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事業承継

家業をうまく使って、起業も成功させる。
後継ぎとの二足のわらじが合理的だ!

株式会社コンテンツクルー 代表取締役 藤田 圭一郎 氏

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祖父が創業し、凋落(ちょうらく)させた酒屋を会社に勤めながら支えてきた父と叔父の背中を見て育った藤田酒店の店主、藤田圭一郎氏。大学時代から起業を夢見ながら、事業アイデアも開業資金もないことに気がついた。そこで家業を手伝いながら、WEBで顧客の課題解決をするうちに、求められるままWEBコンテンツ制作会社を設立し、地元岡山の飲食店に感謝される新しいサービスを運営するまでになった。藤田酒店と自分の会社の境をなくして、日本一ITに強い酒屋を経営するのが夢だ。

夜の街のIT便利屋で
酒の販売を10倍に拡大

「帰って来るなら、来れば?来ないならこの酒屋はゆるゆる縮小するから」と父に言われ、ちょっとやってみようと気軽な気持ちで家業に入ったのは、25歳の時だった。

「契約した居酒屋の鍵を預かり、開店前に酒を補充して回る。そんな業務用の酒屋は安定していますが、重労働だし生産性は低いなと思っていました」

 

どうせやるなら新規開拓をしたいと今まで取引のなかったスナックやバーに営業を仕掛けたが、そこには厳しい縄張りがあった。

「あのビルは、どこそこの酒屋さんがオーナーだからとか、複雑なしきたりがあって地元にコネがない自分がどう入り込んだらいいのか皆目見当がつきませんでした」

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酒店の配達や「Fujita Eats」の事業責任者も務める、弟の藤田貴之さん。

そんなある日スナックで働く女性や従業員の募集にオーナーやママたちが困っているという話を耳にした。

「独学ですがプログラミングやデザインができたので、求人サイトを立ち上げました。それを無料で提供して、その代わりによかったらお酒を買って下さいねという営業を始めました」

 

これが爆発的にヒットし、「店に酒を入れたら、求人を助けてくれる酒屋がいる」と評判を呼んだ。「何か困ったら、藤田に聞け!」とITに強い便利な酒屋という他ではまねできない存在になった。

「新規開拓(ナイト向け販売)した店の売り上げを5年で10倍にしました」

地元の飲食店支援で始めた
「Fujita Eats」が成長中

藤田氏の家業の酒店も自ら起業した株式会社コンテンツクルーも、地元の大学生を長期インターンとして雇っている。

「彼らは意識がとても高く、何かに挑戦したいという意思があって自ら行動を起こす。とても優秀な人材です」

 

その中の一人がこのコロナ禍で集客に苦しむ店のために寄付をするしくみを立ち上げた。作ったはいいが、その運用に困っていることを知り、藤田氏がそのシステムを引き取って改良し、飲食店が気軽に宅配できる「Fujita Eats」として運営することにした。

 

「厳しい状況にある飲食店を継続的に支援できるしくみにしたかったので、手数料は大手の半分にしました。酒店の配達員がいつも使う電動自転車で、酒を配達しながら出前をしています」

 

今ある資源をうまく使って、無理な投資をしなくてもできると小さくスタートした「Fujita Eats」だった。しかし、始めてみると高い手数料に苦悩し、宅配を頼めなかった飲食店に口コミでうわさが広がり、ものすごいスピードで依頼が増えていった。

 

「地元テレビなどのメディアにも取り上げられて、今まで取引がなかった店とも繋がることができ、酒店にとってもプラスになりました」

 

飲食店のスタッフになったつもりで心を込めて配達するので評判がいい。これは酒店が昔からやっていた当たり前のことだ。その店の従業員になったつもりで鍵を預かり、必要な酒を判断し、補充する信頼の文化が「Fujita Eats」にも生きたことになる。

 

「配達する範囲を広げてほしいというリクエストが多く、バイクを購入し、スタッフを増員することにしました。将来的にやりたいと思っていた地元高齢者のための買い物代行ビジネスを本格的に立ち上げる前の試みとして、手応えを感じています」

 

