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経営のヒント

コロナ禍だからこそ見えてきた
経営者の役割や我々の事業が守る世界観

平和酒造株式会社 代表取締役社長 山本典正さん
ライフスタイルアクセント株式会社

代表取締役 山田敏夫さん

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この記事は7分で読めます

和歌山の蔵元・平和酒造の4代目として新しい日本酒造りや組織改革、人材育成を手掛け、新分野にも進出する日本酒業界の革命児、山本典正さん。

かたや熊本の老舗洋服店の息子として生まれ、メイドインジャパンのものづくりを世界へ発信したいと、作り手と直接ユーザーを結ぶアパレルブランド「ファクトリエ」を立ち上げ、通販サイトも運営する山田敏夫さん。旧知の2人が、コロナ禍の9月、オンラインで会社の現状やこれからの課題、そして向かっていく未来について語り合いました。

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平和酒造株式会社

代表取締役社長 山本典正さん

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ライフスタイルアクセント株式会社

代表取締役 山田敏夫さん

コロナ禍で変えたこと
変えなかったこと

山本:最初に対談したのは、2015年。あの時オリンピックの年にまた話したいねって言ってたのがかないましたね。あの時は、今のようなコロナ禍中にある2020年をとても想像できなかったけれど。ある意味、今ってすごい境遇だなと思っています。
山田:お互いよく生き残ってきましたね。
山本:ニュースによると、コロナで倒産が増えている業種の1位が飲食業で、2位がアパレルで、3位が旅行なんです。
山田:やばい対談じゃないですか(笑)。そんな状況で直営店の平和酒店をよく和歌山市駅キーノにオープンしましたね。
山本:GWに開店する予定が、6月に延びてありがたかったです。それより飲食店の営業が止まってしまった打撃が大きかった。2月の中国のロックダウンからもうおかしいぞと影響が出始めて、3月には本格化して、4月には完全に営業自粛で売り上げが減少しました。
山田:ファクトリエは、銀座、名古屋、熊本にある店舗営業を閉めたので店舗の売り上げは減りました。もうひとつは、在宅勤務になってアパレル、コスメの需要が減ってしまった。
山本:不要不急ということですよね。
山田:春シーズンのスーツが売れなかった影響は大きい、結婚式もできないから礼服もいらない。とにかく洋服を着る場と機会がない。景気が悪くなるのはオリンピック後と言われていたのが、コロナで早まりましたよね。

山本:早まったことで言うと、日本酒業界も少なからずECに移行するのが早まったのかなと思います。それから一升瓶でなく、家の冷蔵庫に入る四合瓶に需要の流れが変わった。
山田:山本さんもECを自社でやり始めたんですか?
山本:いや、これまでの戦略をそこまで変えずにいきました。僕が今回思ったのは大きな軸は変えるべきではないのかなと。うちの蔵が成長していったのは、まずは良いお酒を作ること。そして和歌山を武器に和歌山から発信していくこと。最後にお客さまに良い形で伝えていけたからなんです。だからまずは良い酒を作ることが僕たちの本質だよね、コロナ後にお客さまが幸せな気持ちで飲むことをイメージしながら作ろうとみんなでそんな話をして、3月4月の酒造りの最終シーズンを乗り切りました。
山田:うちはそのころ社内の人材の新しい活躍の場を設けました。お店で接客していたメンバーにECサイトの文章を書いてもらったり、動画を作ってもらったりしました。最初はみんな混乱していましたね。でも、ファクトリエのビジョンは「日本一のクラフトマンシップの伝え手となる」なので、その場所がオンラインになっても同じだよと。だから伝え手として今までに培ってきた力で、どこでなら楽しく仕事ができそうか確認しながら業務に取り組んでもらいました。

