引き継いで、既存事業から一歩踏み出すかたちでベンチャー的な事業を立ち上げることを指す。例えば、布団製造業からアパレル企業に進出した例や、大工道具の卸問屋から工具のネット通販会社に変革した例、自動車部品の販売企業がIT技術の導入で事業を拡大させた例などが挙げられる。

中小企業の中にも、生産性が高く、いわゆる“稼げる企業”は存在している。こうした企業は、IT投資や設備投資に積極的に取り組んでいることが知られている。“稼げる企業”を1社でも増やすことが今後極めて重要になってくる。

企業庁は、今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間と定め、支援のあり方についてまとめた「事業承継5ヶ年計画」を策定している。次回、その詳細を紹介する。

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