町の酒屋だと働きたいとは言わない若者も、地元の飲食店やお年寄りを応援するための仕事だと言えば、その挑戦を一緒になってやりたいと働きに来てくれると言う。

「酒屋から脱却して、デリバリー事業を大きな柱にすることが今の目標です」

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長期インターンを雇う事が
企業の新規事業を加速させる

もうひとつどうしても広めたい事業がある。それは地方学生を長期インターンで雇うことのメリットを理解してもらえるよう地元の企業と学生をつないでいく仕事だ。

起業に興味がある学生は、ベンチャー企業で長期インターンをしたいと考えるのです。でも地方には、受け入れてくれる企業はなかなかない。だから、長期インターンをやりたい学生と受け入れる企業をマッチングするサイトを作って、もっと活性化させたいんです」

 

藤田酒店のような家族経営の会社で、インターンは長期で働き、活躍してくれている。何をやらせたらいいのかを悩む前に、学生の力を信じてどんどん動いてもらえばいいという。

「飛び込み営業の場面でも、プログラミング開発でも、実際にしっかりと結果を出す頼もしい学生が多い。この長期インターンという言葉が普通になる前の今の段階でこのキーワードにアンテナを張り、応募してくる学生は、相当できる人です」

 

人気企業ランキングには名前が載らないような小さな会社でも、長期インターン学生を活用していることが学生に知られれば、「人気長期インターン企業」ランキングの上位を今なら狙えるかもしれないともくろんでいる。

 

「長期インターンが働けるようなプロジェクトを会社内に作ることが、その企業にとっての新規事業の芽になりえるのです」

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藤田酒店で働く長期インターンの学生。会社HPのリニューアルなどお手のもの。

後継ぎに吹く追い風を逃すな
やるなら今しかない!

以前は、「後継ぎ」と呼ばれることに抵抗を感じていた。

「親が築いたものを食いつぶす、ダメ息子というイメージがあって、同じように見られたくなかったんです。だからそれを隠してベンチャーイベント活動などをしていました。僕と同じことを考えて、自分から言わない後継ぎって案外多いんじゃないかな」

 

1年前に野心的な後継ぎが集う「アトツギU34」のメンバーと一緒にイベントを手掛けたことでその意識がガラッと変わった。

「志の高い後継ぎが集まって、熱量高く家業を変革したり、新しい分野に挑戦したり、起業しようとチャレンジを続けている。そういうコミュニティーの力を僕は信じているんです。良いコミュニティーからは、良い起業家が生まれる。そういう人が集まれば、起業しようという人がまた増えていく」

 

起業家や後継ぎが育つためには、企業や行政のバックアップ、メディアの後押しなども必要だと感じている。

「そういう流れが、日本に生まれてきています。後継ぎの注目度が高まっている今が、チャンス。後継ぎだってことを隠していた人も、野心的な後継ぎがいることを可視化してくれたアトツギU34のサロンなどをどんどん活用すればいいと思う。ふさいでないで出て来いよ。今名乗りを上げないで、いつやるんだと伝えたいです」

 

引き継ぐ家業がありながら、自分で起業もする二足のわらじを履くのは、意外と合理的なのではないかと感じている。

「起業のスタートは小さく始めるのに越したことはないのですから、家業のリソースをとことん利用するのはありです。むしろ、家業をうまく使ったもの勝ちだと思います」

 

自分でビジネスを手掛けてみると見えてくる世の中の風景が変わってきたなと気がついたという。

「人が経営している会社にいたときには自分事にできなかった風景が、全部自分事としてくっきり、高解像度で世の中が見えるようになってきました」

おごりかもしれないけれど、と前置きして、人として成長するスピードが格段に上がったと感じる充実した毎日だと言います。

 

「起業家という人種が大好きなので、岡山発の後継ぎベンチャーをもっと盛り上げていきたいと思っています」

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「アトツギU34」を主催している一般社団法人ベンチャー型事業承継の発起人山野千枝さんを迎えて、
岡山でアトツギのベンチャーイベントを開催した。

※アトツギU34はアトツギファーストに生まれ変わりました。


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