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平和酒店








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平和酒造:紀土

困難な状況だからこそ
新しい気付きや働き方を発見

山本:コロナも大変ななか、7月の九州豪雨では支援活動もされていたんですね。
山田:熊本の工場はなんとか大丈夫だったのですが、多くの従業員の方が被災されました。すぐに現地に飛んで汚泥処理などをメンバーと一緒にやりましたが、ありがたかったのは、お客さまからチャリティーとか何かできる事はないかと言っていただいたこと。みなさんもコロナ禍でそんなに余裕のないなか、ファクトリエの服を買って下さる方は、その精神に共感してくれる人だから、同じように心を痛めていただけるんだな、つながっているんだなと感じました。
山本:社会貢献活動もいろいろ取り組んでいますよね。
山田:今、工場のほとんどは仕事がないので国からの依頼で医療ガウンを作っています。ほとんど利益はないのですが、工場を稼働させなくてはいけないので。ファクトリエとしては医療従事者の方のために抗菌防臭のTシャツを寄付しました。このTシャツは汗をかいてもにおわないし、菌が繁殖しないので医療や介護の現場で役に立つのではないかと思って。
山本:そういう状況の時にこそメンバーが育ちますよね。コロナの真っ最中なのに店をオープンさせたときに、酒蔵の出荷が落ち着いていたから人の余裕ができて、造り手全員に店に来て働いてもらいました。せっかく手に入れた酒の発信拠点だから、酒造りを自分で伝えようと。その意図を一番くんでくれた店長を中心として、どんどん平和酒店がブラッシュアップしていく姿を見られたのは良かったです。

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提携先工場を訪問する山田さん

僕らとして心地よいことを
事業としてちゃんとやる

山本:まだまだコロナ禍中ですし、振り返るタイミングではないと思っていますが、いろいろなタイミングが早まっただけで、これまでにやってきた連続した本質的な強みというのは変わらないのだと思いました。ですから長期戦略はゆるがさずに勝負していけるのかなと思っています。
山田:僕もミッションやビジョンはゆるがすつもりはありませんけれども、「伝える」手段はオンラインを主導にするという変化はあると思います。今回オンラインが伸びたので救われましたから。お客さまの心の温度を上げたいと思って、このコロナ禍中に作り手にメッセージが送れて、返事が来るという機能を追加したんです。そうやってオンラインでも長く使えるもの、心ときめくものが届くうれしい心の温度を上げたいですね。
山本:コロナ禍での企業活動の自粛は限界を迎えているのかなと思います。僕は人とのつながりの部分で、会いたい人には会いに行くことを始めました。海外輸出に関しても、コロナが落ち着いたらではなくてネット会議を通じてやり始めています。
山田:「語れるもので日々を豊かに」と「世界一のクラフトマンシップの伝え手になる」というミッション、ビジョンは変わらないので、時代がぶれているなら、僕もぶれながらやっていきたいと思います。これからは地方で当たり前に仕事ができるようになって、そういう場所に光が当たっていくんだろうと思いますから、もしかしたら地方の家具を扱っているかもしれない。
山本:各地方のメイドインジャパンを発掘されてきたという実績があるから、それってぶれじゃなくて立ち位置を変えたということでは?
山田:違和感がなければいいですよね。
山本:それはわかりやすい。僕もコロナの最中に、蒸留したアルコールを消毒用に販売するかどうか検討したんですが、僕がやりたいのはお酒を飲んだお客さまを幸せにしたいということだったよねと考えて、やらなかったんです。
山田:それってすごく重要ですよ。僕らはある意味では世界観を売っているんですから。役に立つかどうかの話とは違った情緒的消費なんです。僕らとして心地よいことをちゃんとやっておかないといけないと思います。
山本:今回のコロナがあって経営者の役割って改めてあるなと思いました。それは会社の存続をリーダーとして考えていくということです。このような不確実なことが起きる世の中だから、普段からの備えの資金を持っておかないと第2、第3のコロナが起きた時に対処できない。
山田:経営者の仕事ってデスクで試算するとか、現場に誰よりも早く出るとかそういうことじゃない。全然違う新しいゲームをやらなければならない立場なんだと今回思いましたね。何かあったときには、100%の力が出せるように常に余白を作っておくことも大事なのかもしれません。
山本:リーダーにおける備えというのは、「実際の備え」と「備えという心」の両方ではないでしょうか?それを試されているのが、この状況なのでは?早くコロナを抜け出して、人間の密なつながりの部分を取り戻したいですね。
山田:直接会うほうがアイデアが湧いたりしますからね。早くまた一緒にイベントなどをやりたいですね。変わらず山本さんには日本酒業界のトップランナーとして頑張ってほしいですから。
山本:こちらこそ山田さんにはアパレル業界の風雲児として、いろいろな方面から光を当ててほしいなと期待しています。

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